2019年3月10日、STI初の主催イベントとなる「STI MOTORSPORT DAY」が富士スピードウェイで開催された。スバル テクニカ インターナショナル(STI)設立30周年を記念したイベントで、ファンにSTIのモータースポーツを間近で体験してもらおうというものだ。
2019年のスーパーGTやニュルブルクリンク24時間車両のお披露目と公式テストを実施。また、スバルのプロドライバー達やチーム監督と直接触れ合えるまたとない機会とあって、熱烈なファンのスバリストたちが大集結した。ドライバーやスバル関係者が「スバルだけのイベントでこれだけの人に集まっていただけるとは思わなかった」と感激の声をあげるほど会場は賑わっていた。
オープニングイベントでは、STI代表取締役社長の平川良夫氏が挨拶をし「近年ではカーシェアリングなどが増えてきているが、STIではそうではなく、これからもファンの皆さんとクルマの楽しさやその情熱をシェアしていきたい」と語った。そのほかにもスバルのドライバーである井口卓人、山内英輝(スーパーGT/ニュルブルクリンク24時間)、カルロ・ヴァンダム、ティム・シュリック(ニュルブルクリンク24時間)、新井敏弘、勝田範彦、鎌田卓麻(全日本ラリー選手権)、久保凜太郎、池島実紅(86/BRZレース)、そしてスーパーGTの渋谷真総監督、ニュルブルクリンク24時間の辰己英治総監督がトークショーを行なった。
スバルのドライバーや監督のトークショーで特徴的なのは、本当に仲が良いんだろうなと思わせる楽しい掛け合いだ。誰かが話している時に横から茶々をいれたり、ツッコミを入れて笑い合ったり・・・そんな様子を見ているだけでもスバルのレーシングチームのアットホームさがよく分かる。
また、ドライバーとスバルファンとの間にも良い関係ができあがっているようだ。山内選手いわく、ニュルブリンクに行くと必ず応援に来てくれるコアなドイツのファンがいて、山内選手がトイレに並んでいると、トイレのドアを何回もノックして先客を早く外に出そうとしてくれるという話には会場も大笑い。
辰己監督からはニュルブリンク車両について興味深い話があった。今年から空力性能を向上させるために車両にサメ肌塗装を施しているが、これはゴルフの雑談から生まれたものだそう。ゴルフボールは昔はただのツルツルの球だったが、傷だらけのボールの方がよく飛ぶということが分かり、今のようなディンプルのあるボールになったという。つまりは表面に凹凸がある方が空力がいいのではないか?という話からサメ肌塗装に行き着いたという。やはりスバルではコミュニケーションの中から生まれるものを大切にしているようだ。
今季のレースの話になるとドライバーも監督もピリッとした雰囲気になり、「2018年のスーパーGTではエンジントラブルでのリタイアがあったが、今年はそのようなことがないよう、全員一丸となって強いクルマづくりをし、シリーズタイトルを狙って必ずいい結果を出す」とファンの前で誓った。
会場内にはトークショーを行う特設ステージのほかに、車両展示や物販コーナーも設置されていた。物販コーナーは開場してからすぐ行列ができ、なんと120分待ちになるという大盛況ぶり。会場限定グッズは閉会する頃にはほとんど売り切れてしまっていた。
また、デトロイトショーで発表されたSTIコンプリートカー「S209」も日本で初展示されており、ファンは興味深そうに車両を眺めていた。S209の開発主査である高津益夫氏も来場し、「これまでアメリカにはSシリーズがなかったため、待ち望んでいたアメリカファンのためにパワーに特化しつつ走行性能の高いS209を作り上げた」と語った。日本には導入されないのか?という質問に対しては、「残念ながら今のところ予定はない」としながらも、個人的には導入して欲しい・・・とこぼしていた。
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プロドライバーたちによる同乗走行会も大人気で、抽選で選ばれた数名のファンが助手席に乗ってドライバーの全開走行を体験できるのだが、今回なんと特別に私も同乗させてもらえることに。ドライバーは86/BRZレースにCG ROBOT RACING TEAMとして参戦している池島実紅選手。実紅ちゃんとは昔からの顔なじみだが、同乗させてもらうのは初めて。自分でも富士の本コースは何回か走ったことはあるので、そこまで気構えなくても大丈夫だろうと思っていたが、とんでもない。ブレーキングの鋭さやシフトチェンジの素早さ、コーナリングスピード、すべてが圧倒的!「うわーはやっ!すごっ!」と叫んでいるうちにあっという間に1周が終わってしまった。降りた途端、横Gのせいで頭の中の血が偏ったらしくフラフラに。レーシングドライバーの道を歩んでいる実紅ちゃんの実力を間近で見て、改めて同じ女性として尊敬の念を抱き、勇気づけられた次第。
STIのモータースポーツへの意気込みを随所に感じたイベントもいよいよフィナーレに。今回お披露目されたスーパーGTとニュルブルクリンク参戦車両、86/BRZレースのBRZにS209を加えて、全車でパレードランを行った。最後に監督やドライバー全員登壇し、それを見守るファンの姿を見て、改めてスバルやSTIを愛する人たち全体の一体感を感じた。
チームが上手くいかないときにもファンの応援があったからこそ、ここまで来ることができたという感謝をチームの誰もが口にしていたし、今回のイベントでもドライバーが積極的にファンと交流しているのを目の当たりにした。「これまでサーキットにスバルの応援をしに来たことがある人ー?」という質問には会場の8割以上の人が手をあげるという、この熱い絆は本当にスバルならではだと思った。いよいよレースシーズン直前。このイベントを通して、ドライバーやスバルのチーム、そしてファンも大いに士気が高まったに違いない。今年のレースシーズン、スバルの活躍に期待したい。<レポート:伊藤梓/Azusa Ito>