三菱自動車、MCリテールエナジー、ニチコン、Kaluza Ltd、Kaluza Japanの5社は2025年11月6日、東京都の「GX 関連産業創出へ向けた早期社会実装化支援事業」の一環として、家庭における電気自動車の充電・放電の最適化による電力系統の安定化への貢献と新たな価値創造を目的に、日本初となる家庭向けV2G(電気自動車と電力網への接続)/V2H(電気自動車と家庭電源の接続)の実証を11月に開始したと発表した。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、発電側では太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入、需要側では電動車の導入が進んでいる。
太陽光発電の発電時間帯が日中に集中することや電動車の充電が帰宅後の夕刻に集中することにより、再エネの有効利用や特定の時間帯の電力系統への負荷集中の回避が課題とされており、今後は蓄電技術の活用や需要時間帯のシフトが不可欠となると想定されている。
このような社会課題の解決に向け、今回の実証では電力需要が多く電力市場価格の高い時間帯に電動車から家庭へ電力を供給し、太陽光発電の発電量が多く市場価格の安い時間帯に車両に充電する仕組みを構築することで、再生可能エネルギーの有効活用、電力系統の安定化に貢献することを目指している。
今回の実証では、事業者間のシステム連携により電動車のバッテリー充電量情報や充放電制御指示をリアルタイムで連携する仕組みを構築し、さらにMCリテールエナジーがその仕組みを活用した市場連動型の電気料金プラン(30分毎に変化する電力市場価格に連動して単価が決定される電力プラン)を開発した。
電動車オーナーは自宅で車両にV2G/V2H充放電器を接続し、事前にスマートフォン専用アプリで希望充電完了時間と目標バッテリー充電量を設定することで、自動で設定条件を満たしながら経済的に最適な充放電制御が行なわれ、市場連動プランを通じて経済的な還元を受けることができる。
今回の実証プロジェクト全体の取り纏めを行なう三菱商事とともに、5社はこの実証を通じて得た知見を生かし、電動車オーナーの顧客体験のさらなる向上を図りながら、カーボンニュートラル社会の実現へ貢献することを目指している。
実証期間
2025年11月~2026年3月
実証の対象者
東京電力パワーグリッド管内で、ニチコンのV2G/V2H充放電器の設置およびMCリテールエナジーの提供する市場連動プランに加入した一般家庭の電動車オーナー
充放電制御の仕組み
① 電動車オーナーはアプリを通じて電動車利用の志向(希望の充電完了時間や目標バッテリー充電量)を設定し、Kaluzaはその志向情報を取得
② MCリテールエナジーが電力市場価格を日々取得しKaluzaと連携
③ ニチコンはKaluzaに電動車の情報を連携
④ Kaluzaが①②③を踏まえ、最適な充放電計画を作成
⑤ Kaluzaがニチコンを通じてV2G/V2H充放電器へ指示(MCリテールエナジーは充放電に伴う電力供給/買取を実施)
⑥ 電動車オーナーは最適制御により生まれた経済価値を市場連動プランを通じて享受

今回のこうした実証により、電気自動車の広範な普及により電力不足が発生する、あるいは再生エネルギーである太陽光発電では夜間は発電できないなどの否定論に対して、こうした大量の電気自動車の蓄電能力を活用したスマート・グリッド、つまり電力網の安定化、昼間の太陽光発電の電力保存・安定化が実現するという近未来の電力需給のあり方を証明することができるはずだ。
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