マニアック評価vol165
現行モデルのデリカD:5にクリーンディーゼルエンジンが搭載され2013年1月11日より販売が開始された。ポスト新長期規制という厳しい排気ガス規制をクリアしたクリーンディーゼルを搭載したことで、デリカD:5はエコカー減税の免税、および、補助金の対象モデルとなった。試乗は一般道および高速道路でのテストドライブで、その走りをレポートしよう。
グレード展開は上級グレードのプレミアムと量販モデルのパワーパッケージのそれぞれ4WDにディーゼルを設定し、FFモデルには搭載していない。ユーザー視点で言えば、4WDモデルでようやくガソリン、ディーゼルが選べるようになったということだ。
搭載されるエンジンは2.2L+ターボに6速AT。デリカD:5はもともと、開発の段階でディーゼルを搭載する予定がなく開発されたモデルで、そのため、根強いファンからの要望があるにもかかわらず、なかなかディーゼル搭載ができなかったという裏事情があった。
それが、ようやく実現したわけだ。その結果、ミニバンでクリーンディーゼル搭載は初となり、ディーゼルに強い三菱ならではということだ。もちろん、ディーゼルを搭載するために多くの改良を行ったのは言うまでもない。
ディーゼルの走行フィーリングを交えながら順をおって見てみよう。
取材当日5名乗車での試乗だったので車両重量としては2tを超える重さ。しかし、ディーゼルの特長でもある低速トルクがしっかりあるため、力強く走る。ミッションは6速ATでガソリン車はCVTを採用するが、360Nmという大トルクを持つディーゼルには対応トルクが間に合わないので、トルコンATを採用している。
ATのシフトアップは滑らかで、使い慣れ親しんでいるだけに違和感なく乗れる。このATは三菱のINVECS-?6速スポーツモード付きで、シフトパターン、ロックアップ領域、スリップ直結などが最適化されたATとなっている。
Dモードで高速走行中にアクセルを床までいっぱいに踏見込んでも、実はシフトダウンしない。おそらく、燃費を考慮しての制御と思われ、力強い加速が欲しいときにはパドルシフトを利用してダウンシフトする必要がある。このパドルシフトがディーゼルには標準装備されるので、積極的に使えばスポーティにも走ることが可能だ。
市街地でも低速トルクが大きいことから、扱いやすく、きびきび走らせることもできる。イメージとしてはDモードでの走行が省燃費走行で、パドルシフトでスポーツモードという使い分けになるのだろう。
デリカD:5の室内は大幅にキャビンフォワードを行い、スペースユーティリティを確保しているモデルだけに、ダッシュボードのすぐ下はエンジンルームの一部となっている。したがってエンジンノイズという点では、不利なデザインとなるがガソリンエンジンであれば、十分な静粛性が保てていた。しかし、ディーゼルには特有のノイズがあるため、ディーゼル搭載にあたり、制振、遮音、吸音対策はしっかりとる必要があるわけだ。実際、ボディの構造材に多くの吸音材の追加や制振材の追加も行われている。
その制振に関しては、ほとんど気になるレベルではなく、ディーゼル固有の振動は特に強くは感じなかった。またエンジン音では、普通のディーゼルレベルまで吸音できており、キャビンフォワードしたミニバンという不利な条件を考慮すれば、クラスレベルに納めているのは評価できる。ただし、ガソリン車なのか、ディーゼル車なのかわからないという最先端のディーゼルエンジンレベルまで静粛性が高いというわけではなく、一聴でディーゼルが搭載されていることが分かるという印象だ。
この搭載したディーゼルは欧州では実績のある4N14型で、それをさらに進化させている。2.2LのDOHC16バルブでコモンレール式DI-D(ダイレクト・インジェクション・ディーゼル)。これにVGターボが組み合わされ、出力は148ps(109kw)/3500rpm、360Nm/1500-2750pmとなっている。
主な特徴として、これまで三菱が採用してきた排気インジェクターを廃止し、DPF内に溜まった煤の燃焼もエンジン用インジェクターで処理することができるようになったエンジンだ。つまり排気ガスに含まれる有害物質や煤を再度燃焼させるため燃料を複数回噴射し排気ガスに流すことで煤、HCの削減とトラップ触媒に滞留したNOxも削減する。
排気インジェクターは4M41型ディーゼルエンジンを搭載するパジェロでも行われているが、4M41型の排気インジェクターはエンジン本体の外にあり、まさに排気後に再燃焼させていた。
他にも着目点として、14.9という低い圧縮比やエンジン内部のフリクション低減、燃焼音低減などの改良が行われ、アルミブロックを採用することができている。また、インジェクター流量の最適化では、ソレノイドタイプのインジェクターで4回から6回程度のマルチ噴射をし、燃焼の最適化を行っている。さらに、VGターボの過給圧はインテークマニホールド圧で150kpaで、1500rpmという低回転から最大トルクを発揮できる仕様になっている。
こうして燃焼の効率化が図られ、よりクリーンな排気に対して粒状性物質(PM)の除去にはDPF(ディーゼル・パティキュレイトフィルター)を使用し、NOx(窒素酸化物)には無害にするNOxトラップ触媒を採用している。
こうした改良を加えた4N14型ディーゼルを搭載するデリカD:5のNOx排出量0.08g/km、PM排出量0.005g/kmでポスト新長期規制に対応し、JC08モード燃費も13.6km/Lで、平成27年度燃費基準+20%を達成している。
ガソリン車と比較し、最大トルクで約60%向上し、燃費が約20%向上、CO2排出量は約7%低減できていいる。ちなみに、CO2はディーゼルが193g/kmでガソリンは207g/km、対ガソリン比-14gとなっている。
デリカD:5ディーゼルは、力強いディーゼルらしい走りと、省燃費、クリーンな環境性能を持ち、D:5に新たな選択肢が加わったことになる。
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