日産ノートの上級モデル「NOTE AURA」ノートオーラが発表され、テストコースで試乗をすることができたのでお伝えしよう。
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既報のように日産はノートオーラを「プレミアムコンパクトカー」と位置づけし、ノートを高級仕立てにしたプレミアムコンパクトとしているが、量産モデルであることには変わりない。そして高級、上質にするためにノートよりボディサイズを大きくし3ナンバーサイズとなる全幅1735mmへと+40mm拡大。全長は4045mm、全高1525mm、ホイールベース2580mmでB+セグメントのサイズになっている。
開発エンジニアやマーケティング担当に話を聞くと、Cセグメントの量販モデルを直接のライバルにしたいと話す。トヨタからは先日アクアの新型がデビューしているが、ノートオーラではズバリ、プリウスに流れているユーザーを取り戻したい狙いがあるというわけだ。プラスして、SUVやワンボックスからのダウンサイザーをターゲットとし、コンパクトだけど安っぽいのはNGというユーザーに応えるモデルとしている。
そのためには、ノートよりも上質で広く、大きく、そして乗り心地やドライブフィールなどもライバルより魅力的に感じてもらう必要がある。パワートレーンには第2世代のe-POWERを採用し、シリーズ式ハイブリッドだけに絞ったラインアップとしている。これはノートも同様でe-POWERだけのラインアップとしているが、出力をノートよりもアップさせ、より差別化を明確にしているわけだ。
試乗
早速試乗してみたが、コースは神奈川県横浜市追浜にある日産のテストコース「グランドライブ」。ここで2WDと4WDの2タイプを試乗することができた。ちなみに、発売は今秋としているがおそらく半導体不足による生産調整が日産全体で行なわれており、明確な発売日が確定できないのではないかと想像している。
第2世代のe-POWERとは先代のノートがEM57型モーターだったが、新型ノート、ノートオーラには新規開発したEM47型を搭載している。そして冷却系をコンパクトに収めることでインバーターを含むユニット全体を小型化しているというのが第2世代となる。
さらにノートとノートオーラの差別化には独自の制御変更を加え、最大トルクを280Nmから300Nmへ、そして最大出力も85kWから100kWへとそれぞれ7%、18%アップさせ、上級モデルであるという差別化をしている。さらに中速域からの伸び感をチューニングし、より高級車と感じられるパワートレーンとしているのが特徴だ。
さらに4WDモデルでは、発進加速時のアシストだけではなく、フルタイムで4WDとなるシステムへと変更している。雨天の高速走行やもちろん積雪、深雪などで威力を発揮する。
このe-POWERの仕組みはご存知のように、全車速域をモーター駆動で走行し、エンジンは充電のために稼働するというシリーズ式ハイブリッド。まれにレンジエクステンダーとの記載も見かけるが、電気自動車のように外部充電はできないので、シリーズ式ハイブリッドという言い方になる。
また全車速域がモーター走行のため、変速機はなく前進と後進の切り替えだけだ。もちろんPポジションは存在し、前進の「D」にはドライブモードが割り当てられている。また「B」モードもあるので、積極的に減速回生を使うことはできる。
今回のテストシーンではWレーンチェンジのように急なハンドル操作をしたときのリヤの安定感の違いが駆動方式の差として多少感じられるものの、舗装路の一般道を模したテストコースでは大きな違いとしては感じにくい。日産からは発進時のリヤの押し出し感やコーナリング脱出時のリヤからの押し出しを感じて欲しいという説明だったが、理論上はそうだが実体験としては難しい。
さて、高級、上質なモデルに欠かせない静粛性や乗り心地では、ノートとは明らかにレベルの違う静粛性としっとりとした走りをする滑らかさがあった。とりわけしっとりとした走行フィールはドライバーに高級さを感じさせ、狙いどおりの高級感は出せていると感じる。
そう感じさせる大きな理由のひとつに、エンジン音が聞こえないという要素がある。走り出しはモーターで動きだし、ゆっくりアクセルを踏んでいる分にはエンジンは始動しない。バッテリー残量が減ってくるとエンジンが始動するが、走行音に紛れるため大きなエンジン音とはならない。このときもモーター駆動で走行しエンジンは充電するために始動している。
また走行中にアクセルを大きく踏み込んでも、エンジンの回転は上がらないのにしっかり加速していくという点も特徴のひとつ。バッテリー残量しだいでエンジンが高回転になったりする場面もあるが、それでもエンジンの存在は気になるほどではなく、キャビン内は静粛性が高い状態が維持されているのも高級感につながっていると思う。
その静粛性では、フロント左右のウインドウにまでラミネートタイプのウインドウを採用しており、風切り音やロードノイズといったノイズは非常に低減できていると思う。プレミアムを名乗るのであれば、もうひとつ、ルーフからの音対策はほしいところ。舗装路を晴天の状況では静粛性は高いが、例えば雨やトンネルといった場所ではルーフに当たる雨音、反響する音の侵入があるので、そこまで抑え込めればさらにレベルの高いプレミアムコンパクトと言える。
ドライブモードではECO SPORT NORMALの3モードがあり、加速力に差をつけていたり、Dレンジでの減速力に違いをつけている。さらにBモードでは最大減速Gに違いをつけていた。また4WDのSPORTモードは2WDのSPORTモードよりも加速力をつけているので、このモードが最速の加速をすることになる。また減速Gでも2WDの最大値は0.18Gだが4WDの最大減速Gは0.2Gまで立ち上がるように細かく制御を変更していた。
公道での走行はできていないが、100kW/300Nmの出力はコンパクトカーには十分な、余裕ある出力と言え、高速道路での追い越し加速や、市街地での中間加速などパワー不足を感じる場面はなさそうだ。このあたりは公道を試乗したときに詳しくお伝えしたい。
最後に「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」についてお伝えしたい。静粛性が高く保たれたキャビンでは上質な音楽も楽しむことができるが、ノートオーラではナビとプロパイロットとのパッケージオプションで、このBOSEのシステムが搭載できる。
このシステムはノートオーラ専用に作られたシステムで前席左右のヘッドレストにスピーカーを内蔵している。さらにドアパネルに埋め込まれた16センチのワイドレンジスピーカーは、車両設計段階から共同開発していたため、実現している。
というのは、コンパクトカーのドアパネル裏側には補強用の骨組みやパワーウインドウのリンケージなどが所狭しと詰め込まれている。そのため16cmあるサイズだと後付できないケースがほとんど。そのため、16cmサイズを埋め込む前提でドアパネルを設計しているため、問題なくきれいに埋め込むことができているわけだ。
そしてナビ画面を使って音の広がりを変更できるプログラムも組み込まれており、音楽を存分に楽しめる移動空間を作り出すことができていた。こちらはオススメアイテムとしてお伝えしておこう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
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今回の記事は、 FMヨコハマの番組「THE MOTOR WEEKLY」でもピックアップ。
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