マニアック評価vol284
新型スカイラインに2.0Lターボを搭載した「スカイライン200GT-t Type SP」を試乗してきた。
◆ポジショニング 新型スカイラインは2014年2月にハイブリッドモデルが発売されたが、2014年5月に2.0Lガソリンターボエンジンを搭載するモデルも投入された。このエンジンはご存知のようにメルセデス・ベンツ社の設計で、ドイツのウンターテュルクハイム工場で生産されているが、2014年6月からは北米の日産工場でも生産が始まり、今後は北米製のエンジンに切り替えられる予定だ(参考記事)。
さて新型スカイラインが目指したことは、プレミアムセダンカテゴリーへの挑戦であり、日産らしくプレミアムなだけでなく、走る楽しさや動力性能にもこだわったプレミアムGTセダンとすることである。 ライバルとなるのはBMW3シリーズ、アウディA4、レクサスIS、メルセデス・ベンツCクラスなどになるが、彼らより、より走る喜びや楽しさを追求したモデルという位置付けで、新世代のプレミアムアスリートセダンを目指している。ただしボディサイズは全長4800mm×全幅1820mm×全高1440mm、ホイールベース2850mmで、Dセグメントのサイズ、北米で言うミドルサイズセダンという大きさになる。そのため5シリーズやEクラスまでもライバルということになり得るが、走りに重点を置く性格上欧州Dセグメントとの直接対決ということになる。
グレードは「200GT-t」、「200GT-t TypeP」、「200GT-t TypeSP」の3グレードで、いずれも2WDのFRとなっている。価格は383.4万円から456.84万円(消費税込み)で、月販目標200台と少ない。試乗モデルは200GT-tのトップグレードType SPを試乗した。
◆インプレッション 先行したハイブリッドとの違いでは、ハイブリッドに対して前述した2.0Lガソリンターボ+7速ATという搭載するパワーユニットの違いになるが、他にも話題となったバイワイヤーステアリングやバイワイヤーブレーキなどは装備せず、コンベンショナルなものになっている。
エンジンはメルセデス・ベンツC/Eクラスに搭載するピエゾインジェクター直噴ターボの4気筒・2.0L(M274型)だが、成層リーンバーン仕様ではなくスカイライン用はトルク特性から通常燃焼(ストイキ燃焼)するエンジンを搭載している。なおメルセデス・ベンツも仕向け地によってストイキエンジンと使い分けしている。出力の絶対値としてはどちらも211ps/350Nmというスペックで同じだ。またメルセデス製のトランスミッションもスカイライン用に変速速度を速めつつ変速ショックを少なくするようなチューニングをしている。さらにファイナルギヤを少しローギヤードにして低回転域でのトルク感や出だしの力強さを出せるように、制御変更している。
試乗フィールとしてこれらの違いを感じることは難しく、わずかに異なるだけだと思う。同時比較試乗してわかるというレベルではないだろうか。逆にエンジン音は気持ちよく聞こえるようにしてあり、踏み込んだときの音はスポーティな雰囲気を得られる。パドルシフトもあるので、積極的にシフトを変えて走りを楽しめる。
だが、そのフィールとしては、難しいところで、高級車の中でもスポーティな走りを意識したモデルという位置付けを考えるなら、もっとダイレクト感のある味付けでもいいような気がする。 パワーステアリングは、一般的になりつつあるEPS(電動パワーステアリング)ではなく、油圧電動式を採用しているがフィールがいまひとつという印象だった。
操舵フィールという点では、切り足し方向のフィールは手応えもあり良いが、戻す方向のフィールに少し違和感がある。 切り足す方向は手応えのある重さなのだが、切り戻す方向は妙に軽いので、その操舵の重さの「差」が気になるのだ。ただ直進の座りは、はっきりしており安心感はあるので、旋回中の舵の座りもしっかりあれば操舵フィールに違和感は生まれない。また、外乱修正をデバイスで行なうのはプレミアムモデルには必要だと思う。
乗り心地では試乗車が19インチのランフラットタイヤを装着していて、履きこなしという点では少し厳しい。どうしても大きな入力のときにガツンと感じてしまう。しかし巡航時の静粛性においてはクラスを超える静かさを持っている。それだけに高速道路での継ぎ目などの入力ショックはもう少し抑えたい。BMWもそうだったがランフラット導入時に、乗り心地に難があったように、履きこなすには少し時間が必要なのだろう。 ハンドリングではコーナリングスタビリティ・アシストの制御もあり、また、リヤタイヤのトー変化の影響なのか回頭性は高い。四輪それぞれにブレーキをVDC(ヴィークル・ダイナミック・コントロール)システムによって制御し、回頭性を高めている。したがってワインディングは快適で走ると楽しく気持ちいい。
しかしアンジュレーションのきつい場所や高い速度域では、リヤ・イン側ダンパーの追従性やリヤ左右輪のトーアングルなどに乱れがあるのか、しっくりとしたフィールが薄れるときがある。ハンドリングも基本いい方向のベクトルなのだが、もう少し煮詰める必要を感じてしまう。 こうして試乗を終えると全体としては欧州プレミアムモデルと戦う準備が整っているモデルだと思う。だが、細かなツメと言ったらいいのか熟成期間を長く取り、煮詰めていく必要があるのかもしれない。