日産が新たな電動化戦略を発表 BEV19車種を含む27車種の電動車投入へ

日産自動車は、これまでに電動化を含む長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表していたが、2023年2月27日にアシュワニ・グプタ最高執行責任者が会見し、業績の回復に合わせ電動化をさらに加速させることを発表した。

今後の事業を推進するために今後5年間で約2兆円を投資し、2030年度までに電気自動車19車種を含む27車種の新型電動車を投入。グローバルで電動車のモデルミックスを、これまで目標としていた50%から55%以上へと拡大させる。

長期戦略「Nissan Ambition 2030」の上書きを発表したアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)

そして2050年度までに製品のライフサイクル全体でカーボンニュートラルを実現するという最終的な目標を達成するとしている。

主要な市場での2026年度の電動車(日産の電動化モデルはEVとe-POWERモデルを意味する)の販売比率は以下の割合を目指す。

ヨーロッパ市場98%(75%)

日本市場:58%(55%)

中国市場:35%(40%)

アメリカ市場:2030年度までにEVのみで40%以上(変更なし)。

*()内は従来の「Nissan Ambition 2030」で発表した数字。

2026年時点のグローバルでの電動車販売比率は、従来の見通しの40%から44%以上へと増加させる見通しだ。一方で、大市場の中国市場向けには、専用のEVを2024年に投入する予定としている。だが、中国政府の「ユーロ7」に対応した中国の新排ガス規制(通称:国7)の導入が延期されたことと、ローカル自動車メーカーのEV勢が強力であるため、新たな対応を模索しており、中国市場での電動化率は一時的に下がるとしている。

一方、ヨーロッパ市場ではバルセロナ工場の閉鎖、ルノーとのアライアンス強化の効果、固定費削減などにより収益構造を改善。そしてイギリスのサンダーランド工場でSUVタイプのEVを投入するなど、厳しい「ユーロ7」排ガス規制に対応した電動化計画を継続する。さらに、撤退を想定していたBセグメントの「マイクラ」はルノーのEVをベースにブランドを存続させ、小型商用車でもルノーのEV化を流用するなどし、2026年度までに98%まで電動化率を高めることにしている。

アメリカ市場もEVを強化する。2026年からキャントン工場(ミシシッピ州)でインフィニティを含む新型EV4車種の生産を開始する。ただ、搭載する車載リチウムイオン電池は、従来から使用する中国企業傘下のエンビジョンAESCが想定されていたが、アメリカにおいてIRA(インフレ抑制)法が成立し、再検討が必要となっている。

Nissan Ambition 2030」を象徴するEVスポーツカー・コンセプト「Max-Out」。固体電池を使用するプラットフォームを採用

IRA法は約54兆円として過去最大規模の予算であるが、その名称のイメージとは異なり、気候変動の抑制(再生可能エネルギーの導入加速、EV技術の導入を促進、社会のエネルギー効率を改善、再生エネルギー導入などを促進するなど)の投資であり、もうひとつの側面は中国産品の徹底した排除で、電池材料の主要材料のうち、調達価格の40%以上がロシア、中国以外であること、北米でリサイクルされること、アメリカなど北米3国での生産の義務付けなどで、つまりすべてをクリアした製品にのみ優遇補助金を給付し、例えばEV補助金は1台あたり100万円を給付するというものだ。

アシュワニ・グプタ氏が言うように、EVの普及・加速には大きなチャンスといえるが、その一方でリチウムイオン・バッテリーの生産では、中国産の原料を排除する必要があるが、現状でのリチウムイオン・バッテリーの原産、あるいは精製などはほとんどが中国で行なわれており、その原材料を排除するのは至難の課題だ。

その結果、EV化を加速させているGM、フォードの自国生産のEVモデルでさえ補助金の対象にならないのだ。もちろん、せっかくEVを開発したトヨタ「bZ4X」、スバル「ソルテラ」も日本生産のため補助金対象外になるなど大きな混乱を巻き起こしている。

そのため日産は、アメリカにおけるリチウムイオン・バッテリー生産の課題を解決することを目指し、2030年度までにEVのみで40%の目標を維持している。

また、アシュワニ・グプタ氏は、グローバルで電動化を加速させるために、より効率を追求し、EVとe-POWER用のモーター、インバーターなど電動駆動ユニットの共通化などを進め、バリエーションを3機種とし、内燃エンジンの機種縮小、アライアンスのプラットフォームCMF-EVの適用拡大なども実施するという。

もうひとつの新たな目標は、ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)の開発の加速だ。運転支援技術から、インフォテイメントの領域まで新たなソフトウエアを導入し、2026年度までにユーザーが無線通信によるオンライン(OTA)で、ソフトウエアのアップデートや、希望のソフトウエア・サービスの購入が可能になる体制を整え、これらはすべて日産の開発あるいは日産のパートナーとの開発により実現させるという。

このため、パートナー企業を含め合計4000人のソフトウエア・エンジニアを拡充することにしている。

このように日産は電動化を加速させる戦略を展開するとしているが、ルノーが主導するEV専門会社「アンペア」との協業や役割分担に関しての協議はこれから行なわれるはずで、今回の戦略にはまだ盛り込まれていないのが気になるところである。

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