【スズキ】新型スイフトスポーツ試乗記 ドライビング好きを魅了するホットハッチ誕生

マニアック評価vol81
2004年、ドラスティックな変貌を遂げてセンセーショナルに登場した、先代「スズキ・スイフト」。そして、そのスイフトをベースに、クルマの基本性能をさらに高めたスポーツモモデルである「スイフトスポーツ」が誕生した。デザインから走りに至るまで洗練され、ヨーロピアン・テイストの走りとクオリティの高ささえ感じられた。

左)DJ藤本えみり、右)モータージャーナリスト佐藤久実氏
左)DJ藤本えみり、右)モータージャーナリスト佐藤久実氏

そして2010年9月、スイフトのニューモデルが登場。そして今回、スイフトスポーツの発売となった。ヒット作の次のニューモデルというのは、自ずとユーザーの期待値も高まるからハードルも高い。造り手側も、フルモデルチェンジとなると「熟成」より、見た目にわかりやすい「変化」を意識して、肩に力が入ってしまうものだ。

しかしながら、新型スイフトは、「正常進化」というに相応しいモデルとなっていた。走りの評価以前に、パッケージングが良い。モデルチェンジのたびに、ボディサイズが大きくなり、エンジン排気量やパワーも上がって行くクルマが多い中、スイフトスポーツは居住性の向上のため全長こそ125mm長くなったが、依然として「手の内に収まる」サイズ&パワーを継承し、「テンロク・スポーツ」ならではの魅力あるパッケージングを備えている。

ベースモデルの「スイフト」は、「間違い探しゲーム」のように、一見、どこが変わったの?というほどデザインも継承されていた。これはなかなか勇気がいることであり、自信の表れでもある。一方、「スイフトスポーツ」は、フロントマスクが先代よりもアグレッシブになり、ベースモデルとも旧型とも差別化が図られている。コンパクトカーのキュートさ、スポーツモデルのアグレッシブさ、上質感がバランスされた好感のもてるデザインに仕上がっている。

 

CVT スイフトスポーツ スズキ
CVTの走り。7速のハドルシフトで元気に走る

ベースモデルに対して、「スポーツ」の名が冠されるが、その走り味は、けっして尖っていないところが良い。装備や機能、そして走りにスポーティテイストがちりばめられながら、肩の力を抜いて走れるリラックス感がある。たとえば、走り出してまず感じたのが乗り心地の良さだ。ベースモデルよりボディの動きは抑えられながらも、”硬さ”はまったくなく、サスペンションがしなやかに動いている感覚が伝わる。そして、常に4つのタイヤが路面をしっかりと掴んでいる安心感がある。

6MT スイフトスポーツシート スイフトスポーツ

6MTとなった新型スイスポ。絶滅危惧種と危ぶまれるマニュアルだけに超貴重なモデル。

ステアリングも、操舵力は重過ぎず、でもしっかりした接地感があるため安心感が高い。切り込んでいくと、舵角に応じて穏やかにノーズが入っていく感覚も自然だ。微少舵角で急激にゲインが立ち上がるような、俊敏性を過剰にアピールするギミックもなく、好印象を抱いた。ステアリングの手応えから応答性、そしてボディがロールして曲がって行く一連の動きに違和感がなく、同じようなテンポでシンクロしているのだ。スポーティでありながら、角がなくわかりやすい操縦性は、コンパクトハッチの醍醐味ともいえる。

一方、ワインディングをややハイペースで攻めると、ちょっとボディの動きが気になってくる。もう少しフラットライドだと、さらにコーナリングを楽しめそう…、という興味もわく。とはいえ、否定的な意味ではない。乗り心地とハンドリングのバランスポイントは良いし、さらにいえば、よりスポーティに走りたい人には、サスペンションを変えるという楽しみ方もある。速く走るために”クルマをいじる楽しみ”があるのもスイフトスポーツの魅力のひとつといえる。

スイフトスポーツ フロントリヤ7_3 スイフトスポーツ

1.6Lエンジンは、最高出力100kW(136ps)/最大トルク160Nmのパワースペックをもつ。最高出力はそんなにパワフルという数値ではない。しかし、エンジンパワーに対して圧倒的にシャシー性能が勝っているというのも、スイフトスポーツが高く評価される要因のひとつである。ゆとりあるシャシー性能ゆえに、素直な操縦性を実現しており、チューニングの楽しみもあるわけだ。

エンジン特性は、良くも悪くもコンベンショナルな性格という印象を受けた。最大トルクの発生回転数は4,400rpm、最高出力の発生回転数は6,900rpmとなっていて、高回転高出力型のエンジン特性となっている。最近は、小排気量でも直噴化や過給器の装着によって、低回転域からフラットトルクを発生するエンジンが主流となっている。そういう意味では、スイフトスポーツは、たとえば登坂時などは、もう少し低〜中速域でトルクがあれば…、と思うシーンもある。その一方、高回転まで回していくほどに力強く加速して行く”盛り上がり”感は、スポーティモデルならではの楽しさともいえる。

スイフトスポーツは、6速MTとパドルシフト付7速マニュアルモードを備えるCVT、2種類のトランスミッションが用意される。国産車においては絶滅危惧種ともいえる「マニュアルトランスミッション」をラインナップする貴重なモデルなのだ。2速〜5速がクロスレシオ化されたMTは、操作性のよいシフトフィールで小気味良くギヤチェンジできる。個人的には、是非ともマニュアルミッションでスポーツドライビングを楽しんで欲しいが、CVTモデルもイージードライブで、スイフトスポーツの魅力をスポイルするところはない。

6MTインテリア スイフトスポーツCVTインテリア スイフトスポーツ

新型スイフトスポーツも、先代同様、それ以上にコンパクト・ホットハッチファン、そしてドライビング好きを魅了すること間違いないだろう。

ヨーロッパでは、コンパクト・ホットハッチセグメントは健在だが、国産車では、このクラスでスポーティに走れるクルマはきわめて少ない。それだけに、スイフトスポーツの存在は貴重であり、歓迎されるのだ。

 

●価格 6MT168万円 CVT174万8250円 ●全長3890mm×全幅1695mm×全高1510mm WB2430mm ●車両重量 6MT 1050kg CVT 1070kg ●JC08モード 6MT14.8km/L CVT15.6km・L ●最大出力100kw(136ps)/6900rpm 最大トルク160Nm/4400rpm ●タイヤサイズ 195/45-17 

 

スズキ公式サイト

COTY
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