BYD第3弾海洋シリーズのSEALに試乗 ありなのかBYD

BYDから第3弾となる「SEAL」シールに試乗してきた。2023年1月からATTO3、ドルフィンと国内で販売を開始し、累計2300台に達している。最初に販売をしたATTO3が全体の6割〜7割を占めているもののドルフィンは販売を始めたばかりで、今後、比率は変わってくるだろう。そこへ第3弾となるシールも投入された。シールはもちろんEVで、BYDが販売するモデルは現状EVのみになっている。

シールは全長4800mm、全幅1875mm、全高1460mm、ホイールベース2920mmとDセグメントに属する大きさだ。BYDもライバルに位置付けているのはEVであればテスラのモデル3、ICE系ではBMW 3シリーズ、アウディA4、メルセデス・ベンツCクラス、そしてクラウンの名前をあげている。

シールはプレミアムモデルをライバルとして掲げているが、量産の高級車なのか、どこにカテゴライズされるのか不明だが、まだまだ歴史の浅い新興企業だけに斬新でユニークな取り組みをしていることは高く評価できる。従って、デザインもライバルたちに埋没することなく、個性的なものだ。

一般的にはアウディ、アルファロメオでその手腕を振るったウルフガング・エッガー氏が手がけたデザインとされているが、全てをエッガー氏が手掛けるのではなく、中国人のデザイナーが社内コンペを行ない採用しているという。デザインセンターも深圳、上海、そしてロサンゼルスにあり育成にも力を入れているのだ。またデザインは経験よりもセンスを重視する傾向もあり、若い力に期待していることもうかがえる。

e-SPORTセダンというドメイン

シールは名前が示すようにBYDの海洋シリーズに属し、バンパー下部両サイドは波をイメージしたデザインとしたり、テールランプが一直線にしているのは海の広がりを表現したものだという。またドアハンドルは格納式でフラッシュサーフェイスにしているあたりも先進感はある。

同じ海洋シリーズのドルフィンは量販モデルだが、シールは量販モデルよりは高級で、先進的だ。しかしブランドストーリーは短く、これからが期待される新人といった立ち位置になる。

インテリアはシックで高級感のある内装だ。ナッパレザーとバックスキンを組み合わせ菱形のステッチでアクセントをつけ上質だ。そして後席の広さも驚く。足元はフラットでフロントシートを下げても十分な膝前のスペースが確保でき、後席居住性はクラス以上の広さを確保している。

それとルーフがガラスルーフになっていることも特徴的だ。その開放感は素晴らしく、運転席、助手席ではあまり感じられないが、後席からの開放感はサンフールの比ではなくオープンエアとの対比だ。しかもルーフは一枚ガラスで作られているため、よりオープンな気分にもさせてくれるのだ。ちなみに面積は1.9m2の広さがある。

そしてBYDではシールをe-スポーツセダンという独自のポジションを築きたいという。国内では、セダンは絶滅危惧種になりつつあるが、中国や韓国ではセダンは大人気。もちろん欧州でもセダンはSUVに変わることなく継続して販売され、それなりの需要はある。だからスポーツセダンというワードが出てきているわけだ。

シール最大の特徴

そしてシールのアピールポイントとして3つ掲げており、高次元の安全性、シーンを選ばない快適性、そして卓越したスポーツ走行性能の3つだ。スポーツ走行性能以外はセダンに求められる性能であり、e-スポーツセダンこそがシールの最大の特徴と言っていい。

試乗したのはリヤ駆動のモデルとAWDの2タイプ。リヤ駆動モデルはリヤに同期モーターを搭載し、AWDはそのリヤモーターとフロントに非同期型の誘導モーターを搭載している。この前後モーターの組み合わせはテスラのモデル3と同じで、誘導モーターは瞬発力が得意なものの損失が大きいという傾向があり、通常はリヤモーターだけで走行し、加速などの要求時にフロントモーターが駆動する制御になっている。ちなみにRWDは型式認定済みだが、AWD申請中ということだ。

スペックはリヤモーターの出力は230kW(312ps)/360Nm、フロントモーターは160kW(217ps)/310Nm。バッテリーはBYDが得意とするブレードバッテリーでリン酸鉄リチウムイオンバッテリーだ。電池容量はいずれも82.56kWhで航続距離はRWDが640km、AWDが575kmとなっている。

斬新な機構はまずCTB=cell to bodyがある。これはフロアパネルがバッテリーパックで構成されているのだ。つまりバッテリーがボディ構造の一部になっているのだ。ATTO3やドルフィンは通常のフロアパネルの下にバッテリーパックを搭載しており、ボディ構造の進化が伺える。この構造とすることでボディ剛性が著しく向上できるとしているのだ。

そして充電性能も高性能化されている。国内のCHdeMOに合わせ90kWの急速充電器でテストを行ない、SoC30%の状態で30分の充電で42kWhまで回復することができる。シールのシステム電圧は550Vで400Vの出力器からの電力を昇圧させるモジュールをリヤモーター内に搭載しており、250Aで電流を流しているからたくさん充電できるという。さらに詳細は明かされなかったがバッテリーの温度管理にも秘密があり、30分の充電中出力が80kW以上をキープさせることができるのも充電性能が高い理由だという。

ちなみにフロントモーターは3in1で、リヤモーターが8in1で、その昇圧モジュールとオンボードチャージャーを搭載している。そのため回生エネルギーはリヤモーターが担当し、直流、交流の切り替えもリヤモーターユニットで対応している。

技術をフラットに見る

さて、RWDとAWDでの走行性能ではやはり違いがあり、RWDはしなやかでセダンらしい走りだ。静粛性も高く他のEVモデルと同等以上と言える。EPSはデュアルピニオン式で制御も違和感なく適度な手応えを感じながら走れる。

一方のAWDは強烈な加速力が体験でき、瞬間移動する走りをする。だからe-スポーツセダンというカテゴリーを作りたいという気持ちが理解できるのだ。その強烈なトルクを背景にサスペンションもしっかりと踏ん張り、安定感を感じることができる。

そのサスペンションは、メカニカルな油圧式の可変ダンピングアブソーバーをAWDのみに装備し、その瞬間移動を支えているのだ。ちなみにサスペンション構造はフロントがWウイッシュボーンでリヤが5リンク式だ。

このように斬新さと先進さを兼ね備え、デザイン的にも個性的で魅力を感じると思う。とかく「買わない理由探し」をする傾向がSNS等で見かけるが、技術をフラットにみて、その性能を認めることも技術大国日本の責任にも思う。少しでも気になるという人は、ぜひ実車を見て、乗って、「ありかもBYD」を体験してみるのはいかがだろうか。

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