日産 2022年に向けての商品戦略:EVとe-POWERをグローバルに展開し、100万台の販売を計画

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」

日産は2017年11月に、新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」を発表し、新5ヵ年計画では、売上高16.5兆円の達成、営業利益率8%の実現などの経営目標を発表していた。そしてこの目標を支えるためのグローバル商品戦略を2018年3月23日に、4月20日に国内の商品戦略を発表した。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 フィリップ・クランCPLO
商品戦略担当のフィリップ・クランCPLO(チーフ・プランニングオフィサー)

■2022年までに100万台の電気駆動車を販売

これらの戦略は、日産のEVリーダーシップを確固たるものにすること、自動運転技術の拡大、無人運転車・配車サービスへの早期参入など、「日産インテリジェント・モビリティ」のステートメントに従った内容だ。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 概要

まず電動化については、さらにグローバルでEV普及を加速させる。そのために、新型リーフを今後15ヶ国以上で販売し、他のEVと比較してコスト競争力の高さで優位に立つ。さらに日産、インフィニティ、ダットサン(アジア、ロシア)、ヴェヌーシア(中国)の全ブランドで、電動化戦略を拡大させる予定だ。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 EVラインアップの拡充

EVに関しては、中国の東風日産のヴェヌーシア・ブランドでAセグメント〜Cセグメントの新型車を導入し、日産では4WDのクロスオーバーSUV、軽自動車、さらにインフィニティを含め、2018年から2022年にかけて新型8車種のEVを展開。特に中国では、東風と日産の新合弁会社「eGT New Energy Automotive」社が開発を担当し、手頃な価格のEVを含む多様なEVで攻勢をかけるとしている。日本では、軽自動車のEVが新規投入される。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 iMx KURO

クロスオーバーSUVのEV・4WDモデルは、2017年東京モーターショー、2018年ジュネーブショーに出展されたコンセプトカー「IMx」をベースに開発される予定で、前後に合計2個の駆動モーターを搭載する本格クロスオーバーSUVとされる。またインフィニティは2021年以降に投入するニューモデルはすべて電動駆動化させる計画だという。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 iMx KURO
クロスオーバー4WD・EVのコンセプトモデル「IMx KURO」
日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 iMx KUROの電動ユニット
「IMx KURO」の電動ユニット。前後にモーターを配置

そして、電動化の一翼を担うe-POWERを搭載したモデルを、日本だけではなくグローバルに展開する。e-POWERはモジュラー技術と位置付け、インフィニティを含むB〜Eセグメントに拡大採用するという。インフィニティが受け持つEセグメントのニューモデルは、当然ながらハイパワーのe-POWER技術を搭載するはずだ。そして2025年までにインフィニティのモデルの50%以上はEV、e-POWERになるという。電気駆動化の予定がないのは大型SUVのみだという。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 今後のEV展開概要

こうして2022年までに日産はEVとe-POWERを合わせた電動車を年間100万台という販売規模を計画している。またEVとe-POWER搭載車を含む電動駆動車の販売台数を占める割合は、日本と欧州で2022年までに40%、2025年までに50%になると見込まれ、アメリカでは2025 年までに20〜30%、中国では35〜40%になると見込んでいるという。またこうした電気駆動車の拡大に合わせ、ディーゼルエンジンからは徐々に撤退して行くという。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 インフィニティブランドの今後のEV展開

日本市場を見ると2022年度末までに、新型EV3車種とe-POWER搭載車5車種を投入する。この結果、2022年度までに国内の販売台数が占める電動駆動車の販売比率は40%になると見込んでおり、2025年度までに、国内の販売台数の2台に1台以上が電動駆動車になる見通しだ。もちろん車種、台数的にはe-POWER搭載車が高い。

■自動運転技術の拡大

自動運転技術における戦略では、日産は2022年までに自動運転技術「プロパイロット」を20車種に搭載し、20ヶ国の市場に投入する計画だという。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 研究先行開発担当 浅見孝雄専務執行役員
自動運転など研究先行開発担当の浅見孝雄専務執行役員

そして2022年までに、プロパイロット搭載車の販売台数は年間100万台になると見込んでいる。プロパイロットは海外ではすでにアメリカ、ヨーロッパに展開を始めており、中国では本格導入のために実証実験を実施しているという。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 自動運転車の拡充

またプロパイロット技術そのものも進化しており、1年以内に新たに高速道路での自動レーンチェンジ機能も日本市場に投入される。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 自動運転実証実験実行国

日産の自動運転技術の開発スタートは他社に先駆けており、現在では東京、神奈川、アメリカのシリコンバレー、ヨーロッパのロンドンで、自動運転の公道テストを展開している。特に日本では2013年から公道での自動運転の実験を行なっており、すでに膨大なデータを蓄積している。こうした知見をもとに、プロパイロット技術の適用範囲を高速道路から、市街地へと拡大させる戦略で、高速道路での自動レーンチェンジの採用も第2弾の技術となる。

■コネクテッド

日産は、通信の常時接続によるコネクテッド技術の展開も急いでいる。日産のコネクテッド技術のコンセプトは、自動緊急通報システム(eコール)、クラウド・データを利用したスマート・ナビゲーション、車内WiFi接続機能、カーシェアリング対応、サーバーによる車両モニタリング、通信による車両の制御プログラムのアップデートなどを統合したものとされる。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 コネクテッド・モビリティ統括 オギ・レドジク専務執行役員
日産、ルノー、三菱のコネクテッド・モビリティサービを統括するオギ・レドジク専務執行役員

こうしたコンセプトのもと、すでにインドネシア、インド市場ではダットサン・ブランドのクルマに一部の機能が搭載されされている。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 コネクテッドサービスの拡充

グローバルでは、2018年中にアライアンス・コネクテッド・クラウド、つまり日産の3ブランド、ルノー、三菱を含め、コネクテッド技術を共有するために共有クラウドを構築を開始する。そのために、車両側では、共通化されたインフォテイメント・システムと、共通の通信モジュールを搭載するとしている。

日産 新中期経営戦略「M.O.V.E.to 2022」 アライアンスコネクテッド・クラウド

またこうしたコネクテッド技術と、自動運転技術を使用した無人運転+自動配車サービスのビジネスも構想されており、2018年には実証実験を開始するという。その第1弾が「EZライド」だ。またカーシェアリングサービスは2018年末までに現在の30ステーションから500ステーションに拡大させるという。
※参考:日産とDeNA、無人運転車両を活用した交通サービス「Easy Ride」の実証実験を3月5日から開始

こうした実証実験を積み重ねることで、2020年代前半には本格的なカーシェアリング、配車サービス事業を開始する計画としている。

このように見ると、日産の新5ヵ年経営戦略に従った商品戦略は、驚くほど積極的な攻勢ということができる。特にe-POWERを中心にした電気駆動化、グローバル規模でのコネクテッド技術の展開は、他の自動車メーカーをはるかに上回るスピードであり、こうした商品構想は2018年から本格的にスタートする。

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