日産セレナがモデルチェンジを受け、4代目のC26型として登場した。基本的にはキープコンセプトで、諸性能を熟成する方針で開発された。新たに付け加えられた要素は「エコ」で、従来のMR20型エンジンを大幅に進化させた直噴エンジンとし、アイドルストップシステムを追加、燃費を向上させている。
↑新型セレナは横浜の日産自動車本社で発表。その様子とセレナを検証
新型セレナC26型は、C25から採用しているCプラットフォームを継続使用している。その理由のひとつとして、「考え抜かれたプラットフォーム」だからだという。乗り心地がマイルドで、悪路でもゴツゴツとした振動をいなすことができ、多くの車種に幅広く対応できるということだ。
ルノーとの共同開発されたこのCプラットフォームは、Cセグメント用でFF車、またはFFベースの4輪駆動車にも使われるもので、ラフェスタ、デュアリス、エクストレイル、ルノーメガーヌ、コレオス、カングーなど数多くのモデルがこのプラットフォームを採用している。
その素材であるプラットフォームをセレナではどのように活かすかであり、家族が乗るうえで欠かせない、乗り心地のよさ、静粛性の高さをさらに改善してきたという。そして先々代C24のキャッチコピーであった「モノより思い出」に代表されるように、常に家族を意識し、親子が時間と空間を共有するために考えられているクルマでもあるわけだ。
エンジン
今回のモデルチェンジで、大きな変更点のひとつにエンジンがある。MR20型4気筒エンジンは、日産、ルノーの共同開発エンジンで、最初は2004年に登場している。これまではDOHC16バルブのポート噴射式であったが、今回は大幅に改良し、直噴+アイドルストップを採用。エンジン呼称はMR20DD型となった。
ボア・ストロークは84.0×90.1mm、総排気量1997ccといった基本諸元は変更されていないが、吸排気カムに可変バルブタイミング機構を装備。直噴インジェクターは吸気ポート下側にレイアウトされている。
従来エンジン(MR20DE)はレギュラーガソリン仕様で圧縮比は10.0である。137ps(101kw) /5200rpm、200Nm /4400rpmの出力であったが、直噴化により圧縮比が11.2に高められ、147ps(108kW)/5600rpm、210Nm/4400rpmと、パワー、トルクともにアップしている。とりわけ、低速トルクがアップしている。
また吸排気可変バルブタイミング機構の採用(従来は吸気側のみ)で、低負荷域ではミラーサイクル運転を行う。一方、低フリクション化では、DLC皮膜リフター、カムシャフトやチェーンの面粗度向上、省燃費オイルの採用などが行われている。
ミッション
トランスミッションは従来通りの中型CVTを継承している。アダプティブシフトコントロール、CVTフルードウォーマー、停止時ニュートラル制御などの機能を加えている。もちろんCVTの変速制御も、より燃費重視のセッティングに変更されているだろう。
結果的には10・15モード燃費で、13.2km/Lから15.4km/L(最廉価グレードのアイドリングストップなしで14.4km/L)に向上している。もちろん現時点ではクラストップの燃費だ。アイドルストップシステムも、マーチ用より、さらに進化させている。日産はかなり速いテンポで全車種アイドリングストップ化を進めるようだ。
そのアイドリングストップ機能の特徴は、エンジン再始動時にスターターモーターではなく、ECOモーターを使用するという点だ。ECOモーターとは何か。名称からは想像できないのだが、なんとEnergy Control motorの頭文字だそうだ。で、その実態はオルタネーターを再始動モーターとして使用するということで、つまり補機ベルトを使用してクランキングを行うようになっている。
同時に直噴エンジン、専用クランクセンサーを搭載することで、初回の圧縮工程の気筒への着火が可能となり、エンジン再始動時間をさらに短縮し、再始動0.3秒(ブレーキペダルオフからアイドリング回転までの到達時間)は現在のアイドリングストップ車の中では最速だという。
通常のポート噴射エンジンでは、1番シリンダーの圧縮上死点を2回確認(つまり2回転)して着火する制御ロジックが一般的だが、おそらく高精度クランクセンサーにより1回目で着火させるシステムのようだ。
ECOモーターによりベルトでクランキングを行うため、スターターモーターの作動音がなく、再始動がより静粛で自然な感覚になるのもこの方式のメリットだろう。なお通常の始動時はスターターモーターでクランキングを行い、エンジン暖機後のアイドルストップ再始動時のみこのECOモーターを使用している。ということは、ECOモーターの駆動トルクはあまり大きくないと思われる。
バッテリーは、アイドリングストップ専用の特性&サイズで95Ah。アイドリングストップシステムは起動時にはバッテリー容量も確認するため、非アイドリングストップ車用のバッテリーでは容量不足と判定されるケースもありえる。なおECOモーターは減速時にはエネルギー回生発電を行うが、日産はなぜかあまりこの点は強調していない。
文:編集部 松本晴比古