新型マツダ・デミオ 「ハンドリングにはもっとこだわりが欲しい」 レポート:桂伸一

マニアック評価vol295

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プロトタイプはクローズドスペースだったが、ようやく公道で新型デミオに乗った

コンパクトクラス注目のマツダ・新型デミオに乗った。箱根の「いつものコース」での試乗だったため、特性を良くつかむことができた。

というのも、以前プロトタイプに乗ったのは伊豆のサイクルスポーツセンターで、アップダウンのある占有に貸し切られたコース。そこでは、スカイアクティブD 1.5Lの高トルクで坂道を力強く登る特性に惹かれたのだが、操縦性は転舵とともにフロントからやたらにスキール音を発生するな、とそこに意識がいったことを覚えている。

それはサイクルスポーツセンターの路面と15インチタイヤの相性の問題か? と思った。16インチは同じくスキール音を発生するが、程度は低い。平たく言えばアンダーステア傾向なのだが、最後まで路面とタイヤの問題か!? と自問した。

量産モデルではどうなのか?

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試乗したのはディーゼル車のATと6速MT。グリルに赤いラインが入るのがディーゼル

今回試乗したのは1.5DのATと6速MT。まずはATから。トルクの最大値がMTよりも高いが、走りに現れるのか?というと、正直わからない。MTは自分の意思でクラッチミートする回転が選べるため、遅れ感が少ない。一方、ATはゼロスタートの一瞬にモタツキはあるが、動き出せばターボトルクが後追いで強力に盛り上がる。では、その最大トルク値の違いを感じられるか? を無理矢理探せば「そこ」か、と一応の答えにたどり着く。

ディーゼルのトルクで加速した勢いを、6ATがスムーズに転がしていく。直進するだけなら、余裕の高トルクで、アクセルを少し踏むだけでモリモリと沸き上がる「ディーゼル・ターボトルク」で飛ぶような加速を展開するその勢いが、じつに爽快で楽しい。

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ところが、ステアリングを切り込むと、スキール音の度合は感覚1/5程度に抑えられていたが、それでも転舵した前輪が素直に応答を示さない。直進し続けるクルマに舵角を与えても姿勢の反応が鈍い、とそんな印象だ。

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これでは曲がらない、いや曲がりにくいので、コーナー進入の手前でアクセルOFF。荷重を積極的に前輪に加えてから転舵すれば、まあそれなりに曲がる。それでも期待値に対してはまだまだだ。ブレーキによる荷重移動で前輪に荷重を乗せた状態まで作り、それでようやくノーズダイブしたかな? 程度の動きで曲がる。

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ともかくフロントサスペンションのストローク感を感じさせない。ステア操作で欧州車のようにキャスターアクションを感じさせ、身をねじりながら曲がるフィールは皆無。突っ張った証拠は波状路を通過した際、前輪に入った入力がスムーズにストローク吸収されないため、反動で後輪に移りシーソーのように飛びまくる。箱根の勝手知ったる路面グリップでこれだ。

マニュアル車ではどうだろう
6MTに乗り換え、同じコースを行く意味はないので東名高速へ。高速で空力の影響を受けると少しは違うか? と向かったが、良路だけにまだいいが、やはり基本的に前輪は路面に対して突っ張るサスペンションだ。

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ペダル形状や操作感など、人間工学を含む細かい操作性にこだわるところに最近のマツダの進化を感じていた者として、例えば単調なテンションのクラッチペダルのフィールにチューニングという言葉は使えない。アクセルもストロークが短く、ストローク変化もない味気ない足応えだ。

多くが手放し大絶賛の新型デミオだが、個人的には完成が100だとすると、70と評価する。

マツダが推奨する統一感がまるで得られていないからだ。スカイアクティブを発表し、CX-5から始まったいい流れがあるが、まだ期待値に届いていない。しかし、発売後も確実に進化させてきた実績のあるマツダだけに、この流れに引き戻すことを期待する。

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マツダ公式サイト

COTY
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