マニアック評価vol139
日産の最量販モデルとしてデビューした新型ノートは、9月の新車販売台数で、プリウス、アクア、についで3位と好調な滑り出しでスタートした。メディア向け試乗会は木更津のアウトレットモールで行われ、より多くの人に実車も見てもらいたい、触れてもらいたいという意味も込められて行われた。
搭載するエンジンは1.2Lのエコ・スーパーチャージャー付きとNAの1.2Lという2本立て。ミッションは共にCVTで省燃費性を徹底的に追及したモデルである。さらに、グローバルでも展開が予定されており、まさに最量販モデルとしてのレベルをどこに設定するのか、気になるところだ。
その国内用の新型ノートは日産自動車九州で生産され、今年度中に10万台突破を目指し、2013年度からは欧州での販売も開始予定になっている。ちなみに、欧州モデルは英国サンダーランドでの生産となっている。これだけの販売台数を目指すには、より多くの人に「いいね」と感じさせる必要があり、どこを目指したのかを考察しながら試乗してみた。
まず、パッケージだが、新型ノートはコンパクトハッチで全長4100mm×全幅1695mm×全高1525mm、ホイールベースは2600mmというサイズ。ターゲットユーザーにはダウンサイジングで中型車、大型車からの乗り換え顧客、軽自動車からのアップグレード、そしてもちろん買換えのスライドユーザーも重要なターゲットとなる。そのためには価格、燃費、そしてパッケージというのが最重要課題である。
燃費に関しては既報しているように、新技術が多数投入され1.0L以上のクルマ中、もっとも省燃費性能を発揮し、新開発のHR12DDRを搭載するDIG-S(FF)で25.2km/L、ノーマルエンジンのHR12DE(FF)でも22.6km/Lという数値をはじき出している。詳細はコチラを一読いただきたい。
価格は124万9500円から豪華装備のメダリストの167万4750円までで、最量販グレードと思われるX DIG-Sは149万9400円となっている。減税措置としては、HR12DDRのエコ・スーパーチャージャー搭載モデルは、自動車取得税、重量税が免税対象で、ノーマルのHR12DEは取得税、重量税ともに75%の減税対象となっている。
↑↑ 後席は広くゆったり座れる。また、ドア開口部も大きく乗降性は高い。左)リア 右)フロント ↑↑
さて、パッケージで、上記のターゲットユーザーを満足させるためにもっとも拘った部分は、後席の広さとくつろぎ感、乗降性、リヤドアの開口角度だという。(商品企画:藤山氏)身長180cmの筆者が後席に座っても膝前には余裕があり、頭部のクリアランスも広い。ゆったりした印象は確かに感じる広さだった。そしてリヤドア開口部では新型ノートは85°まで開く。旧型ノートは65°、ティーダが70°日産の資料ではライバルメーカーでも80°までのものがほとんどらしい。そのため、乗降性には有利なスペックとなる。
その室内空間では有効室内長が1837mmあり、ワンサイズ小さいマーチは1688mm、ワンクラス上のティアナは1845mmで、Cセグメントに迫る広さと言える。後席のニールームではそのティアナは632mmに対し、新型ノートは643mmとティアナを上回る数値になっている。
インテリアでは、上質感に拘って開発したという。特にドライバーが乗ってすぐに目にするのはメーター類だが、メーターデザインで高級感があるようにデザインしている。3つのメーターのセンターには見やすいアナログ式のスピードメーター、左側がタコメーター、そして右側はデジタルで燃料系やドライブレンジ、気温などが表示されている。そしてエコドライブのアシスト機能も持ち、ブルーやグリーンに色が変化し、エコ運転をアシストする。
また、ダッシュボードまわりは樹脂だが、見た目の高級感を出すためにシボ加工に工夫がされ、乗車してすぐに品質が感じられる分かりやすさがあった。また、デザイン上でも全てのエッジ部分に丸味を持たせているため、樹脂とはいえ安っぽい印象はない。
実際、先端技術の説明会のときに触れた、樹脂のシボ加工品は指先で触れるとレザーとの差がわからないほどのクオリティに驚いた。ただ、実際は面積がひろく、空洞部分があるため、どうしても触れてしまえば樹脂製だと感じてしまう。なお、インテリアまわりのサプライヤーはカルソニックカンセイだが、日産の先端技術開発チーム主導の品質向上製品と予測する。
先進技術の点ではアラウンドビューモニターがコンパクトクラスで初めて採用されているのもトピックだろう。装着はディーラーオプションでき、ルームミラーにも映像を映し出すことができるものだ。もちろん、通常のモニター画面でも確認でき、バードビュー(上空からの視野)、バックビュー、フロントビュー、サイドブラインドがカメラによって写しだされるという先端技術も搭載されている。
エクステリアではハッチバックスタイルのオーソドックスなデザインだが、フロントフェイスが大きく変化し、特徴的な顔になっている。量販目的としては緊張する案件だろが、いい結果に結びつくと思う。そしてサイドにもキャラクターラインの存在があるのだが、こうして市街地に出してみるとそれほど個性的には写らず、ほどよい印象だった。また、テール部はなんとも特徴の薄い印象で、フロントが頑張った分、リヤは穏やかにするというバランス感覚なのかもしれない。
さて、走り出してみると穏やかなハンドリングと乗り心地の良さを感じる。敏感でもなく、鈍感でもない。いわゆるクセは存在せず、万人に受け入れられる操舵感だと思う。パワーステアリングのアシスト量もほどよく、セルフアライニングトルクもちゃんとある。駐車時の操舵感も軽く操作はしやすい。装着していたタイヤはブリヂストンのエコピア185/70-14だったが、個人的にはもう少し燃費に振っていないタイヤをチョイスしたい。
エコ・スーパーチャージャーの加速感だが、1.5L並みの加速フィールと説明されたが、まさにそんな感じで、過給器であることを感じる場面はない。とはいえ、低速時のトルクはあるので、実はそれが過給器の恩恵なのだが、意識させられることもなく普通のエンジンのように乗れる。100km/hでは2250rpm付近で、80km/hであれば1650rpmとかなり回転は抑えられている。
ミッションは副変速機付きのCVTで、CVTのネガな部分はあまり感じられない制御がされている。例えば、巡行中からブレーキング、そしてすぐ加速といった場面でも、急加速になったり、回転が落ちてこなかったりというギクシャク感は少なかったが、コントロール性という面では少しリニア感のない部分も残っている。ただ、加速感やパワー感といったものは1.2Lとは思えない力感はあり、静粛性も高いのでボディサイズのダウンサイジングユーザーでもあまり不満はないのではないだろうか。
こうしてみると、多くのユーザーに受け入れられるには、突出した部分は少なく、全体に要求平均値をあげるクルマ造りをしていると感じる。それだけに、多くの国産車は直進性の座りの良さや、ボディの剛性感、しっかり感といったものの印象が薄いが、ノートはそれに対してアドバンテージとなる部分を持っていると感じた。
グローバル展開する新型ノートは2013年から欧州でも販売が始まる。ライバルとなるフォード・フィエスタやホンダ・ジャズなどに対してどれだけUSPがアピールできるかがポイントになるだろう。最後に、付け加えたいが、このクラスとしては先端技術が投入された最新の量販車であり、量販車にこれだけの新技術を投入しているあたりは真面目なクルマ造りだということだ。
<ノート MEDALIST>
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