世界の乗用車販売動向レポート 注目は・・・

2017年10月の乗用車販売台数のデータが一般社団法人 日本自動車販売協会連合会(自販連)から発表された。販売データは暦年と年度(4月1日から翌年3月31日まで)の2種類があるが、日本、世界各国の販売動向を考えてみることにしよう。

■日本の販売動向

直近の10月の販売データの前に、2017年前半の販売データをまず見る必要がある。そのため2017年1月~6月の車名別データをチェックすると、1位:プリウス、2位:ノート、3位:C-HR、4位:アクアという順になる。

日本の車名別販売台数ランキング 2017年10月

不動のポジションを守っていたアクア、プリウスに割って入ったのが日産ノートで、もちろんその原動力はe-POWERである。2016年11月のマイナーチェンジで追加されたノート e-POWERは、モデルとしては5年前に登場したE12型であるにもかかわらず、一躍トップレベルの販売台数を記録するようになり、1月、3月はトップに立っている。

2017年1〜6月販売台数2位の日産ノート

興味深いのは、トップの常連であるアクア、プリウスは1~6月の販売実績で見ると前年を下回っており、その間に前年比163.3%のノートとC-HRが食い込んだわけだ。3位につけたC-HRは2016年12月に発売された新車名のニューブランドだが、トヨタが4チャネルを挙げて販売したこともあって、販売上位に入っている。これはトヨタの販売4チャネルの圧倒的ともいえる実力だ。もちろんCセグメントのクロスオーバーSUVという商品企画もタイムリーだった。またこのC-HRは4月には月間販売トップにも立っている。

2017年1〜6月 車名別販売台数

C-HRは1.2L直噴ターボとハイブリッドの2本立てだが販売ではハイブリッドが優勢で、結果的に1位のプリウスから4位のアクアまでハイブリッド車が占め、これは他の国とはまったく異なっている。

2017年1〜6月 販売台数3位のC-HR

5位のフリード、6位のセレナ、7位がシエンタとミニバンが続く。B+セグメントのフリードはハイブリッドが主力で前年比5.7%と大幅に販売を伸ばしており、Bセグメントのシエンタも堅調だ。またCセグメントのセレナは2016年7月に5代目として登場以来好調でライバルのヴォクシー/ノアに対抗している。ただし兄弟車種のヴォクシーとノアを足すと、このトヨタ2兄弟車が依然としてセレナを上回っている。

ハイブリッドを持たないモデルでのトップは11位になったインプレッサとなる。インプレッサも前年比192.7%と好調を維持し続けており、他社銘柄からのユーザーを取り込んでいるのが好調の原因である。インプレッサはG4セダンとハッチバックがラインアップされているが、ハッチバックがメインだ。

かつてはトップグループにつけていた、カローラ(フィルダー含む)は13位、正統派セダンで常に上位グループにつけていたクラウンは28位で、セダンのマーケット状況は寂しい限りである。

日産ノートは、1月、3月、7月、9月と月間販売のトップを奪っているが、10月には25位に沈んだ。これは、日産の完成検査問題で販売をストップした結果で、販売を再開したのは11月7日以降だから、ちょうど1ヶ月分の販売台数を失い、日産にとっては新型リーフの立ち上がりと重なって大きなダメージを負った。また同じく完成車検査の問題が見つかったスバルも11月は販売を一時ストップしているので、販売には少なからず影響が出ると予想されるが、日産ほど大きなダメージにはならない見込みだ。

■軽自動車と輸入車の販売動向

次は軽自動車をみてみると、10月はダイハツ、スズキ、ホンダの順番で、1月から10月の累計でも順位は同じだ。じつは車名別ではホンダ N-BOXがトップを独走しているが、軽自動車全体の販売で見ると、多車種で販売台数を稼ぐダイハツ、スズキが上回っている。

軽自動車メーカー別販売台数

輸入車は上半期(2017年4月~9月)で、相変わらずメルセデス・ベンツがトップにつけているが、2位のBMWはBMW MINIと合算するとメルセデス・ベンツを上回るのも以前から継続している。

一方、過去は長らく輸入車でトップを守ってきたフォルクスワーゲンは、ディーゼルエンジン問題でイメージダウンして以来、3番手に甘んじている。フォルクスワーゲンはさまざまなユーザー・コミュニケーションを図っているが、以前の勢いはまだ回復できていない。

4位はアウディ、5位がBMW MINIで、半期で1万2000台以上を販売している。次のグループはボルボ、ジープ、プジョー、ルノー、フィアットの順となる。特にボルボ、プジョー、ルノーが伸びており、特にルノーは前年比で152.5%と好調だ。これは新型トゥインゴが牽引しており、下期に導入する新型メガーヌによって販売はさらに加速するか?がポイントになるだろう。

輸入乗用車ブランド別ランキング

なお、乗用車、軽自動車、商用車、輸入車を含めた全ブランドの販売実績(10月および1月から10月累計)も参照されたい。

乗用車・軽自動車・輸入車・販売実績

■海外諸国の販売動向

ロシアの自動車調査会社「アフトスタット」が発表した1月~10月のヨーロッパにおける乗用車の車名別ランキングでは、1位:フォルクスワーゲン・ゴルフ(45万2100台)、2位:ルノー・クリオ(ルーテシア:30万4500台)、3位:フォルクスワーゲン・ポロ(30万6000台)だ。ポロはモデル末期ということもあって前年比-7%となっている。

4位:日産・キャッシュカイ(エクストレイル:24万4900台)、5位:フォード・フィエスタ(22万9000台)。6位:シュコダ・オクタビア(ゴルフの兄弟モデル)、7位:フォード・フォーカス、8位:オペル・コルサ、9位:プジョー208と続いている。

ヨーロッパにおいては、フォルクスワーゲン、ルノー日産が好調であることが明らかで、モデル末期のフォードはやや苦戦気味だ。

ドイツにおけるメーカー別、自動車販売台数

ヨーロッパの中で、ドイツのデータを見てみると、ゴルフ、ティグアン、パサートとフォルクスワーゲンが上位を占め、4位がフォード・フィエスタ、5位がシュコダ・オクタビア、6位にメルセデス・ベンツEクラスが入る。

なおパサートやEクラスは会社所有で社員貸与のカンパニーカーの比率が高いと見られる。パサートは課長級、Eクラスともなると部長や執行役員以上に貸与されるクルマとされる。

7位がメルセデス・ベンツCクラス、8位がアウディA4で、これらは個人購入車だ。いずれにしてもフォルクスワーゲンの車種の販売は全ヨーロッパ、本国のいずれでも盤石ということができる。

アメリカにおけるメーカー別、自動車販売台数

一方、巨大自動車市場であるアメリカと中国を見てみよう。まずアメリカは、2016年が好景気を背景にした乗用車販売のピークで、2017年は市場環境が厳しくなっており、結果的に自動車メーカーの販売奨励金が増大している。

ブランド別では、GM、フォード、トヨタ、FCA、ホンダ、日産という順は従来と変わらないが、いずれもかろうじて現状維持か微減となっているのがわかる。その中で日産は好調だ。日産に続くのはスバルで、販売台数を伸ばし、ついに韓国の現代をわずかながら上回った。また11位につけるフォルクスワーゲンは、どん底から回復傾向を見せているのが注目される。

アメリカにおける車名別、自動車販売台数

一方、車名別では1位:フォードFシリーズ,2位:GMシルバラード、3位:FCAラムといずれもフルサイズ・ピックアップが相変わらずの上位で、V6、V8の大排気量エンジンを搭載したハイパワー・ピックアップが定番人気を誇り、ゼロエミッションの政策も霞んで見える。

4位はトヨタのRAV4で、5位にようやくSUVではないホンダ・シビックが食い込んでいる。シビックに僅差で続くのが日産ローグ(エクストレイル)で、アメリカ市場ではSUV/ピックアップがいかに人気があるかが分かる。

さて中国では、今ではアメリカ市場を上回り、2016年で年間販売台数は2800万台(ちなみに日本は軽自動車を含めて500万台。アメリカは小型トラックと乗用車合計で1700万台)を超える世界最大のマーケットだが、中国独自資本の自動車メーカーの伸びが顕著で、2017年には44%を超えるシェアを確保している。

中国における国別、自動車販売台数

そのため、メーカー分類別では、民族系、ドイツ系、日系、アメリカ系、韓国系、フランス系という順位になっており、外国合弁会社ではドイツ系が強く高価格車の比率も高い。

中国における車名別、自動車販売台数

日系メーカーでは、日産、ホンダ、トヨタの順位となり、他の市場とは異なりトヨタは3番手に甘んじている。特にホンダは近年急速に販売を伸ばしているのが注目される。

車名別の販売では、他国の市場とは違って各車種がかなり接戦になっているのがわかる。つまり中国市場は民族系、合弁系の合計の自動車メーカーの多さと、車種の多さが特徴で、市場規模はさらに拡大しているものの販売競争の激しさを伺うことができる。

COTY
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