トヨタは2015年9月4日、米国のマサチューセッツ工科大学のコンピュータ科学・人工知能研究所(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory、以下CSAIL)及びスタンフォード大学のスタンフォード人工知能研究所(Stanford Artificial Intelligence Laboratory、以下SAIL)と、人工知能に関する研究で連携していくことに合意したと発表した。
今後5年間でトヨタは合計約5000万米ドルの予算を投じて、CSAILとSAILの それぞれと連携研究センターを設立する。両センターではクルマやロボットへの応用を目指し、1.さまざまな環境における物体の認識、2.高度な状況判断、3.人と機械との安全な相互協調などを実現するための研究を推進する。
CSAIL所長のダニエラ・ラス教授は「我々の研究チームでは周囲の環境を認知し、安全な走行を実現するための先進的なクルマのアーキテクチャーを研究する。一連の研究は交通事故死の低減や事故を予防するクルマの開発にも大きな役割を果たすと考えている」と述べた。
一方、SAIL所長のフェイフェイ・リ教授は「我々はスタンフォード大学が誇る視覚情報処理及び機械学習、大規模データ解析などの技術に基づいて、 クルマがさまざまな状況下で物体や人の動きを認識・予測し、安全で適切な判断をするための技術に取り組んでいく」と語った。
またトヨタはDARPA Robotics Challenge(災害救助用のロボット競技大会)の元プログラムマネージャー、ギル・ プラット博士を招聘し、同博士の協力のもとでクルマやロボットの知能化研究を強化していく。今回の連携研究センター設立には同博士も関わっており、両センターで今後実施する研究やその活用も博士の助言を得ながら推進していく。
トヨタは長きにわたって、交通事故のさらなる削減や高齢化社会の進展といった社会的な課題を背景に、安全を確保しながら、より多くの顧客に移動の自由を提供するため、自動運転技術や高度運転支援システムの研究に取り組んできた。ロボットの技術開発においても1970年代から産業用ロボットの開発に着手し、2000年代以降はパートナーロボットや生活支援ロボットの開発を進めるなど、その技術を積み重ねてきた。
一方でコンピュータ科学や人工知能技術は、運転支援やロボット技術にさらなる革新をもたらす可能性が高いだけでなく、社会活動全般に大きな変革をもたらすことが期待されている。このような背景のもと、トヨタは今後の産業技術の基盤を担う人工知能に関する研究・開発をより一層強化する。本連携研究の成果は自動車やロボット、情報サービスなど将来の製品開発に幅広く応用していくとのことだ。
技術開発本部長の伊勢清貴専務役員は「今回の連携ではクルマに留まらず、お客様の暮らし全般をより良いものにすることを目標に研究に取り組んでいく。人工知能研究の最先端を走る米国のトップ2大学とプラット博士との協力のもと、これまでにない新たなテーマに挑戦して、トヨタの研究開発を大きく飛躍させていきたい」と述べた。
またプラット氏は「今回の連携研究はモビリティを取り巻く課題を人工知能技術により解決しようとする、これまでにない画期的なものだ。トヨタと両大学が力を合わせて相乗効果を生む今回の取り組みに参加できることを嬉しく思っている」 とコメントを寄せた。