日産は、次世代の電気自動車(EV)に搭載する、電気駆動4輪制御技術開発を目的としたテストカーを公開した。次世代の電気自動車とは、「東京モーターショー2019」に出展した「アリア・コンセプト」の市販モデルであることは間違いないだろう。
電動クロスオーバーSUV用の電気駆動システム
アリア・コンセプトは、新開発の電気自動車用プラットフォームを採用し、前後に高出力モーターを配置した電動4WDで、Cセグメント・サイズのクロスオーバーSUVとされている。登場は2020年後半頃と予想され、今回公開されたのは、その電気駆動4WDのパワートレーンを開発・熟成するためのテストカーということになる。
エクステリアのベース車両は「リーフ+e」で、前後に2基の高出力動モーターを搭載して4WD化しており、当然ながらプロペラシャフトはなしだ。モーターはリーフ用のEM57型で、2基搭載のため合計したシステム最大出力227kW(309ps)、最大トルク680Nmを発生する。
Cセグメントのボディで、この出力、トルクは強烈といえるだろう。そのため、単なるSUV用の電気駆動4WDというだけではなく、傑出した動力性能、スポーツ性能を備えていることになる。
逆にいえば、この強力な動力性能をどれだけ高いレベルでコントロールし、意のままの走りを実現できるかが、このテストカーの開発テーマになっている。ちなみに、このテストカーは現在、先進技術開発センター(NATC)で開発が行なわれており、まもなく量産車開発チームにバトンタッチされることになる。
電動4WDの開発テーマ
まず技術の原点は、モーターによる発進時のレスポンスの良さと滑らかさの両立だ。もともと日産はモーターの出力制御は1万分の1秒という極小の時間での正確な制御を実現しており、同じモーター駆動のEVと比べても発進時のレスポンスの良さと滑らかさは格段に高いレベルにある。またこの制御を使用することで、減速から加速への切り替えといったシーンでも、振動や遅れがなく、瞬時に加速に移行することができるのもアピール・ポイントになっている。
こうした精密なモーター制御の技術を活かしながら、高出力4WDにふさわしい運動制御を実現することが新たな開発テーマになっている。言い換えれば、2個のモーターを使用することで、前後のトルク制御、コーナリング時の運動制御などエンジン車とは比較にならないほど幅広い制御が可能になる。
当然、その背景には日産が開発してきた、アテーサE-TS、オールモード4×4、HICAS、ヨーレートフィードバックHICAS、インテリジェント・トレースコントロール、インテリジェント・ライドコントロールなどの技術の蓄積があり、電動4WDではこれらの技術を総動員し、高精度で統合制御することが可能になるのだ。