2013年11月1日、三菱は東京モーターショー2013への出展概要を明らかにし、ワールドプレミアとなる3台のコンセプトカーを出展すること発表した。このコンセプトカーにより三菱の提唱する「@earth TECHNOLOGY」をテーマにした今後のデザインの方向性、テクノロジー展開がプレゼンテーションされる。
・Concept GC-PHEV
出展される3台のコンセプトカーのうち、まずは「Concept GC-PHEV」(GCはグラウンドクルーザーの略)は次世代パジェロを想定したモデルだ。3.0L・V6スーパーチャージドMIVECエンジン、8速オートマチックトランスミッション、高出力モーター、大容量バッテリーなどで構成するFRタイプのPHEVシステムを搭載。高いクロスカントリー性能を備えたLクラスの次世代のオールラウンドSUVとされている。このためヘビーデューティなフルタイム4WDシステムを搭載している。
PHEVシステムはアウトランダーPHEVとは異なり、8速ATに内蔵したクラッチ付き1モーター式で、ATには副変速機付きのトランスファーが一体化されたFR駆動ベースの4WDシステムとなっているのが特徴だ。前輪はトランスファーから取り出されたプロペラシャフトで駆動され、リヤはAT後端から伸びるプロペラシャフトによりリヤデフに駆動が伝達される。
3.0L・V6スーパーチャージドエンジンの最高出力は250kW(340ps)、モーター出力は70kW(95ps)といずれも強力だ。床下に配置されたリチウムイオン電池は12kWhの容量を持つ。PHEVとしてはEV走行、シリーズ・ハイブリッド走行、パラレル・ハイブリッド走行、エンジン走行のモードを備えている。
4WDシステムは車両運動統合制御「S-AWC」コンセプトに従いフロント、センターデフは電子制御LSDを備え、リヤデフにはe-AYC+LSD、つまり左右輪の電子制御トルクベクタリングを装備し、車両の安定性、コーナリング性能を高めるようになっている。
デザインは三菱のSUVのDNAを採り入れた新たな展開を示す。また三菱が次世代のクルマの技術と位置付けるモバイル通信と路車間、車車間通信を前提とした「コネクテッドカー技術」、全方位ドライバー支援システム「e-Assist」をフル装備している。
インテリアでは、AR(Augmented Reality:デジタル技術によるバーチャルドライバー支援システム)のコンセプトを採り入れ、多くの情報がフロントガラスやダッシュボードのディスプレイに表示される。ドライバーの視線移動を最小限にする「ARウインドシールド」は、AR(拡張現実)技術を応用し、走行中に必要な情報をフロントウインドゥに表示。前方の視界に表示情報を並べることで、ドライバーは走行中に起こるさまざまな道路状況の変化を視線を大きく動かさずにキャッチできる。表示される情報は、カーナビと連動した進路案内や、予防安全技術と連動する「車間警報」、「車線逸脱警報」、さらにクルマとクルマ、歩行者とクルマの間の通信を利用した運転支援技術を活用することで、交差点の死角から迫っている車両や歩行者といった、実際にはドライバーからは見えない情報をガイドや警告として表示する「コーショントラッキング」を装備する。
またセンターコンソール上面も大画面のタッチスクリーン式ディスプレイ(名称はタクティカルテーブル)とされ、乗員の各自のスマートフォンから得られた情報を統合表示できるという未来像を示している。
ITS技術を多用した次世代e-Assistもフル装備されている。高速道路などでクルマとクルマ、クルマと道路間の通信から他車の加減速情報を共有することで、より緻密な車間距離制御を行い、渋滞緩和やエコドライブを促進する「レーンキープアシスト付CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)」を搭載。またカメラで道路標識を認識して運転者に通知し、状況に応じてスピードリミッター制御も作動させる「標識認識システム」、夜間にハイビームで走行中、歩行者や対向車が出現した際に車載カメラで対象位置を検知し、そのエリアのみを遮光してまぶしくさせない「アダプティブヘッドライト」も採用している。
またドライバーの支援システムとして、フロントウインドシールドの上部に2個、Aピラーに2個、リヤドアの窓後方に2個、リヤゲートの上部に2個の計8個の赤外線カメラを装備する。これらでスキャンした精度の高い周辺状況の画像処理により、夜間でも危険を瞬時かつ正確に察知し、予防安全技術と連携することで、障害物や他のクルマが接近している際に迅速に警告する「Night Eye(ナイトアイ)マルチアラウンドモニター」を採用しているのも注目される。歩行者衝突軽減・自動ブレーキは、レーダーとカメラにより歩行者を検知し、緊急時には自動ブレーキをかける技術を採用している。
・Concept XR-PHEV
「Concept XR-PHEV」(XRはクロスオーバーランナーの略)は、ダウンサイジングコンセプトを取り入れた新開発の1.1L・4気筒直噴ターボチャージドMIVECエンジン、軽量・小型の高効率モーター、大容量バッテリーなどで構成するFFタイプのPHEVシステムを採用したドラインビングプレジャーを重視した次世代CセグメントのSUVだ。走行状況に応じて最適な走行モードを自動選択するPHEVシステムにより、燃費・航続距離を飛躍的に高めながら、俊敏で軽快な走りを実現するとしている。
エクステリアのデザインコンセプトは「アスリートフォルム」で、クラウチングスタートの躍動感を、エッジの効いたサイドキャラクターラインと前傾姿勢のシルエットで表現している。筋肉質で張りのあるフェンダーと大径タイヤ組み合わせ、低い車高でありながらリフトアップしたボディは、俊敏でオールラウンドな走りをイメージさせる。車体の動きにフレキシブルに対応するアダプティブヘッドライトを装備。またルーフにはソーラーパネルを装備し、補器用バッテリーを充電。ルーフ後端には走行状態に応じて角度を調整できる可変スポイラーを採用している。
インテリアは、スポーティなドライバーオリエンテッド・デザインだ。ドライバーズシートは、サポート性を重視したバケットタイプとし、シート素材をボディカラーやインテリアのアクセントカラーとコーディネートしたレッドだ。
Concept XR-PHEVのハイブリッドシステムはアウトランダーPHEVをベースとした軽量・高効率なFFタイプのPHEVシステムとしている。アウトランダーとは異なり新開発の1.1L・3気筒直噴ターボチャージドMIVECエンジンを搭載する。軽量小型・高効率のモーター、モーター駆動電圧を700Vまで昇圧する昇圧コンバーターをフロントに搭載し、大容量バッテリーをフロア下に配置。昇圧コンバーターの採用により、モーターとジェネレーターの出力と効率をともに向上。リヤモーターを採用しないFFタイプのPHEVシステムにしているため軽量化、フリクションロスの低減となり、燃費・電費を向上させている。
このPHEVシステムは、モーター走行を基本モードにし、エンジンが発電と駆動の両方を担当。走行状況やバッテリー残量に応じてEV走行、シリーズ走行、パラレル走行のうち最適な走行モードを自動選択する。さらに、バッテリーセーブモードやバッテリーチャージモードを使うことで、任意のEV走行が可能になるのはアウトランダーPHEVと同じだ。
Concept XR-PHEVは次世代運転支援システムのe-Assistを搭載する。主な内容は、歩行者衝突軽減ブレーキ、後側方死角車両警報、路車間通信利用運転支援、オートハイビーム、誤発進抑制制御、衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)、車線逸脱警報システム(LDW)、レーダークルーズコントロールシステム(ACC)などとされている。
・Concept AR
「Concept AR」(ARはアクティブランナバウトの略)はSUVの機動性と多用途性を両立させたCセグメントの3列シート、6人乗りのMPVだ。エクステリアは、MPVとSUVの融合を目指し、コンパクトなボディでありながらホイールベースを長くすることで、開放的で広いキャビンを実現。ルーフは「クリスタルライトルーフ」として開放感をもたらている。四隅に配した大径タイヤでリフトアップさせたボディ、そのボディ下部を前後左右から包みこむスキッドプレートで、機動力と安心感あるSUVならではの存在感を表現している。
インテリアはシンプルでクリーンな造形とし、ラウンドした広々とした室内は、「6人ゆったり乗車」、「4人乗車でリヤはラゲッジスペース」、「4人対座で広いスペースを共有」といったフレキシブルなシートアレンジができるのがMPVらしい。ルーフはU字型の「クリスタルライトルーフ」を採用している。
エンジンはダウンサイジングされた1.1L・3気筒直噴ターボチャージドMIVECエンジンを搭載し、駆動・発電一体型のベルト駆動スターター・ジェネレーターを組み合わせた軽量なマイルドハイブリッド「49V」システムを搭載している。小容量の48Vのリチウムイオンバッテリー、DC-DCコンバーターにより、高出力スターター・ジェネレーターを使用してアイドリングストップ、エンジン始動や加速時の力強いエンジンアシスト、減速時のエネルギー回生を行う。このシステムはコンティネンタル社が提案している次世代ローコスト・ハイブリッドシステムだ。
Concept ARは、予防安全技術「e-Assist」と情報システムを活用したコネクティッドカー技術を連携させることで、危険性の予測や警告、セーフティ機能の作動などを行う。搭載される主な機能は、後側方死角車両警報、路車間通信利用運転支援、オートハイビーム、誤発進抑制制御、衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)、車線逸脱警報システム(LDW)、レーダークルーズコントロールシステム(ACC)などとなっている。
三菱は今回の東京モーターショーで、今後の車種展開を最も得意分野であるSUVに絞り込み、SUVを前提にした新デザイン戦略を展開すること、新開発のSUVはPHEV技術をメインと位置付け、さらに最新のITS技術や社会インフラとの通信システムを組み合わせたドライバー支援システムを積極的に採用することを強くアピールする計画である。
こうした背景には、2020年にクルマの電動化技術と販売において三菱がリーディングカンパニーになるという企業目標があるからだろう。