日産自動車は2022年11月28日、小型ミニバン「セレナ」をフルモデルチェンジし6代目となるニューモデルを発表した。ラインアップはガソリンエンジンの2.0Lモデル、シリーズハイブリッドのe-POWERモデルで、グレード展開は両シリーズともに「X」、「XV」、「ハイウェイスターV」となり、今回からe-POWERにのみ最上級の「LUXION(ルキシオン)」を新設定している。「LUXION」には高精度地図データを搭載し、ミニバンとしては世界初となる高速道路同一車線走行時に40km/h以上でのハンズオフ機能が可能なプロパイロット2.0を装備している。
セレナは競合するトヨタのノア/ヴォクシー、ホンダのステップワゴンに続いての6年振りのモデルチェンジとなっているだけに、室内空間の広さや利便性は保ちつつ、移動時の快適性を追求したモデルに仕上げている。最進技術の採用や機能の充実を図り、家族との時間を快適に過ごすことのできるミニバンとして進化させ、日常での使用からロングドライブまでフルに使えるミニバン・No1を目指して開発されている。
ボディサイズは、全長4690mm(ハイウェイスターV、LUXIONは4765mm、オーテックは4810mm)、全幅1695mm(ハイウェイスターV、LUXIONは1715、オーテックは1725mm)、全高1870mm(LUXIONは1885mm、オーテックは1850mm)、ホイールベース2860mmで5ナンバー・ミニバンのサイズになっており、乗車定員は8人、または7人の3列シート配置となっている。
ガソリンモデルは、150ps/200Nmを発生する2.0LのMR20DD型エンジンとCVTを組み合わせ、WLTCモード燃費は13.4km/L。このガソリンモデルはエントリーモデルとして設定されている。
e-POWERのシステムは、ノート/ノート・オーラなどと同様に第2世代に進化。より高効率で、しかもエンジンの稼動をできるだけ抑え、静粛な室内としている。それに加え、世界初となる地図情報先読み充放電制御を新採用している。
ナビの地図データを参照し、下り坂などでバッテリーが満充電になることで回生ブレーキ力が無駄に放出することを防ぎ、先読み制御により下り坂手前の登坂時にモーターによるEV走行距離を増大させるなど実走行時の効率を向上させている。
e-POWERモデルの発電専用エンジンは、従来型の84ps/103Nmを発生するHR12DE型1.2Lから新開発された1.4LのHR14DDe型に変更されている。これまでの1.2Lエンジンでは高負荷走行でやや苦しかったため、排気量をアップすることで98ps/123Nmと出力をアップし、高負荷でも十分な発電力を確保したのだ。
なお、HR14DDe型エンジンは従来のHR12DE型の78.0mmというボア径はそのままにストロークを16.4mm延ばし、100mmというストロークを確保している。そのためエンジン高はやや高くなっている。
そして、ミラーサイクル運転を行なうため、吸排気に高応答のリニアソレノイド式の油圧可変バルブタイミング機構を吸排気カムに装備する。そして燃料噴射は直噴式としている。また、ロングストローク化と高トルクに対応するため強化された鍛造クランクシャフト、フレキシブル・フライホイールと、3気筒特有の振動を軽減するバランサーシャフトを日産で初採用している。
駆動用のモーター出力は163ps/315Nmとなり、従来型より約20%アップし、加速力、追い越し性能を向上させている。
こうしたe-POWERのパワートレインが洗練されたこと、さらにボディ全体の吸遮音を徹底することで、静粛な室内とし、ロングドライブでも室内の疲れを抑制している。
新型セレナでは、さらにより滑らかに走り、クルマ酔いしにくくするためにシャシー性能も向上させている。サスペンション剛性を約50%も高めているのだ。フロント・サスペンションメンバーはボディ側にダイレクト結合され、スタビライザーを強化してロール剛性を大幅に高め、さらに新開発のダンパーを採用している。これらによりロール速度は従来型より13%遅くなり、過大なロール、高速道路での横風などでのふらつき感を大幅に低減させている。
この他に、左右方向にホールド性を高めた新ゼログラビティ・シートの採用、2列目シート、3列目シートからでもより広く水平な視界を確保することで平衡感覚の狂いを抑制しており、総合的に長距離ドライブでもクルマ酔いしにくくしている点もファミリードライブの機会が多いミニバンでの大きな訴求点になっている。
新型セレナは全モデルに、運転支援システムのプロパイロットを標準装備している。360度セーフティアシストはもちろん、メモリー機能付きの「プロパイロット パーキング」を日産として初搭載し、さらにインテリジェント・ルームミラーに一体化されたドライブレコーダーもオプション設定。
そして最上級のLUXIONは、より高度な運転支援システム「プロパイロット2.0」を搭載している。高精度地図データ、各種センサー情報を統合し、高速道路上ではカーナビで設定したコースを、ハンズフリーで、ジャンクションの分岐、合流、追い越しなどが可能になり、長距離ドライブでの疲労を大幅に軽減することができるのだ。なおLUXIONは、リモコン操作でクルマの出し入れが可能となる「プロパイロット リモート パーキング」も採用している。
デザインは、より上質でモダンな要素を取り入れ、全体でクリアなフォルムを実現。ランプ類はすべてをLEDとし先進感を強調。
LUXIONとハイウェイスターは、標準ボディをベースに、ダイナミックで力強い走りをイメージさせるデザインに仕上げている。
ボディカラーは、2トーン4色、モノトーン10色の全14色をラインアップしている。
インテリアも、先進感と上質差を追求。フラットなインスツルメントパネルとディスプレイの組み合わせですっきりしたデザインとし、一クラス上の快適さ、収納性のよさなどファミリー層向けの利便性なども充実している。運転席は、視界を遮る凹凸を減らすことで、視界が開け、運転のしやすさを向上。
シートは素材の高級感と、菓子などの食べかすが隙間に入り込みにくく、飲み物などをこぼしてしまった時もふき取りやすいなどの機能性を両立させている。
またシフトには日産として初めて、センターパネルに配置したスイッチタイプの電子制御シフトを採用。スッキリとしたデザインと分かりやすい操作性を実現している。
室内スペースはクラストップだ。そして運転席の足の通過スペースを先代モデルから120mm拡大し、運転席と助手席の間の移動をよりしやすくしている。また、3列目シートにもシートスライド機構を標準装備したことで、8人フル乗車でもゆったりとした座り心地を実現している。
2列目シートは先代モデルからのマルチセンターシートを進化させ、e-POWER車でも8人乗りを実現(LUXIONは7人乗りのみ)。家族で使用するシチュエーションに合わせて、7人から8人乗りを自由自在にアレンジできる。
リヤのバックドアは全体を開けずに荷物の出し入れが可能なデュアルバックドアも使い勝手を向上。開口時のサイズを見直すことで、より狭い駐車スペースにおいても使用できるようになっている。また、ハンズフリーオートスライドドアは、センサー感度を向上させるなど、操作性のよさにもこだわっている。
装備では、車内Wi-Fi、通信を使用した乗る前エアコン稼動なども可能になっている。
なお新型セレナの発売は半導体不足などにより遅れが生じており、ガソリン車は今冬に、e-POWERモデルは来春の発売予定だ。また後日ガソリン4WDモデルも追加されるが、現時点では価格なども未決定となっている。
価格
オーテック仕様車
日産モータースポーツ&カスタマイズも、セレナのカスタムカー「AUTECH」、「ステップタイプ」、福祉車両「ライフケアビークル(LV)」シリーズ、車中泊仕様の「マルチベッド」をフルモデルチェンジし、ガソリン車を今冬から、e-POWER車を来春に発売する。
AUTECHは、専用の装備や仕様とすることでより高級感を高めた仕様になっている。ボディカラーは、「AUTECH」専用色のカスピアンブルーや専用2トーン3種類を含めた、全7色をラインアップ。
「ステップタイプ」は、助手席とリヤの助手席側スライドドアから乗降する時のいずれでも、同時に使えるロングステップを装備。助手席ドアもしくは助手席側スライドドアの開閉と連動して、ステップが展開・格納する。ステップイルミネーションも装備し、踏面に加えステップ下の路面も照らすことで、暗い場所でも安心して乗降ができる。
「ライフケアビークル(LV)」シリーズでは、助手席スライドアップシート/セカンドスライドアップシート仕様で、シート回転・昇降操作に加え、シートスライドとシートリクライニングの操作なども可能とした多機能リモコンを標準装備している。
チェアキャブ スロープタイプ、チェアキャブ リフタータイプは車椅子を登載する仕様。チェアキャブ スロープタイプは、手動式のスロープや車椅子乗降アシスト装置(電動ウインチ)、車椅子固定装置(電動式)を装備した車両。車椅子が2列目左側に乗車できる「車椅子1名セカンド仕様」など、使い方に合わせて全4種類のレイアウトから選択できる。また3列目に車椅子が乗車しない時には荷物スペースとして使用できるよう、バックドア部のスロープの格納方法を改良したほか、車椅子の乗降時の各種操作スイッチを簡明にするなど、操作性の改善。
チェアキャブ リフタータイプは、簡単なリモコン操作で昇降する全自動リフターを装備し、車両後部から車椅子のまま車内に乗り込める車両だ。新型では、オプションの車椅子固定装置(電動式)のフックを、従来の一体型から分離式に変更し、よりさまざまな種類の車椅子の固定を可能にしている。
送迎タイプは、福祉施設や病院のみならず、ホテルや旅館などの送迎ニーズにも対応する車両だ。乗降時や各シート乗車時に使用できるアシストグリップを標準装備し、シンプルな装備で、価格訴求モデルになっている。
マルチベッド車は、日常では通常に使用でき、アウトドアスポーツや大きな機材を使用する趣味を楽しむ人、ペット連れの旅、車中泊に最適なモデルだ。そのため3列目シートを取り去った2列シート仕様とし、収納式のベッドシステムを備えている。防水シートを標準装備し、さらに、ベッドマットにはシートと同じ防水性のある素材を採用。また今回、e-POWER車の定員が1名増えて5人乗りとなったことに加え、ベッドマットの厚みを増し、より快適な就寝を可能としている。「XV」、「ハイウェイスターV」、「e-POWER XV」、「e-POWER ハイウェイスターV」グレードのほか、カスタムカー「AUTECH」もベース車としてラインアップしている。