日産 マイナーチェンジした「NV350キャラバン」の地道な耐久テストを体験

2017年7月12日、NV350キャラバンがビッグマイナーチェンジを受けて登場した。2012年6月のデビュー以来、5年振りの改良でライバルに立ち向かう。商用車ワンボックス・バンは年間販売台数10万台という安定した市場だが、この市場をトヨタ・ハイエースと、NV350キャラバンの2車種でシェアを争っている。

日産 マイナーチェンジした「NV350キャラバン」の地道な耐久テストを体験

■装備の充実

今回のビッグマイナーチェンジでは、競合車との差別化をアピールするとともに、ユーザー調査の結果を受け装備の充実を行なっている。デザインでは、エクステリアは前後を刷新し、特にフロントはVシェイプをより強調した力強いマスクになっている。

インテリアはステアリングホイール形状が乗用車タイプに変更され、トリムもピアノブラックやメッキ処理などで質感を向上。またカーナビ用のスペースを2DINサイズにワイド化した。さらに要望の多かったオートエアコンをプレミアムGX、GXに標準装備化している。

日産 NV350キャラバン プレミアムGX コックピット
プレミアムGXのインテリア

その他の装備ではインテリジェント エマージェンシーブレーキとVDCを従来は設定のなかった4WDを含めバン全車に拡大採用。さらに4ナンバークラスで初めて「インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物検知機能付)」を設定している。

日産 NV350キャラバン QR25DE YD25DDTi エンジン
左がQR25DE型ガソリンエンジン、右がYD25DDTi型ディーゼルターボエンジン

■室内での耐久試験

今回のマイナーチェンジに合わせ、NV350キャラバンの開発、生産を担当する日産車体・秦野事業所の実験部で、耐久試験を体験することになった。

NV350キャラバンは仕事で使う商用車なのだが、休日にはレジャーで使用するなど多用途で、当然ながら稼働率も一般的な乗用車より遥かに多くなる。こうしたクルマは何よりもタフさや信頼性が重視される。その一方で稼働する日数が多いだけに、快適性や安全性のウエイトもある意味で乗用車よりさらに重要でもある。

ーー耐熱試験

室温を35度〜55度、湿度は90%まで設定できる実験室で耐熱試験が行なわれる。シャシーダイナモ上にクルマが乗せられ、前方には送風機を配置している。この試験は主として、冷却性能の確認、室内の空調性能の確認、さらにゴムや樹脂部品の耐熱性の確認などが行なわれる。

日産 NV350キャラバン 耐熱試験風景

ーースライドドアの耐久試験

ロボットを使用してのスライドドアの耐久試験。10秒に1回のペースでドアを開閉し、加速度計、応力、ひずみゲージなどのセンサーにより、24時間稼働で規定の耐久回数のテストを行なっている。

日産 NV350キャラバン スライドドア耐久試験風景

ーー4輪加振試験

このテストは、4輪独立に油圧ピストンで上下振動を加え、シャシー、ボディの耐久性を試験する。上下の振動は一定ではなく、日産の栃木実験部の悪路試験路を基準に、その走行データ通りの振動をこの試験装置で再現する。この加振試験により、実走行するよ耐久試験時間を短縮できるわけだ。

日産 NV350キャラバン 4輪過振試験風景
各4輪下の円筒形油圧ピストンが、プログラムされたモードに従いストロークする

ーー寒冷環境試験

-40度Cの環境下での内外装部品の熱変化による変形や変色、接着剤の剥がれなどを確認する静的な試験。環境室は-40度C〜90度Cまでの室温を設定できる。-40度Cの環境から、ドアを開けると大量の水蒸気が発生する。

日産 NV350キャラバン 寒冷環境試験風景
-40度Cの環境室内。ガラス面などは全て凍結している
日産 NV350キャラバン 寒冷環境試験風景
寒冷環境室のドアを開けた状態

■実走行試験

ーー逆位相路面の走行

位相がずれた「ねじれ路」では車体、シャシーにねじり入力があり、その状態でも異音などがでないかを確認する試験だ。この路面ではシャシーに前後左右の複合的な入力が加わるので、台上試験では再現できないため、この試験路が使用されている。

日産 NV350キャラバン 逆位相路面走行試験風景

ーー登坂路

登坂路では、新たに追加装備された「ヒルスタートシステム」をデモンストレーションした。ブレーキペダルから足を離しても3秒間はブレーキが保持されるので車両がずり下がらないので、坂道発進での安心感が高まる。登坂路は20度と30度の2種類があり、写真の登坂路は30度だ。

日産 NV350キャラバン 登坂路走行試験風景

ーー悪路走行

日産社内基準として設定された世界各地の悪路を再現したコースを走行する試験。石畳の路面で、不規則な凹凸路になっている。この路面を走行するとシャシーは激しく上下する。外から見るとそれほど厳しい悪路には感じられないが、実際に走ると車上では車体が上下に不規則に激しく揺さぶられる。乗り心地や耐久性の確認には欠かせない路面だ。

日産 NV350キャラバン 悪路走行試験風景 石畳

このように、地味だが重要な耐久試験が日々繰り返され、さらに市場でのユーザーの声を反映することで、NV350キャラバンのようなワンボックスカーは熟成され、鍛えられていくことが実感できた。

NV350キャラバン諸元・装備表

日産 NV350キャラバン 価格表

■オーテックジャパン仕様

オーテックジャパンは、NV350キャラバンのマイナーチェンジに合わせ、カスタムモデルの「ライダー」、送迎仕様車「送迎タイプ」、車いす仕様車「チェアキャブ」をマイナーチェンジして発売する。

NV350キャラバン「ライダー」はオーテックが生産し、もうひとつの個性をアピールするカスタムモデル。仕事でもプライベートでもこだわりを求めるユーザーのためのに生まれたが根強いモデルで、専用の内外装パッケージ・オプション「プロスタイル・パッケージ」が設定され、ホイール、インテリアのトリム、LEDヘッドライトなどが選択できる。

日産 NV350キャラバン ライダー フロントイメージ

NV350キャラバン ライダー・ワゴン諸元・装備表

NV350キャラバン ライダー・バン諸元・装備表

日産 NV350キャラバン ライダー 価格表

NV350キャラバン「送迎タイプ」は送迎仕様で、5ナンバーサイズの10人乗りワゴン、14人乗りを実現。専用シートレイアウト(10人乗りワゴン)、手すりやグリップ、スライドドア開閉に連動して出てくる「オートステップ」などを装備している。

NV350キャラバン「チェアキャブ」は、福祉施設や病院の送迎用、福祉・介護タクシー用の仕様で、リモコン操作で昇降する全自動リフターを装備し、車両後部から車いすやストレッチャーのまま車内に乗り込める。今回のマイナーチェンジで前型モデルの車いす1名仕様(C仕様)を、いざという時にもう1名車いす乗車ができる「車いす1+1名仕様」に仕様向。

日産 NV350キャラバン チェアキャブ

さらに先進安全装備のインテリジェント エマージェンシーブレーキ、VDC、ヒルスタートアシスト、インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物 検知機能付)を標準設定した。

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