日産自動車は2025年6月26日、ヨーロッパで第3世代となるハイブリットシステム「e-POWER」を搭載したクロスオーバーSUV「キャシュカイ」を発表した。

キャッシュカイは、ヨーロッパ市場を主戦場とするCセグメントのクロスオーバーSUVで、イギリスのサンダーランド工場で生産され、2025年秋に発売予定になっている。今後はオセアニア、アフリカにも輸出される計画だ。

日産は、2016年にシリーズ・ハイブリッド「e-POWER」を市場投入し、その性能を進化させてきた。この第3世代「e-POWER」は、モーター駆動ならではの走行性能や、スムースで気持ちの良い運転体験を損なうことなく、燃費性能と静粛性を向上させている。

3世代「e-POWER」は従来のシリーズ・ハイブリッドをさらに進化させ、燃費を改善し、最大航続距離もディーゼル車並みを実現している。

燃費はヨーロッパWLTPモードで22.2km/Lとし、航続距離は1200kmとなっている。このため、CO2排出量は116g/kmから102g/kmへ12%削減。静粛性は第2世代e-POWER比で最大5.6dB低減し、EVのような静粛性を実現している。また、スポーツモード選択時に10kW出力上げるモードを採用し、スポーティな走りを楽しむことができる。

第3世代のe-POWERは、モジュール化された新開発の5-in-1 e-POWERパワートレイン・ユニットを採用。このユニットはモーター、発電機、インバーター、減速機、増速機といった5つの主要部品をコンパクトで軽量な1つのケースに統合。
モーターの最高出力は11kW向上し151kW、バッテリー容量は2.1kWhと従来と同様のスペックながら、ユニット自体の高剛性化と軸構造の最適化により、走行時の音や振動を大幅に低減している。
このユニットに組み合わされる発電専用エンジンは、専用に新設計された1.5L直列3気筒ターボエンジンを採用。このエンジンは日産独自技術であるSTARC燃焼コンセプトを採用している。このエンジンの採用により、従来のヨーロッパ向けe-POWER車に搭載されていたKR型可変圧縮比エンジンは廃止されている。
STARC燃焼コンセプトとは、吸気流速を高め、超希薄混合気+大量EGRに強いタンブル流を発生させ、そのタンブル流に強力な点火エネルギーを与えることで安定した高速燃焼を行なうリーンバーン技術である。今後は排熱回収技術なども組み合わせ、最終的には最高熱効率50%を目指す計画だ。

このリーンバーン技術の特長は、吸気ポート部を滑らかな形状にすることで、吸気流速が減速することなく燃焼室に導入。大量EGR+希薄な混合気は強力なタンブル流を維持し、燃焼室中央部でそのタンブル流に強力な点火を行なうことで安定的な高速燃焼を実現する。
最高熱効率42%を達成しているという。なお、ターボチャージャーは十分に空気量を供給し、希薄燃焼を促進する役割を持っている。
これにより、低速時でも静かで効率的な運転を可能とし、最終減速比の変更も行ない、高速走行時のエンジン回転数を従来より約200rpm低くすることで、騒音の抑制にも寄与している。
なお使用するオイルは0W16にして摩擦抵抗を低減。しかもこのオイルは2万kmの耐久性能を備えている。
赤石永一チーフテクノロジーオフィサーは、「この第3世代e-POWERは、日産のハイブリッド技術を再定義するものであり、あらゆる状況で滑らかで応答性の高い走行を提供します。約10年にわたる開発における知見を集約し、より効率的で洗練された、競争力のあるシステムを実現しました。キャシュカイでの導入は始まりに過ぎず、2026年度には日本と北米市場への投入を予定しており、その他の市場にも順次投入してまいります」と語っている。