日産自動車は2012年10月5日、5ナンバーサイズのコンパクトセダン「ラティオ」をフルモデルチェンジして発売した。先日デビューした2代目のノート同様に、日産では現在最小のVプラットフォームを採用。先代の「ティーダ・ラティオ」から今回ラティオ単独の名称ととなり、独立した世界戦略車となった。日本市場においては従来同様に熟年層と法人ユースにターゲットを絞り込み、タイで生産したモデルを逆輸入して販売する。
ラティオは現在、日本やアメリカなどの先進国だけでなく、中国やタイ、インドやブラジルなど成長中の新興市場までカバーする、世界約160カ国で販売されるグローバルカーだ。新興国においてはBセグメント・セダンの中核車種としての役割が期待されている。ハッチバックのノート同様に先代よりダウンサイジングされたエンジンを搭載する新型は、世界全体ではすでに約50万台以上を販売。生産する工場もタイだけではなく中国とインド、さらにメキシコの合計4カ国で分担して担当していくとのこと。
10月5日に横浜の日産グローバル本社で行われた発表会では、グローバルと国内の販売を統括する片桐隆夫副社長が登壇。「先代ラティオの保有台数は13万台超。国内市場においてはこの保有を守り、増やしていくこと。さらに新型ラティオに限らず、商品ラインアップを強化していくことが、国内販売2位を目指す日産にとって非常に重要」とコメントした。また懸念される国内生産の空洞化については、「年末に発表する新型シルフィは引き続き追浜工場で生産する」ことを明らかにして、国内生産体制に対するネガティブな予測については否定した。
新型ラティオの商品としての特徴は、「上質なフォーマル・デザイン、質感が高く、広くて快適な室内(=パッケージング)」と「環境や経済性を含めたトータルな性能(=パフォーマンス)」のふたつのファクターに絞ることができる。とくに前者は平均年齢は65歳と日産が見込む、セダン愛好家の熟練ユーザー層にアピールするポイントだ。さらに後者は、法人ユーザーに向けてライバルには負けられないファクターとなってくるところだろう。ライバルはもちろん、トヨタのカローラということになる。
パッケージングの部分だが、デザイン上の手法には特に目新しいものはない。大ぶりなヘッドランプやグリルを採用して顔を大きく見せる工夫を徹底したほか、水平基調のサイドビューとビッグキャビンが堂々としたボリュームを感じさせるポイントだ。それに加えてエンジンルームの最小化、燃料タンクやペダル位置の最適配置を促進し、有効室内長は1クラス上のセダンに匹敵する数値を実現。トランクルームはVDA法で容量490Lを確保したほか、トリム形状の変更で積載性も向上させている。
一方でパフォーマンスの部分では、新型ラティオのキャラクターが際立つトピックが多い。プラットフォームだけでなく、エンジンも国内仕様はダウンサイジングして全車アイドリングストップ付きの1.2Lエンジンに統一。また車両全体で先代と比べて約70kgの軽量化を行うとともに、床下形状にまで踏み込んだ空力性能の改善で、燃費性能を圧倒的に改善。先代より26%アップという22.6km/L(JC08モード)は驚異のデータで、全車が取得税&重量税が75%減税となるエコカー減税の対象車となった。
消費税を含むメーカー希望小売価格は以下の通りで、「B」は法人向け専用のグレードとなる。また、オーテックジャパンからは「助手席回転シート」仕様が同日から発売となっている。
■新型ラティオX主要諸元
●ディメンション:全長×全幅×全高=4425×1695×1495mm/ホイールベース=2120mm/車両重量=1030kg ●エンジン:HR12DE型/直列3気筒DOHC/排気量=1198cc/最高出力=58kW(79ps)/6000rpm/最大トルク=106Nm(10.8kgm)/4400rpm ●トランスミッション :エクストロニックCVT ●燃費性能:22.6km/L(JC08モード) ●駆動方式:FF ●サスペンション(前/後):ストラット/トーションビーム ●ブレーキ(前/後):Vディスク/ドラム ●タイヤサイズ:175/70R14 84H ●乗車定員:5名