日産と三菱の事業協力関係締結から見えてくる今後

雑誌に載らない話vol17
2010年12月14日、日産と三菱自動車が事業協力関係を結ぶことが発表された。これは、今年一番のビッグニュースかもしれない。
両社で合意された内容は次の通り。

○OEM分野
・日本市場で日産の小型商用車を三菱に供給。
・中東市場用に三菱のSUVを日産に供給。
・日本市場で日産の上級セダンを三菱に供給(未決定事項)
○今後の検討項目
・三菱のタイ工場で日産ナバラ(小型トラック)の生産、および将来的に両社で1トンクラスのピックアップトラック共同開発と生産協力。
・日本市場向け軽自動車の商品企画・開発を合弁会社の設立。

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↑日産のゴーン社長と三菱の益子社長

 

なかでも一番注目されているのが、軽自動車の共同開発案である。日産はこれまでスズキからルークス、モコ、三菱からオッティ、キックス、クリッパー/クリッパーリオのOEM供給を受けている。つまり日産にとって、今や軽自動車市場での販売台数が多く、はきわめて重要なカテゴリーになっているのだ。

しかし販売台数が多いだけに、これまでのOEMでは供給される台数、仕様などの制約が多かったと思われる。そこで、新たな協力関係をテコにして、日産はスズキからのOEMを止め、三菱に一本化すると同時に商品企画・開発段階から協力することを選び、そのほうが大いにメリットがあると判断したのだ。また、共同開発した軽自動車プラットフォームを利用して新興国向けAセグメントカーを開発する可能性も噂されている。
今回の両社合意に基づくOEMに関しては、両社のラインアップを補完する形となる。日本市場用の商用車は従来から日産ADバンをランサーカーゴとして販売していたが、今後はNV200バネット、キャラバンなども供給されるのだろう。そして、中東市場向けSUVとはパジェロを意味するのではないだろうか。日産はヘビーデューティSUVであるサファリを生産終了し、主に中東向けのパトロールのみを生産している。効率を考えれば三菱製のSUVをOEMとすれば好都合なのだろう。また、日本市場での日産の上級セダンの三菱OEMは、スカイラインかそれともフーガか? あたりが予測でき、これから詰めることになるのだろう。

いっぽう、三菱は100万台体制を維持しているが、これは自動車メーカーとしてはきわめて厳しい環境といえる。自立を目指すには生産台数が少ない。海外ではロシアでは成功しているものの巨大市場の中国、アメリカでの劣勢はある意味で致命的である。

また日本の軽自動車市場でのシェアはスズキ、ダイハツ、ホンダに次ぐ第4位で、ダイハツの半分以下のシェアのため、収益性は相当に厳しいと想像できる。そのため、日産と組むことで軽自動車のカテゴリーでホンダを抜いて第3位となり、工場稼動率もアップするし、開発費の負担も少なくなると見込める。

日産にとっても、2011年からダイハツOEMの軽自動車販売を行うトヨタと対抗するには、より日産に適合した軽自動車をラインアップする必要があり三菱が最適であること、そして新興国向けAセグメントカー開発にとっても有利な材料になるというぐあいで、双方に大きなメリットがあるわけだ。
より大きな視点で見ると、日産/ルノーはダイムラーベンツと業務提携しているが、三菱が加わることで、4社連合はVWグループに追従できる規模を持つことになる。
また、今回の業務協力では触れられていないが、EVでの覇権を狙う日産にとって、三菱のEVと連携を持つことにより得られるより大きなスケールメリットは魅力だろう。三菱は単独でEVを展開するのは厳しいため、この面でも双方にメリットがあるはずで、EVの展開も今後は注視したい。

文:編集部 松本晴比古

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