日産自動車は2019年10月8日、取締役会を開催し、現専務執行役員で東風汽車有限公司総裁の内田誠氏を代表執行役社長・兼最高経営責任者(CEO)に任命することを決議したと発表した。
さらに現在は三菱自動車の最高執行責任者(COO)のアシュワニ・グプタ氏を代表執行役・兼最高執行責任者(COO)に、そして専務執行役員である関潤氏を執行役副COOに任命したことも発表した。
指名委員会が選んだ3名
なおこの人事は、遅くとも2020年1月1日付けの発令を目指すとしている。その理由は、内田誠氏は中国の東風汽車の責任者であり、アシュワニ・グプタ氏も三菱のCOOであるため、それぞれの社内での了解を得て、さらに事務引継などを行なう必要があるからだ。そのため、年内は現在の山内康裕CEO代行が職務を継続する。
2019年6月の株主総会以降、日産は指名委員会等設置会社となり、取締役会は社外取締役が主導権を持ち、CEO、COOなどの人事は指名委員会が事実上決定し、最終的に取締役会で承認を得る、というスタイルになっている。
取締役会は7月末以降に新CEO選びに着手したと語っているが、実際には西川CEOの辞任が決定した9月から候補者選びが加速したはずだ。
取締役会には、ジャン・ドミニク・スナール氏(ルノー会長)が副議長、指名委員会にはティエリー・ボロレ氏(ルノーのCEO)が入っているので、当然ながらルノー側の了承を得た上での新CEO、COOの決定となっている。
さらに、大幅な経営陣の若返りと、CEO一人に権力を集中させず、内田誠CEO、アシュワニ・グプタCOO、関潤副COOという、いわば合議制としたのがポイントだろう。その結果、現在の山内康裕CEO代行の2020年以降の処遇は未定とされている。
しかし、経営状態が危機的な状況を迎えている現在の日産で、3トップによる合議制で、迅速な対応、戦略的なリーダーシップを発揮することができるのであろうか。
3トップの経歴
今回任命された3名は、日産の取締役ではないのも異例だ。グプタ氏は三菱のCOOであり、日産の内田氏、関氏はいずれも専務執行役員であって、執行役でもない。そのため3名ともに来年の株主総会で初めて取締役に就任することになる。
- 内田誠CEO
同志社を卒業し、1991年に日商岩井(現在・双日)に入社。日産には2003年に中途入社。プログラム・ダイレクター、アライアンス購買を担当した後、専務執行役員となり、関氏の後任として2018年に東風汽車有限公司・総裁に就任。 - アシュワニ・グプタCOO
インド出身で、1996年にホンダに入社し、自動車業界でのキャリアがスタート。日本やインドで勤務し購買を担当。2006年にGMの購買、その後はルノー・インドの購買、DGM、ルノーを経て、2009年にルノー・日産の統括会社「ルノー日産BV」に入社。その後は日産の商用車の責任者を務め、2009年4月から三菱のCOOとなっている。 - 関潤 副COO
防衛大学校・機械工学専門課程を卒業後、1986年に日産に入社。2006年にパワートレイン生産技術本部主管、2012年に執行役員となり、2013年に東風汽車有限公司・副総裁、2014年から常務執行役員となり東風汽車・総裁に就任。2018年からアライアンス生産技術の責任者となっていた。トップ3の中でただひとり技術系だ。