スバルはジュネーブショーで、「ボクサー・スポーツカー・アーキテクチュア」、インプレッサ・コンセプト、ヨーロッパ向けトレジアを出展した。
インプレッサ・コンセプト(既報)「次期インプレッサはクーペフォルムの4ドアボディ」は昨年11月に開催されたアメリカ、LAオートショーに出展されたデザイン、パッケージングのコンセプトモデルだ。「ボクサー・スポーツカー・アーキテクチュア」とは、トヨタから出展されている「FT-86 コンセプト」のコンポーネンツレイアウトを意味している。
FT-86の開発・生産を担当するスバルは、水平対向4気ボクサーエンジンをキーテクノロジーにしたスポーツカーレイアウトの優位性を、独自の立場からアピールしようという意図である。このため専用サイトも立ち上げているのだ。
さて、発表された写真から様々な特徴を読み取ることができる。これまでのスバルの水平対向4気筒エンジンは、縦置きFF、縦置き4WDとして搭載されていため、エンジンに結合される縦置きトランスミッションは内部でUターン構造とし、トランスミッションの前端部にフロントデフを組み込んだ構造になっている。
したがって、エンジン全長はきわめて短いとはいえ、フロントアクスルより前に位置するオーバーハング搭載となり、このため、前後の荷重配分は60:40となっていた。これに対して、FR用に搭載する場合は、通常の縦置きトランスミッションと組み合わせるため、フロントデフが不要でエンジンの位置は少なくともフロントデフ分、約20cm程度後退するため、水平対向エンジンはフロントアクスルの真上に来ることになる。(後のスバルの発表では後退量は240mm)
もうひとつ、フロントデフを内蔵したトランスミッションの場合は、デフの出力軸、つまりドライブシャフト軸をホイールセンターに近づけざるを得ないため、トランスミッションは傾斜角を持ち、それに合わせて前方のエンジンも前端を持ち上げるため、角度を付けたレイアウトとなる。
これに対してFRレイアウトでは、前輪用のデフは不要でドライブシャフトが存在しないため、トランスミッションは低く、より水平にレイアウトでき、したがってエンジンもより低い位置に搭載することができる。(後のスバルの発表ではインプレッサ比較で120mmダウン)わずかに角度が付いているのは、エンジン前端下側の排気マニホールドとオイルパンをクリアするためだ。
以上のような点から、水平対向エンジンは従来より後方に、そしてより低い位置に搭載され、直列エンジンよりはるかに低重心というパワートレーンレイアウトとなり、運動性能を重視するスポーツモデルにとって有利といえるのだ。前後荷重配分は恐らく55:45あたりだろう。
これがボクサー・スポーツカー・アーキテクチュアの核心といえる。なお、サスペンションはフロントがストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式で、これは現在のインプレッサなどと同じユニットを使用していると見られる。FR用縦置きトランスミッションはアイシン製の6MT、6速AT、リヤデフは従来のスバルのデフより容量の大きなマークX用クラスになるだろう。