BYDからDセグメントサイズのSUV「SEALION7(シーライオン セブン)」 がデビューした。BYDは中国の自動車メーカーで、次から次へとニューモデルが日本に上陸。日に日に存在感を増している。
現在BYDはグローバルで427万台の販売実績を上げ、世界第6位にまで上り詰めている。その内訳はEVが41.5%、PHEVが58.5%で、バッテリーに強みを持つBYDらしい構成。特に中国ではNEV(新エネルギー車)市場で人気となっており、8秒に1台が生産され、30秒に1台が輸出されているという状況だ。

驚くのは先端技術の開発スピードで、新技術が次々に発表され、市販モデルへどんどん搭載していっているのだ。最近では(2025年3月)、ガソリン給油と同じ時間で充電できる「スーパーe-プラットフォーム」を発表し、「油電同速」とアピールしている。またAIを使ったADAS(先進運転支援システム)「God’s Eye」を全モデルに搭載するなど先端技術の開発スピードには驚かされる。
そして、日本国内でも2023年1月末からの販売開始で、すでに4000台を販売しており、存在感が増しつつあるのだ。BYDオート・ジャパンの東福寺社長もブランド認知を上げること、2025年末までにディーラー100店舗、そして商品力の強化という3つのテーマを掲げて国内販売を伸ばす意向だ。
そうした勢いがある中で日本に投入されたのがシーライオン7。BYDの海洋シリーズのクロスオーバーSUVで、国内BEVの第4弾になる。


スペックを見るとRWDとAWDがラインアップし、搭載バッテリーは共に82.5kWhのリン酸鉄リチウムイオンのブレードバッテリー。4500回の急速充電を繰り返してもSOC 80%を確保すると説明しており、バッテリーの劣化は小さいようだ。航続距離はRWDが590kmでAWDが540km。出力はリヤモーターが230kW/380Nmで共通。AWDのフロントモーターは160kW/300Nmとなっているが、一種のオンデマンドAWDの制御になっているのも特徴だ。


一般道を走行している環境ではRWDとAWDの違いを感じる場面は少ないが、スラロームテストをすると明確にその違いは感じられる。つまり、アクセルを踏んだ瞬間フロントモーターのトルクが増大し、回頭性を上げるからだ。これはアクセル開度に合わせてフロントモーターの駆動力が変化する制御になっているのだ。
直進時や緩やかなコーナリングではフロントモーターの駆動力は小さく、消費電力を抑え、減速エネルギーを積極的に回生する。また雨や轍など直進性が損なわれるような状況では駆動トルクを上げ、直進安定性を高める制御になっているというわけ。
したがって道路環境が綺麗な場所で、中低速走行が多い環境ではRWDの選択がベターで、高速移動の多いユーザーにはAWDがおすすめという違いになると思う。また0-100km/h加速の俊敏さではRWDが6.7秒、AWDは4.5秒とスポーツカーレベルなのだ。さらに4ポッドのブレーキキャリパーを装備しているので、強力なストッピングパワーもある。



搭載しているテクノロジーを見てみるとパワートレインはATTO3から搭載している8in1のユニットを採用。8つの部品を1つのユニットにまとめたもので、駆動モーター、インバーター、減速機の主要3部品に加え、DC-DCコンバータや、バッテリーマネージメントシステム(BMS)、冷却システムなどのモジュールで構成されている。これも最先端だ。
また乗り心地も良く、しなやかな動きは可変ダンパーがうまく機能している。高強度ボディだからこそ、サスペンションがしなやかさを作り出している印象だ。それに伴って、デュアルピニオンのEPS(電動パワステ)も滑らかで操舵フィールもいい。適度な手応えとインフォメーションもあり扱いやすい。

ボディサイズは全長4830mm、全幅1925mm、全高1620mm、ホイールベース2930mmで、かなり大きく感じるサイズ。またロングホイールベースは後席の広さに大きく貢献し、フラットなフロアと天井の高さもあり、快適な居住空間が提供されている。さらに後席シートは20度のリクライニング機能もあり、長時間の移動も快適だ。
そしてガラス面積が2.1m2あるが、合わせガラスの採用などにより、静粛性がかなり高く、停車時にドアを閉めた瞬間にその静粛性の高さが感じられる。もちろん走行時のロードノイズも抑えられており、そうした上級な質感はプレミアムモデルの領域と言える。
走行して感じるボディの剛性の高さも特筆もので、BYD独自の車体構造であるCTB(セルtoボディ)が作り出している。これはブレードバッテリー自体をボディ構造の一部として設計しており、シャシーに敷き詰める方式ではなく、バッテリーケースごとボディ構造の一部としているのが特徴だ。

インテリアはシンプルで、15.6インチの大きなタッチモニターが特徴的。シートはゆったりとした大きさがあり、ナッパレザーのシートは高級感たっぷり。BYDオリジナル機能のひとつ、モニターの回転機能もあり、縦、横自在にできるのは地図を見るときに便利だ。
シフトレバーは小さくクリスタルで覆われ、高級感がある。センターコンソールには起毛生地が貼られ、樹脂が剥き出しになっていない。またピアノブラックを上手に使いシルバーとクリスタルとを組み合わせたインテリアは高級感を生み出している。

ラゲッジ容量も500Lと大きく、フロントにも58Lのスペースを持っている。リヤシートは6:4の分割式で、タイヤハウスのでっぱりがなく、フラットな荷室は積載性も高い。

この高級感と高い静粛性、そして間髪入れずに走る俊敏さ、加速力の凄さ、高いユーティリティなどハイレベルなクロスオーバーSUVだが、価格も驚くほどアフォーダブルだ。
RWDが495万円、AWDが572万円で、1サイズ下のCセグメントEVと比べられる価格で提供されているのだ。なお、CEV補助金はRWD、AWDともに35万円。東京都では45万円(V2H給電機能付き)の補助金が出る。