2012年12月12日、日産の志賀俊之CEOが2011年10月に策定した「日産・グリーンプログラム(NGP)2016」の進捗状況の発表を行った。これは地球の環境負荷と資源利用を自然が吸収可能なレベルに抑えるという目標を目指すものだ。
日産のグリーンプログラムはの第1ステップは、2002年に策定されたNGP2005で、排気ガスのクリーン化、大気汚染の低減が目標とされ、2006年の第2ステップにあたるNGP2010では、地球温暖化対策として環境負荷を自然が吸収可能なレベルに抑える目標を明確化している。そして2011年10月に策定された次なる第3ステップのNGP2016では、より具体的な地球環境負荷低減のロードマップを2016年目標としてプレゼンテーションしているが、今回の発表はそのロードマップの進捗状況の中間報告と捉えられる。
まず大きな目標として、2016年までに日産、ルノーと合わせ累計150万台のEVを販売し、排出ガス・ゼロのリーダーシップを確立することが挙げられる。ルノーはカングーEV、フルーエンスEV、ゾエという3車種で、日産はリーフでEV化のスタートを切っている。
リーフは発売以来2012年10月までの約2年間で4万6000台を世界で販売し、EVとしては世界No1の販売台数を誇る。もっともリーフは発売直後に日本では東日本大震災、超円高、欧州ではギリシャに端を発した欧州経済危機に見舞われるなど悪条件が重なり、当初の見込みよりは販売が低めになっているが、今後はアメリカ・スマーナ工場でのリチウムイオンバッテリーの生産開始などもあり、アメリカ、ヨーロッパでもさらに販売を加速させるとしている。
またEVの販売結果として、スマートグリッドへの接続、活用や、EVから取り外した使用済みバッテリーの2次利用など新たな展開も期待できる。定置用のリチウムイオン・バッテリーが3kWhで100万円するという価格を考えると、リーフの24kWhという大容量の電池の再利用価値はきわめて大きいと言える。
今後は日産の排出ガス・ゼロのリーダーシップをより強化するため、EVの新機種追加も計画されており、2014年にはe-NV200、インフィニティEVを投入予定だ。また、EVは同クラスのガソリンエンジン車に比べ、生産段階から使用までのライフサイクルCO2排出量で大幅にCO2削減に貢献することも大きなメリットである。
企業平均燃費の目標は2050年に450ppmとしており、2000年を基準とした場合、90%ものCO2 排出を抑制する必要がある。その目標を達成するためには企業平均燃費は35%改善していくことが求められ、2012年にはアメリカでクラストップの燃費となるアルティマなど5車種を投入。さらに低燃費を追求した1モーター/2クラッチ/CVTを組合せたFFハイブリッド車、FRハイブリッド車、プラグインハイブリッド車を2016年までに13車種、現在のハイブリッド2車種のモデルチェンジも含めると合計15車種を投入する計画を発表した。
新聞などのメディアでは日産がEVからハイブリッド車重視に戦略をシフトしたと誤解しているが、EVは排出ガス・ゼロのリーダーシップ確立戦略のための機種で、企業平均燃費を低減させるためにはハイブリッド車の投入も不可避というプログラムに基づく発表と言える。
それはパワーソースのシナリオからも明らかなように、既存内燃エンジンの燃費改善、ハイブリッド車の投入というシナリオに沿った戦略であり、2030年頃にはハイブリッド車の燃費は限界に達すると見込んでいる。その先はEVや燃料電池車など排気ガス・ゼロの時代であり、現在のEVはそのための先行モデルという位置付けなのだ。
また日産は、内燃エンジン車、ハイブリッド車の環境性能を支える技術の大きな要素としてCVTを位置付けてグローバル展開し、2012年上期で累計1220万台を達成しており、2016年までに累計2000万台を目指すとしている。
NGP2016のロードマップの中で、生産、物流、オフィス、販売現場など企業活動でのCO2排出量の最小化も大きなテーマになっている。最終的な2050年の目標は2005年対比で80%の低減であり、2012年には-12%削減の見込みとなっている。また、2016年では-20%が目標とされ、計画に対して順調に進捗しているようだ。なお現状で日産は国内の自動車メーカーの中で生産時のCO2 排出量は最小となっているという。
その活動の一環、再生可能エネルギーの普及策の一つとして大分市に国内最大の26.5MWというメガソーラー発電施設(日産・グリーンエナジーファーム in大分)が2013年5月に稼動を開始する計画だ。
また生産部門では2016年までに樹脂、鋼材、アルミ材などを含み、クルマ1台あたりのリサイクル材の使用率を25%に向上させることを目標としており、2050年には70%をリサイクル材で生産することが到達点とされている。なお、2010年時点では自社のリサイクル材の使用率は20%となっている。レアアースの分野では2011年対比で、2016年には30%低減を目指しているが、すでにマイナーチェンジ後のリーフではモーターに使用されるジスプロシウムの40%削減に成功しており、ジスプロイウムに関しては2016年に60%低減する計画だという。
企業関連の環境負荷低減活動では、新たにサプライヤーの選定に環境要件を追加する動きも開始された。日産の環境ガイドラインの遵守やサプライヤーからの環境データの報告なども行われるようになっており、日産の企業活動でのCO2排出の8%を占める原材料/部品領域でのCO2削減も加速されている。