日産自動車は2023年7月19日、アメリカにおけるEVの充電規格について、2025年から北米充電規格(North American Charging Standard:NACS)を採用することでテスラ社と合意したと発表した。日産はNACSへの対応を発表した初の日本自動車メーカーであり、海外メーカーではボルボに続いて2番目となる。
アメリカ市場でのEVの急速充電は、アメリカ独自のUS-CCS1規格が存在していたが、EVのトップメーカーに成長したテスラは独自の急速充電機「スーパーチャージャー(TCP)」を推進してきた。
TCPはCCSコネクターの半分の大きさで2倍の充電出力を備えている。そして、北米地域ではTCP装備車がUS CCS1装備車の2倍に達するまでになっている。
テスラ方式の急速充電は、DC電源を直接バッテリーに供給する方式で、充電ケーブルなどにCHAdeMO3.0 と同様の液冷方式を採用し、最大出力250kWという超高出力に対応している。
250kWの急速充電では5分間で120kmの走行が可能だ。結果的にテスラのスーパーチャージャーは10年以上の実績を積み、北米地域で1万2000基のスーパーチャージャーが展開され、さらに拡充中だ。そして現在では充電電力は100%再生可能エネルギーによる電力を使用している点も特長だ。
一方で、テスラ車もヨーロッパではEU CCS2アダプター、日本ではCHAdeMOアダプターを使用している。
そのテスラ社は2022年秋にEVコネクターの設計を公開。その充電コネクターと充電ポート(North American Charging Standard:NACS)を北米地域で開放することになり、2023年2月にはアメリカ政府とNACSを標準とすることで合意し、アメリカ国内で2024年末までに7500以上のスーパーチャージャーを他社EVへ開放すると発表した。
この合意には従来はUS CCS1を採用してきたGM、フォードも賛同している。US CCS1との互換性はアダプターを使用することで対応している。
このような背景から、アメリカ、カナダ、メキシコでEVを販売するためにはNACS規格を採用するのが得策であることはいうまでもない。
そうした意味で日産の決断も妥当であり、現時点で「アリア」は急速充電にCCS1規格となっているが、2024年以降に販売される「アリア」にNACS充電アダプターを装備する計画だ。
そして、2025年以降、アメリカ、カナダ市場向けに生産されるEVにはアダプターではなく、NACS用充電ポートの搭載を開始することになっている。
いうまでもなく、日産だけではなく、日本のメーカーのアメリカ向けモデルにはNACS規格の採用が行なわれるはずである。
テスラ 充電規格公開:https://www.tesla.com/ja_jp/blog/opening-north-american-charging-standard