2013年11月20日、日産は東京モーターショーで次世代の商品開発手法を取り入れた2台のコンセプトカー、「アイディエックス(IDx)」を公開した。シンプルでカジュアルなライフスタイルに焦点を絞った「アイディエックス フリーフロー」と、対照的にドライビングシミュレーターから飛び出してきたようなスポーティモデルの可能性を示唆する「アイディーエックス ニスモ」だ。
これらの、商品企画コンセプトカーを開発するために、若いユーザーが欲するクルマを彼らと共に創り上げる商品開発方法である「コ・クリエーション(共同創造)」という手法を導入している。つまりユーザー層の意識と日産の商品企画をミックスさせ、新たなクルマの方向性を探るという試みだ。
こうして生まれた二つの異なる個性を持った2台のコンセプトカーは、いずれも1990年以降に生まれた世代である“ジェネレーションZ”、いわゆる“デジタルネイティブ”の心に響く価値を追求したものだ。なお「アイディーエックス」の名前は、「Identification(アイデンティティ)」の略語「ID」と未知の変数「x」による造語だ。
この2台は、実は1台のボディ骨格でアウターパネルヤ内装を変える事で、2台のクルマとしている。つまり前後のフェンダーやドアパネルといったサイド構造によりキャビンを中心としたセンター部分を挟むようなサンドイッチ構造だ。ベースになっているのはFR駆動方式を想定しているという。
デザインのフレキシビリティを待たせるために、インテリアの要所には「二層構造(tight-fit skin)」を取り入れている。ダッシュボードはボディ構造体とベンチレーションダクトが一体的にキャスト(鋳込み)成型された、シンプルな造りになっている。これにトリムを組み合わせることによって、ダッシュボードに様々な表情とファンクションを与えることができている。
・アイディーエックス フリーフロー
フリーフローは身の回りの物すべてに、ナチュラルでハイセンスなものを求めている人が望むクルマとしている。シンプルかつクリーンで、本物感があり、4人乗りのインテリアは、自分や仲間がくつろげるリビングのような心地よさと実用性、そしてファッション性を表現したという。
水平基調のダッシュボードや無駄をそぎ落とした真円のステアリングホイール、その上に配置された、リビングに似合うモダンな時計のようなメーター、アナログ時計を近代的にアレンジしたセンターモニターなどに特徴がある。シートは適度な洗いざらし感に徹底的にこだわって仕上げられたデニム素材を採用し、従来のクルマからは感じられたことのないクオリティ感を生み出している。ボディサイズは全長約4.1m、全幅約1.7m、全高約1.3mというコンパクトなサイズにまとめられている。パワートレーンは、燃費性能と加速性能に優れた1.2L~1.5LのガソリンエンジンとCVT(無段変速機)が搭載されるとしている。
・アイディーエックス ニスモ
コ・クリエイションプロセスの中で、基本となる「アイディーエックス」のシルエットに日産の箱型レーシングカーの歴史を重ね合わせたのが「アイディーエックス ニスモ」で、かつての510型ブルーバードやP10型スカイラインを連想させる。「アイディーエックス ニスモ」の全長、全高は「アイディーエックス フリーフロー」と同じだが、全幅は約1.8mと、よりワイド&ローなスポーティなプロポーションとなっている。
箱型レーシングカーのアイデンティティともいえる、スピード感のある逆スラントノーズ、カーボン製のパネル、心地よい排気音が聞こえてきそうなサイドマフラー、前後左右の現代的な形状のエアスポイラー。そして、軽量19インチホイールと225/40サイズのタイヤにより、レーシングカーのヘリテイジとモダンさがミックスされたクルマに仕上げられている。
パワートレーンは高性能な1.6Lの直噴ターボエンジン、シンクロレブコントロールによるスポーティーな走りが楽しめる6速マニュアルモードを搭載したCVTの組み合わせを想定している。インテリアはレーシングカーをストレートに表現する真紅の「アルカンターラ」のシート、スパルタンで精緻な計器類、真紅のスウェード調トリム素材を採用している。
ただしこれらクルマはあくまでもコンセプトを探るためのコンセプトカーだろう。