ジュークターボの新技術 新開発ターボエンジンとトルクベクタリング付きALL MODE 4×4-i

2010年11月2日、日産ジュークに新開発4気筒ターボエンジンを搭載した16GTが追加された。ジュークはBプラットフォームを使用したコンパクトサイズのクロスオーバースポーツ・モデルで、10年6月に発売している。これまでは1.5L自然吸気のHR15DE型エンジンのみの設定で、このエンジンは、1気筒あたり2本のインジェクターを備え、各吸気ポートの壁面への燃料付着を低減するという、新技術を採用して話題になったエンジンだ。

↑トルクベクタリング

 

しかしながら、ジューク本来のコンセプトは、よりスポーティなクロスオーバーカーであり、SUV的なイメージを否定するために、もっと強力なエンジンが本命視されていた。その本命エンジンを搭載したのが今回デビューした16GTなのだ。そして16GTには4WDモデルも追加され、従来からの技術であるオールモード4×4に、日産初のトルクベクタリング機能を追加している。

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MR型エンジン搭載

新エンジンの開発コンセプトは、ダウンサイジングと高出力の両立を狙ったもので、2.5Lエンジン相当の出力を発揮し、燃費は1.8Lエンジンなみとされている。

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新たに採用されたこの1.6LのMR16DDT型ターボエンジンは、1.5LのHR型と同様にルノーとの共同開発であり、MR型としての1.6Lは下限の排気量となる。MR型エンジンは、これまで1.8L版は84.0×81.1mm、2.0L版は84.0×90.1mmというボア・ストロークであったが、今回搭載したMR16DDTは79.7×81.1mmで最もスモールボアになっている。

このエンジンの特徴のひとつとして、直噴システムを初採用し、さらに、小型ターボを組み合わせて190ps/5200回転、240Nm/2000〜5200回転という出力、トルクを引き出している。つまり、全域で低回転化がはかられ、最大トルク回転域は2000〜5200回転とワイドはフラットトルク型エンジンとなっている。

このため組み合わされるトランスミッションはジャトコ社の中型用CVTだが、より高いギヤ比を選択して走行することできるのだ。なおこのCVTはマニュアル変速時シンクロレブコントロール付きなので、ブリッピングし回転を自動的に合わせてくれるのだ。

動弁システムはチェーン駆動カムによる16バルブで、吸排気カムの両方にCVTC(連続可変バルブタイミング機構)を装備する。排気側にCVTCを装備することで、エキマニ直下にレイアウトされたタービンへの排気ガスの流れがスムーズとなり、より低速のトルクとレスポンスアップが可能になる。また当然ながら低負荷域ではよりスロットルが開くようにバルブの開きが制御される。

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バルブ駆動は直動式だが、カムフェースはナノフィニッシュ、つまりほぼ鏡面加工とし、バルブリフター側はDLC皮膜として潤滑性と平滑性を高め、動弁系フリクションを低減している。また、バルブスプリングはビーハイブ型(たけのこ型)バルブスプリングを採用。これは、リテーナーの小径・軽量化と、定数を下げ、スプリングの線間密着を防ぐというふたつの手法で摩擦抵抗を低減している。これまでではバイクのエンジンやランサー・エボリューションモデルのエンジンなどにも採用実績がある。

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燃料直噴は、インテークポート下側から燃焼室に噴射するレイアウトだ。インテークポートはタンブル(縦渦)流を生成する絞りの強い形状で、エンジン始動直後は点火プラグ付近で成層燃焼を行う。点火時期を遅角させながら成層燃焼をさせることで排ガス温度を高めているのだ。

暖機後は、通常の均質燃焼が行われる。圧縮比は9.5で、おそらく最高1barほどの過給圧をかけるため、排気バルブはナトリウム封入式、ピストン・オイルジェットなどを採用し冷却性を高めている。

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オールモード4×4

ジュークはこれまでFFモデルのみであったが、16GTの登場と同時に、4WDモデルの16GT FOURが新設定された。4WDシステムは日産の従来からのシステムであるオールモード4×4iを継承しているが、今回はさらに後輪左右のトルクベクタリング(トルク配分制御)機能を追加している。

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オールモード4×4-iはアクティブトルクスプリット式で、リヤデフ直前に電子制御多板クラッチを配置。走行状況により多板クラッチの圧着力変化により後輪へのトルク配分を決定する。スイッチで「2WD」を選択すると100:0、「4WD」(ロック)選ぶと50:50に固定されるが、4WD-V(オートモード)では約100:0〜50:50の間で自動制御される。もちろん乾燥路でも発進時から巡航時まで後輪にトルクは配分される。

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今回追加されたトルクベクタリング機能付きの場合は、リヤのデフケースの左右にそれぞれ電子制御多板クラッチを備えている。そして、走行状況に合わせて後輪左右の駆動トルクも100:0〜0:100の間で自動配分される。前後輪のトルク配分と同様にリヤ左右輪のトルク配分も、操舵角や車輪速、ヨーレート、G、アクセル開度情報から走行状況、車両の姿勢(アンダーステア、オーバーステア)、路面の状態を判定し、操舵角やタイヤグリップ力にふさわしい目標ヨーレートになるように、リヤ左右輪の間のトルク配分が変更させる。

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効果としては、通常のコーナリングでは、旋回時外側の後輪により多くのトルクを配分することで曲がりやすくし、もし後輪のグリップが低下してオーバーステア傾向になると、旋回内側輪により多くのトルクを配分する。そのため、コーナリングでレスポンスよく曲がり、アンダーステアを抑制。レーンチェンジでもレスポンスよく安定した車両の動きとなる。

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トルク配分の状態は、メーター内にトルクベクタリングの配分を走行中にリアルタイムで表示が可能だ。なお、このトルクベクトル付ALL MODE 4×4-iシステムは、同等の機能を持つ他社のシステムと比べ、最小・最軽量というが、ハルデックスのクロスドライブもほぼ同等ではないかと思われる。

いずれにしても確かにメカニズムはきわめてシンプルであり、他車種への展開性も高い。なお、FFモデルがトーションビーム式リヤサスペンションであるが、当然ながらトルクベクトル付ALL MODE 4×4-i搭載の16GT FOURのリヤサスペンションはマルチリンク式サスペンションとなっている。

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ジューク 16GT 2WD CVT-M6 218万9250円(消費税込み)

ジューク 16GT FOUR 4WD CVT-M6 245万1750円(消費税込み)

文:編集部松本晴比古

日産自動車 公式Web

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