三菱アウトランダーPHEV試乗記 フルモデルチェンジに等しいひとクラス上に押し上げた改良

マニアック評価vol625
走り出した瞬間に、「オッ」と思えるくらいの変化を感じ取れたのが印象的だった。

三菱の「アウトランダーPHEV」は、これまでも特にそのパワーソースが生み出す独自のフィーリングに好印象を抱いていたが、今回はその好印象がさらに増したと言えるものとなっていたのだ。

三菱 アウトランダーPHEV 試乗レポート 河口まなぶ氏
一クラス上級になったアウトランダーPHEVを、モータージャーナリスト河口まなぶ氏がレポート

 

バッテリー容量、モーター出力、エンジン排気量をアップ

ご存知のようにアウトランダーPHEVは、その名の通りプラグインハイブリッド車であるが、このクルマの個性であり他とは圧倒的に異なる要素として、走行の基本をほぼEV、つまりモーターを主として行なっていることが挙げられるが、モーターはフロントとリヤにそれぞれあり、これを使って走るツインモータードライブが基本となる。

それだけに走らせると、モーターならではの静かで滑らかで力強いEVならではの感覚を味わえるわけだが、このクルマの場合は他のEVとは違ってツインモータードライブとなるため、通常のEVよりもさらに気持ち良く洗練された加速を味わえるわけだ。

しかも今回のマイナーチェンジによって、モータードライブの走りの良さを際立たせ、EV走行の気持ち良さをハイブリッド走行域まで広げるために、PHEVシステムが大幅にアップデートされたのが特徴だ。

三菱 アウトランダーPHEV 試乗レポート エンジン
2.4Lへと排気量をアップ。そのことで静粛性も向上した

中でも大きいのは、搭載エンジンがこれまでの2.0Lから2.4Lのアトキンソンサイクルとなったこと。そして駆動用のバッテリーが以前よりも+15%容量アップされた上に、バッテリー出力も以前より+10%アップされたことだろう。またリヤのモーター出力も向上しており、これまでより+10kW向上を果たした。またジェネレーターも最大出力が10%アップしている。

これらによって実際の数値性能も当然向上しており、0-100km/h加速はこれまでの11.0秒から10.5秒へ、さらに追い越し加速では40-60km/hでこれまでの2.8秒から2.5秒、80-100km/hではこれまでの4.3秒から3.7秒となっている。ここからもわかるように、当然体感としても「速い」と感じるようになったのである。
 

ツインモーターならではの気持ちよさ

それと同時に、フィーリングとしては力強さと滑らかさが増している。速さも相当向上したが、むしろ街乗りでは特に力強さと滑らかさが増したことで、アクセルを踏む量が少なくても十分な加速が得られる余裕が生まれている。合わせてわずかなアクセル操作でも、そのボディを前へと静かに、しかししっかりと押し出してくれるゆとりも生まれた。

今回の試乗では、田町にある三菱自動車からクルマを借り出して、都内の一般道をしばらく走った後に首都高速に乗って湾岸方面に行き、湾岸を少し走った後にお台場で撮影をして再び首都高で都内に戻って三菱自動車に帰るというルートを走った。

このシチュエーションでは当然、街中でのストップ&ゴーが頻繁である上に、首都高から湾岸へアクセスする際には一気に高速域に達する・・・といった具合で、あらゆるシーンでの評価ができたが、各シーンでツインモータードライブならではのフィーリングの良さは不変だった。街中では先述したように、わずかなアクセルワークで流れに乗れるどころか流れをコントロールできる余裕があるし、首都高や湾岸線では合流等のひと踏みでスッと前へ出られる力強さを痛感する。

それだけに、一度このツインモータードライブを味わってしまうと、通常の内燃機関搭載車のフィーリングが雑だったり、おっとりしたものに感じそうになるほどである。電気モーターの反応の速さと力強さ、しかしながら滑らかに出力される様子はそれほど洗練されていて、気持ち良いフィーリングとして感じられる。

三菱 アウトランダーPHEV 試乗レポート モード切り替え
今回のMCでスポーツ/スノーモードが追加され、走りの良さに磨きがかかった

またこうしたフィーリング面の向上だけではなく、今回は合わせてS-AWCもスポーツモードとスノーモードが追加された。これによってオンロードではさらにツインモータードライブならではの走りの良さを存分に味わえるようになった。
 

レスポンスよく反応するステアフィール

そしてスノーモードによって雪道でも安心して気持ちよく運転ができるようになっているのもポイントだ。特に今年初めに北海道でプロトタイプを試した際には、通常の4WDと違い、モーターの出力をきめ細やかにコントロールできることもあって、姿勢の変化の自在性も高く、雪道でも実にコントローラブルだったのが印象的だった。

一方で今回、アウトランダーPHEVはボディやシャシーにも細かく手が入られたために、その完成度はさらに高まっていたと報告できる。具体的には構造用接着剤を使う、前後ドアの開口部やリヤゲートなどへの使用範囲をこれまでの約8m程度から約13m程度に増やすことで、車体剛性が向上している。

合わせて今回はステアリングのギヤ比を、これまでの18.2から15.8へとクイック化した。そしてショックアブソーバーでは今回試乗したGプレミアムのリヤショックアブソーバー径がサイズアップされている。

これらの効果もまた、走り出してすぐに感じられるもの。ステアリング・ギヤ比のクイック化によって、これまでよりも操舵に対してクルマがレスポンスよく反応するように感じられる。これは何もカーブを曲がるようなシーンでなくとも感じられるところで、普通に車庫から出る際の取り回し等でも操作に対してスッと比較的素早く動くように感じられる。もちろんカーブ等ではハンドルを切っていった際に、ボディの動きが以前よりもリニアに反応する感覚が増している。

さらに車体剛性向上とショックアブソーバーのサイズアップによって、乗り味にも以前と異なる印象が生まれている。走り出すと純粋に以前よりもカッチリした感覚があるし、しっかりしたボディに装着された、容量の増したショックアブソーバーが綺麗に動くことで、穏やかながらも的確な凹凸の処理を行なってくれている。それだけに乗り味にしっかりとしていながらもゆとりの感じられる、深みの増した心地よさが生まれているわけだ。
 

高級車の世界へ踏み込んだ改良

結果その走りは、より上質で洗練されたものとなり、アウトランダーPHEVの車格をひとつ上に押し上げたともいえる。端的に言ってしまえば、ボディこそSUVの形をしているが、そこで展開される乗り味走り味は高級車の世界を感じさせるものと言っても良いような感覚さえ漂っているのだ。

エクステリアやインテリアも、マイナーチェンジによってグッとシックな感じになって、この辺りも余裕が感じられるものになった。結果、その乗り味走り味の進化と相まって、アウトランダーPHEVは、その登場時からはもちろん、以前の改良時から見ても相当に熟成が図られたといえる印象をあらゆる部分で感じさせるクルマへと成長を果たした。そんな風に感じた今回のマイナーチェンジだった。<レポート:河口まなぶ/Manabu Kawaguchi>
 

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