【三菱】新型MIVEC、4J10型はSOHC16バルブで連続可変リフトを採用

新MIVECの画像

2011年10月20日、三菱自動車はマイナーチェンジしたRVR、ギャラン・フォルティス、ギャラン・フォルティス・スポーツバックに、新開発の4気筒MIVECエンジンとアイドルストップ機能(三菱では「オートストップ&ゴー(AS&G)」と呼ぶ)を搭載した。三菱自動車では、これまでもヨーロッパ向けのMTモデルにはアイドルストップを装備していたが、日本仕様でCVT車に装備するのは初めてとなる。装備されているアイドルストップは、さまざまな場面で違和感なく対応できるように制御が熟成されている。

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スペックは同じでも中身はまったくの新開発

注目の新エンジンは、従来の4B10型から4J10型へと名称が変更された。新しい4J10型は、ボア・ストローク、排気量の1.8Lともこれまでの4B10型とまったく同じスペックとなっているが、次世代エンジンとして新たに開発されている。ちなみに4B10型は三菱、ダイムラークライスラー(当時)、ヒュンダイが共同開発したワールドエンジンだった。

従来の4B10型はDOHCの16バルブであったが、4J10型ではローラーロッカーアームを使用したSOHCに変更されている。そしてそのバルブ駆動系に新MIVEC(三菱の可変動弁システムの総称として使用される)を組み込み、吸気バルブの連続可変リフト、吸排気バルブの連続可変タイミング機構を一体化させている。

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この新MIVECは、吸気バルブのリフト量、開弁時間、開閉タイミングを、ひとつの機構で機械的に連動する構造としているので、同時かつ連続的に可変させることができ、理想的なバルブ制御を実現している。吸入空気量は従来のスロットルバルブではなく、吸気バルブの可変リフト制御によって調整するきわめてシンプルな構造にした点が画期的といえる。

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燃費は一気に12%〜14%も改善

もちろん今回の開発の主眼はエンジンの軽量化の徹底と、燃費や排ガス性能の向上にある。その結果として、ピークパワーや最大トルクなどの出力特性は従来の4B10型と同じになったが、10・15モード燃費は15.2km/Lから17.0km/Lに、JC08モード燃費では13.8km/Lから15.8km/Lにと、12%〜14%も改善されている。

ポンピング損失を大幅に低減できる吸気バルブの連続可変リフトシステムは、BMWのバルブトロニック、トヨタのバルブマチック、日産のVVEL、フィアットグループのマルチエアなどで実現されているが、これらはすべてDOHCで、連続可変リフトシステム以外に吸排気のカムシャフトに連続可変バルブタイミングシステムも装備している。つまり機構的にはふたつのシステムが必要で、それらを協調制御する必要があった。

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しかしながら今回の4J10型はSOHC16バルブを採用した。通常のカムの上にスイングカムシャフトとスイングカム、センターロッカーアームを追加。センターロッカーアームの作動角度をモーターで変化させることで吸気バルブの連続可変リフトを実現するとともに、吸排気バルブの開閉タイミングも同時に変化させて、吸気バルブのリフト量が小さくなるにつれて吸排気バルブの開き/閉じともに早められるのがポイントだ。

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これにより、低負荷域では早閉じのミラーサイクルとして機能し、ポンピング損失を大幅に減らすようにしている。一方で、中・高負荷時には吸気遅閉じ、排気遅開きとすることでポンピング損失の抑制、爆発エネルギーの回収率向上、オーバーラップの拡大による内部EGR効果の増大を行っている。

従来の4B10型は外部EGRシステムを備えていたが、新しい4J10型では廃止しているのはこのためだ。また4J10型はバルブリフトとバルブタイミングの可変をモーターで行うため、油圧式の可変バルブタイミング機構より応答速度が向上している点も見逃せない。

 

従来型と同じ高さで搭載にも問題なし

さらに、このシステムはSOHCの動弁機構に可変機構を組み込むことで、軽量コンパクトにまとめられるメリットもある。従来のDOHCエンジンと同じ高さに抑えられているため、マイナーチェンジでも新エンジンを問題なく搭載できているわけだ。

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この新エンジンは吸気バルブの連続可変システムにより吸気量をコントロールするが、スロットルバルブは残されている。このスロットルは通常はフルオープン状態で、アイドリング時にはスロットルを閉じて吸気気圧を下げ冷間時の燃料の気化を促進したり、ブレーキ用の負圧、ブローバイガスを吸い込むための負圧を作るなどの目的でのみ作動する。この点では他の可変バルブリフトエンジンと同様である。

新MIVECの画像コンプレッションは10.5から10.7に

新型の燃焼室は吸気バルブが低リフト時、つまり低負荷/低速時には吸気流速を高めてタンブル流(縦渦)を強めるために、燃焼室端部側にシュラウド形状を設けて気流を阻止し、燃焼室の中央側に吸気の気流を集中させるようにエアガイド形状を設置している。つまり、これにより吸気バルブの低リフト時の吸気流速を高めているのだ。このため、低負荷/低速時でも吸気流の速度が高く、燃焼速度を高く保つことができるようになっているのも特筆できる。そして圧縮比は従来の10.5をさらに高めて、10.7となっている。

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このように新しい4J10型は、燃費や排ガス性能を重視した新世代エンジンと位置付けられ、今後は標準エンジンとして採用を拡大していくことは必至だ。なおこのエンジンの生産は、三菱自動車パワートレイン製作所滋賀工場で行われている。

 

AS&Gは違和感のない発進性能を実現

アイドルストップ機能のAS&Gは、CVT搭載車向けに新たに開発されたもので、エンジン、CVT、アクティブスタビリティコントロール(ASC)、エアコンを制御するためにコントロールユニット(AS&G ECU)を追加して、車両を統合制御している。また、耐久性が向上した12Vバッテリーや、DC/DCコンバーター(エンジン再始動時のオーディオの音切れやカーナビのリセット発生を防ぐ)を採用している。

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新型MIVECエンジンと組み合わせることでエンジンを滑らかに再始動し、従来車から乗り換えても違和感のない発進性能を実現したという。またエンジンが停止状態から再始動し、タイヤへ動力が伝達されるまでの間、車両の統合制御によってブレーキ力を保持し、坂道などでの車両のずり下がりを防止する機能も持っている。 このため、強化型のスターターやエンジンストップ時でもCVTの油圧を保持するため、電動油圧ポンプを装備している。

 

文:編集部 松本晴比古

 

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