日産 高性能 クロスオーバーEV「アリア」を発表 2021年夏に発売

日産は2020年7月15日、新開発のEV用プラットフォームを採用する新型EVクロスオーバーSUV「アリア」のワールドプレミアを行ないました。また同時に、アリアから採用される新たな日産のロゴも発表され、このロゴマークとアリアは新生日産のシンボルと位置づけられています。

モデル概要

日産が新開発したルノー/日産/三菱アライアンスで使用される電気自動車専用のプラットフォーム「CMF-EV」を採用する第1弾がこのアリアです。

アリアは2019年の東京モーターショーに出展されたアリア コンセプトをほぼそのまま市販モデル化しています。

アリアはリーフの後継モデルではなく、白紙から企画されたグローバルに通用するクロスオーバーSUVで、デザイン、プラットフォームはもちろん、モーター、大容量バッテリー、搭載されるコネクテッド技術、改良版プロパイロット2.0など、現在の日産の最新テクノロジーをすべて投入したモデルであり、再建過程にある日産のシンボルとされています。

デザイン、パッケージングは改めてEVの特長を追求し、前後のショート オーバーハング、ロングホイールベースを生かし、Cセグメント+のボディサイズながらDセグメントの室内空間を実現しています。

装備としては、日産の最新コネクテッド技術を満載し、全モデルに通信モジュールを標準装備するとともに、最新のプロパイロットまたはプロパイロット2.0、OTA(無線通信によるソフトウエアのアップデート)を搭載しています。

グレード展開は、FFモデルとしてバッテリー容量65kWh仕様と90kWh仕様と、前後に駆動モーターを搭載するAWD(名称はe-4ORCE:e-フォース)で65kWh仕様、90kWh仕様の合計4車種となっています。ただし、ヨーロッパではアリアe-4ORCE/90kWh仕様をベースにしたハイパフォーマンスモデルも紹介されており、実質は5車種と推測できます。

バッテリーを床下配置としたためラゲッジスペースは十分

ベースモデルのバッテリー容量65kWh仕様はリーフe+よりさらに容量が大きく、90kWh仕様はEVでもトップレベルの容量です。ちなみにフォルクスワーゲンID.3のベースモデルは48kWh、最も高性能なID.3Pro Sで80kWh。ポルシェ タイカンは79kWhと94kWhのラインアップ、テスラ モデル3は54kWh、62kWh、75kWhをラインアップしています。

アリアの航続距離は、FFモデルがWLTCモードで450km(65kWh)、610km(90kWh)、e-4ORCEモデルは430km(65kWh)、580km(90kWh)となっています。もちろん現時点では型式認証前の社内データです。

動力性能は、FFモデルが0-100km/h加速7.5秒(65kWh)/7.6秒(90kWh)、最高速160km/h。e-4ORCEモデルは0-100km/h加速は5.4秒(65kWh)/5.1秒(90kWh)、最高速は200km/hとなっています。

デザインとパッケージング

アリアのボディサイズは、全長4595mm、全幅1850mm、全高1655mm、ホイールベース2775mmで、グローバルCセグメント+のクロスオーバーになっています。なお車両重量はFFモデルの1900kgからe-4ORCE/90kWhモデルの2200kgとなっています。

タイヤは、235/55R19、または255/45R20サイズで、いずれも外径730mm超えの大径タイヤを装着しています。

デザインは、現在のグローバルデザイン担当の専務執行役員、アルフォンソ・アルバイサ氏が初めて全体を統括しており、デザイン テーマは「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」です。

グローバルデザイン担当のアルフォンソ・アルバイサ専務執行役員

EVらしさに日本の美意識を融合させ、低く滑らかでクーペのようなルーフライン、直線的なウエストラインというシンプルで端正な構成を採用。フロントグリル、インテリアの間接照明には「組子細工」をイメージしたデザインとしています。

切子細工越しの行灯タイプの間接照明

もちろん、エクステリアは空力性能も重視され、ハイレベルの空力性能を実現。ボディカラーは、ツートーンが9色、モノトーンが5色設定される予定です。

インテリアのデザインも床下バッテリー配置を活用。空調ユニットはバルクヘッド前方に移動させ、より前進したインスツルメントパネルや、フラットなフロア面を生かしたラウンジのような居心地の良さを実現しています。ドア内側やバルクヘッド中央奥には行灯(あんどん)のように見える間接照明も配しています。


このパッケージでは、通常のクルマよりはるか前方にバルクヘッドが位置するため、フロントシートの足元の広さは画期的といえます。またインテリアのデザインテイストや質感は和のテイストも融合させたラウンジといったイメージです。

シートは、長時間座っても体の負担が少ないゼログラビティ シートを採用。センターコンソールはフローティング式で、シート位置に合わせて前後スライドが可能です。

そして物理スイッチを減らし、センターコンソールやインスツルメントパネルに埋め込まれた透過照明式のスイッチはアイコンのように視認でき、操作時にはハプティック(振動反応)式となっています。これらのスイッチは、デザイン面でも新たな質感を演出する革新的なシステムです。

インスツルメントパネルのアイコン式タッチスイッチ
前後スライド式センターコンソール

インスツルメントパネルは12.3インチのフル液晶式で、メーターパネル部と中央配置の情報ディスプレイは連続したS字形状になっています。上面から見るとメーターパネル部は凹型、センター ディスプレイは凸型形状で、ドライバーは見やすく、センター ディスプレイは他の乗員も視認しやすくなっています。

またこのディスプレイは、スワイプ操作でセンターディスプレイからドライバー用ディスプレイに瞬時に表示を移動させることもできるのが特長です。例えばセンターディスプレイで設定したナビのマップ画面をメーターパネル部に移動させ、センターディスプレイではインフォテイメントの表示をするといった使い方ができるわけです。


もちろんドライバーのためにヘッドアップディスプレイがあり、運転情報や運転支援システム情報はすべて表示可能です。

新開発のハードウエア

アリアは、プラットフォーム、駆動モーター、バッテリーパック、さらに電子プラットフォームなども新開発されています。

バッテリーは、リーフで採用してきたオートモーティブエナジーサプライ(AESC)製ではなく、新たなグローバル調達を前提にCATL(寧徳時代新能源科技)製の角型セルを採用しています。またグローバル市場への適合、高出力の急速充電器に適合させるためバッテリーパックは水冷式を新採用しています。

充電方式では、アリアはリーフ e+、ポルシェ タイカンと同様に130kW出力(CHAdeMO1.2)の急速充電器に対応しており150kW級の急速充電器を使用すれば、30分間の急速充電で375km分、10分間で100km分以上の走行距離の充電が可能で、従来の充電の常識を打ち破っています。150kW級の急速充電器は現時点では少数ですが、2021年に向けて他企業と連携し、普及を図る計画になっています。

運転席側に普通充電ポート
助手席側にCHAdeMO急速充電ポート

駆動モーターは、よりコンパクト、高出力の新開発ユニットですが、詳細は発表されませんでした。FFモデルの65kWhバッテリー搭載車の出力は160kW(218ps)/300Nm、90kWhバッテリーで242ps/300Nm、e-4ORCEモデルは650kWhバッテリーで340ps/560Nm、90kWhバッテリーの場合は394ps/600Nmと高出力、大トルクを実現しています。

e-4ORCEモデルは単に前後トルクの可変配分AWDというだけではなく、前後のモータートルクを高速・高精度に制御することで、乗り心地を向上させる制振制御、常用域でのGベクタリング制御、過渡領域での前後モーターを使用する操縦性コントロール、さらにブレーキトルクベクタリングを組み合わせた電動AWDならではの高精度ヨー制御が実現しています。

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FFモデル、e-4ORCEモデルともに現行リーフから採用されているワンペダル ドライブももちろん採用されています。

運転支援システムは、プロパイロット2.0、プロパイロット リモートパーキングが搭載されます。アリアのプロパイロットはスカイラインで採用された高精度3次元マップ、7個のカメラ、5個のレーダー、12個の超音波ソナー、GPS情報に加え、新たに準天頂衛星システム(みちびき)も追加されており、より正確な位置検出が可能になっています。

そのため、プロパイロット2.0装備モデルは準天頂衛星用のシャークフィン アンテナも装備し、ルーフ上には2本のシャークフィン アンテナが装備されます。

コネクテッドカー技術

アリアの技術的なハイライトの一つが最新のコネクテッドカーサービスです。全モデルが通信モジュールを装備し、クラウドと通信を行なうことで、自宅でのスマートフォンとアリア、そして外部クラウドがシームレスに接続され、新たなサービスが実現しています。

このシステムはスマートフォン用の専用アプリと、車載側ではゼンリン製高精度デジタルマップ、クラウドでは日産の専用サーバー/マイクロソフト アズール クラウドシステム、さらにAmazonクラウドなども使用されるシステムから成っています。

スマートフォンの専用アプリでは行き先を設定すると、ルート、バッテリー残量に合わせた最適な充電ポイント、充電ポイントの空満情報などが一度に取得でき、アリアに転送できる

自宅でAmazonアレクサ(スマートスピーカー)に話しかけて情報を取得し、スマートフォンのアプリでドライブ先を決めると、そのドライブ情報はアリアに転送され、アリアに乗り込むとワンアクションで行き先をナビに設定できます。また自宅でスマートフォン アプリ、アレクサでアリアのバッテリー充電状態やエアコン操作なども可能です。

そして乗車時でもAmazonアレクサを呼び出し、自由にAmazonミュージックでの楽曲の選択や情報の取得が可能です。自宅がスマート家電(アレクサ対応タイプ)であれば乗車時でも自宅のエアコンや照明のコントロールも可能です。もちろん、Apple Carplay、Andoroid Autoでスマートフォンをアリアに接続することもできます。

このようにアリアは、自宅から車内、ドライブ後までシームレスに接続され、操作もスマートフォン アプリ、または発話によって行なうことができる革新的なシステムとなっています。

新ブランドロゴ

新たな「NISSAN」のロゴは、長い歴史とイノベーションの伝統を表すとともに、未来へと舵を切る日産の姿を表現したものとされ、今後の新型車すべてに採用されることになっています。つまり現在、日産が取り組んでいる「日産ネクスト」のシンボルというわけです。

これまで同様、「NISSAN」の文字をロゴの中央に配置することで、過去の名車や同社の進化の歴史をイメージさせ、一目で日産ブランドと認識できるデザインになっています。デザイン担当のアルバイサ氏は、ブランドの歴史からスタートし、革新するエネルギー、日本的な季節感や情緒、デジタル時代を感じさせるデザインにしたと語っています。

発売は2021年夏頃

今回のワールドプレミアは、発売予定の2021年夏より1年も前に行なわれました。したがって、今回のアリアは試作車で、ライン生産された車両ではありません。

実は、アリアは栃木工場で生産される予定で、その栃木工場では電気自動車、e-POWER、内燃エンジン車の高精度な混流生産を目指す、画期的で高効率な最新のIoT生産ラインを330億円を投資して建設中です。新工場は2020年秋頃の完成を目指しています。

関連記事:次世代生産システム「ニッサン インテリジェント ファクトリー」

この「インテリジェント ファクトリー」が完成し、稼働を開始しないとアリアの生産は始まらないというわけです。

したがって、現時点のアリアは量産開始前の最終的な熟成テストを行なっている段階だと推測できます。アリアのプロパイロット2.0は日本とアメリカ市場に導入されるため、アメリカでの適合テストも行なっているはずです。なお他の市場は法規的にハンズフリー運転は認められていないため、通常のプロパイロットが導入されることになっています。

注目の価格は500万円からとされていますので、e-4ORCE/90kWhのフル装備モデルは700万円台となると予想されています。

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