【日産】リーフ試乗インプレッション 石井昌道動画

マニアック評価vol43
発売からそろそろ半年が経ち、街でもチラホラと見かけるようになった日産リーフ。本格普及型EVとしては三菱アイミーブに次ぐ第2弾といえるが、戦略はより大胆であり本気度は高い。三菱はアイミーブの生産計画を2009年は2000台/年、2011年以降は1万台/年としていて、その後倍近くまで引き上げるとしてきたが、日産は初年度からいきなり5万台/年。2012年にはアメリカ、2013年にはイギリスの工場が立ち上がり計25万台/年規模を計画しているのだ。

多くの自動車メーカーは、2020年にEVが乗用車販売に占める割合を5%程度と予想しているなかで、日産・ルノー・グループは10%と強気の見通しをしており、そのために早めに仕掛けで覇権を握ろうというつもりなのだろう。

そういった鼻息の荒さは、リーフがEV専用車であり、なおかつCセグメントであることにも表れている。アイミーブを始め今後発売される他の多くのEVがA〜Bセグメントのシティコミューターであるのに対して、あえて大きめとしたリーフを日産はリアルカーと表現。きちんとした居室スペースがありユーザーが毎日乗りたいと思える、リアル・ワールドで満足するクルマにしなければ、グローバルリーダーとなれないという決意だそうだ。

リーフ2 リーフ1

インテリア

そういった背景があるからか、リーフはなかなかに完成度が高い。スタイリングの好き嫌いはかなり大きくわかれそうではあるが、インテリアはEVに期待される未来感を十分に意識した造り込みがなされている。センタークラスターのカーナビ、空調のコントロールユニットはダイヤルなどを廃したフラットパネルとなっておりデザインはタブレット型電子デバイスのよう。ドライバー眼前のデジタルメーターは贅沢にも上下2分割となっており、上部はスピードやエコインジケーターを、下部は電気量や回生状態など表示。シフトは一般的なレバーではなく、パソコンのマウス感覚で操作するスイッチとなっている。インターフェースは先進的でiPhoneやiPadなどに共通する雰囲気なのだ。そういえばシステム・オンにするためにスタートボタンを押すと、即座にスタートアップサウンドが鳴るのもMacっぽい(Windowsはしばらく経ってからでないと鳴らない)。カーナビ・オーディオ系の音源は、システムオンから数秒経たないと立ち上がらないため、わざわざスタートアップサウンド専用の回路を採用しているという。

リーフ_インテリア リーフ_メーター

魅力的な乗り味

EVの乗り味は、ゼロ回転から最大トルクを発生する電気モーターの特性によって低速域からトルクフルだと言われる。リーフも発進時から1520kgもの重さを感じさせず、軽々と車速をのせていくが、かといって過剰に背中を押されることはなく、じつに巧妙なトルクの出方をする。電気モーターはあまりに低回転トルクが強いため、制御次第では発進で暴れ馬になってしまうこともあるが、リーフはドライバーの感覚とピタリとあった加速をしてくれる。これは、低速域が強いため相対的に高速域での頭打ち感が出がちなEVの癖を抑制することにも繋がっている。EVにしては伸びやかな特性を持っており、高速道路でももどかしい思いをすることがない。ほんの少し前まではトヨタやホンダにエコカーで遅れをとっているかに見えた日産だが、電気モーターやリチウムイオン・バッテリーの研究開発は長年地道に行ってきており、リーフでそれが開花したといえる。

リーフ_インバーター

↑インバーター

サスペンションはかなりソフトめだ。低転がりを意識したタイヤが少しゴツゴツすることもあるが、街中から高速道路まで乗り心地はまずまずといったところだろう。ただし、1人で乗っているときは快適だったのだが、3人乗りで荷物も多かったときには少し不快な面も見て取れた。高速道路で凹凸が連続していると上下動の収まりが悪くスッキリしないのだ。

それでも、全体的にはリーフは非常に高い完成度をもっており、乗り味という点ではほとんど不満はでないだろう。

 

EVの課題と言われる航続距離に関しては、ユーザーの使い方、考え方次第。リーフの航続距離はカタログのJC08モードで200km、一般的な使い方で130〜140km、暖房や冷房に強く負荷がかかるような条件だと100km以下といったところ。それでも、ほとんどが近距離でしか使わない、あるいは街中がメインというであれば十分だろう。たいていの都市部の昼間の平均速度は約20km/hなので、悪くても5時間は走れる。それだけ走れば人間のほうが疲れるぐらいだからだ。

充電器1

その気になれば、ディーラーや高速道路のSAに設置されている充電器を使ってロングドライブに出かけることも可能だが、実際にはいざ使いたいときに営業時間外だったり、意外と急速充電器の使い勝手が悪かったりという黎明期特有の不便さもある。ガソリン車とまったく同じように使えないと困る、というのなら今のところは手を出すのは控えたほうがいいだろう。

それよりも、環境意識の高い人やEV特有の乗り味にしびれた人などから率先して乗っていってもらいたい。少しづつ普及していくことで、課題の乗り越え方も見えてくるはずだ。

文:石井昌道

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