エクリプスクロスPHEV試乗記 新しい走りの世界(ツインモーターS-AWC )

三菱自動車のコンパクトSUV「エクリプスクロス」にPHEVモデルが追加され、ショートサーキットで試乗する機会があった。

富士スピードウェイのショートコースで試乗できた

試乗したのは富士スピードウェイのショートサーキットで、部分的にパイロンスラロームも設定されたコースでの試乗だった。テストのメインは、三菱がこだわる4輪制御技術のS-AWCだ。

エクリプスクロスPHEVは、アウトランダーPHEVと同じシステムを搭載したツインモーター駆動で、搭載する2.4Lのガソリンエンジンは、主に充電のために稼働することが多い。そして前後に独立したモーターで走行する。一部、高速走行ではエンジン走行もするが、今回はS-AWCによるハンドリングのスポーティさを体感する試乗だった。

アウトランダーPHEVで十分実績もあり、また雪上試乗なども過去に体験しているだけに、おおむね想像はできるが、実際に走ってみるとアウトランダーPHEVとは異なり、かなりスポーティな制御になっていることを体験することができた。それは車格とかクルマの性格の違いによるもので、エクリプスクロスPHEVはかなりスポーツ走行を意識した制御になっていた。

スポーツ性のテスト

S-AWCの狙いは、どんな路面でもハンドル、アクセル、ブレーキで操作どおりにクルマが動くという究極の安心感とダイナミック性能をすべての人に提供するというのが狙いだ。これはアウトランダーPHEVにも共通する。

ただ、テストフィールドをショートサーキットを選択している時点で、スポーツ性をテストすることが容易に想像できた。そしてこのフィールドでは、日常の道路とほぼ同等の車速域でありながら限界付近で走行できるため、非常にわかりやすい試乗だった。

走行モードは「ターマック」で、ラリー用語の舗装を意味するモードで走行した。コースインしてまず、モーターならではの発進加速の力強さを感じ、ステアするとニュートラルにコーナリングする。そしてブレーキを引きずりながらのコーナリングでも、ずっとニュートラルステアが維持され、アンダーステアもオーバーステアも出ない。

そこで、無理やりアンダーステアを出した状態でアクセルを踏んでみる。すると徐々にアンダーが解消してしまうのだ。普通アンダーが出てしまった時は「待つ」しかないが、待たなくてもレコードラインへクルマが勝手に復帰していくのだ。極端にいえばアンダーステアが出ていることがわからない人でも問題なく速い速度でコーナリングできる制御の凄さを感じ、また安心感を感じることもできる。

パイロンスラロームでは、スロットルをオフした動きで回頭性が上がり、アクセル操作だけで小気味よくスラロームを走り抜けることができる。とくにリヤモーターの駆動力が上がっていることを体感しながらスラロームしていくのだ。舵角を判定して前後のトルク配分を変え、ドライバーのアクセル操作に反応する制御になっている。

S-AWCの凄さ

これは、正直なところ制御の極みと言っていい。どういう理屈なのかを簡単に説明すると、S-AWCは3つの要素で制御されている。4輪駆動の制御において、まず前後輪間でのトルク配分を前後のツインモーターで行ない、左右輪間でのトルクベクタリングをブレーキAYCで旋回ヨーモーメントをコントロールする。そして4輪ブレーキ制御をABSとASCでコントロールという要素で成り立っている。

これらの制御因子をどうやって考えていくかだが、ドライバーのアクセル操作に応じて駆動トルクをフィードフォワードで前後輪に配分する「基本配分制御」がある。これがすべての基本で、その基本配分制御に情報を渡す要素が2つある。

それはコーナリングすると前後輪間の回転差が生まれ、そのトルク配分をフィードバックで補正する目標差回転制御がある。そしてアンダーステア、オーバーステアの症状に基づくトルク配分を補正するヨーレートフィードバック制御という2種類のフィードバック制御を採用しているのだ。そうした中で、理想の前後駆動トルク配分を行なうのが「基本配分制御」であり、路面のμ変化に対して理想のトルク配分を行なっているというのがS-AWCなのだ。

これは4本のタイヤそれぞれがコーナリング時に性能を発揮する路面との摩擦円の大きさに違いがあり、それをS-AWCによってタイヤの性能を最大限に引き出すための制御ということなのだ。だからクルマは滑らないし、姿勢を乱すこともないということなのだ。

さらにモードとしてはノーマル/エコ、スノー、グラベル、ターマックの4つのモードがあり、どのもノードにおいても理想の前後駆動トルク配分をしている。

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さて、エクリプスクロスPHEVはこうしてみると、かなりスポーティな性格をもっていることがわかる。もちろん、すべてのひとに究極の安心感を、ということではあるが、そのための制御はスポーティに走行したとき、ドライバーの意のままに操れるということでもあり、車両運動性能の理想という言い方になるのかもしない。

商品企画

三菱全体としてはASEANを基盤に環境技術の強化と4WD技術、オフロード技術による安心感の提供というものがある。そしてエクリプスクロスPHEVが背負う背景には、国内事業ではPHEVを軸にした、収益力の強化がある。


エクリプスクロスPHEVでは、SUVとして基本性能の高さや優れた走行性能、そしてスタイリッシュクーペの世界観といったもので国内ユーザーに訴求していく狙いで、特にスポーティな走行性能は魅力的に感じると思う。

そのためにデザインも変更している。PHEVとするためにフロアも延長することになり、特にリヤが100mm延長され、前後のオーバーハングは140mm伸びている。最大のデザイン的特徴は三菱のデザインアイコンのダイナミックシールドのフェイス、そしてクーペライクなルーフラインにあるだろう。

いずれ公道での試乗テストもしてみたいと思うが、三菱の車両運動統合制御技術は古くからあるものの、モーターを搭載した車両によってさらに思い通りの理想に近づいていると感じる。機械式では反応スピードが遅く、電動化によるレスポンスの速さが開発陣の理想を実現しているのは間違いない。

なかなかこのフィーリングを言葉で伝えるのは難しいが、是非試乗してみることをお勧めする。思い通りに不安なく、レベルの高いコーナリングが手に入る喜び、そして新しい走りの世界を感じてみてほしい。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

COTY
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