レクサスは2023年6月5日、イタリア・ミラノで行なわれたメディア向けイベントで、ブランド初となるBセグメントのクロスオーバーSUV「LBX」(プロトタイプ)を公開した。
レクサスはこれまでCセグメントのUX、C+セグメントのNXをラインアップしていたが、今回発表されたLBXは、最もコンパクトなBセグメントのクロスオーバーSUVだ。
新型LBXは、「これまでの高級車の概念を変える、コンパクトサイズながらも走りやデザインも上質で、サイズのヒエラルキーを超えたクルマをつくりたい」というコンセプトのもと「本物を知る人が、素の自分に戻り気負いなく乗れるクルマ」を目指したという。
なお、車名のLBXは「Lexus Breakthrough X(cross)-over」の頭文字となっている。
■ プラットフォームとボディ
Bセグメント・サイズのボディのためTNGA-Bを改良したレクサス版TNGA-Bを採用し、基本素性と最新のハイブリッド技術を投入。ドライバーとクルマが一体となり、いつまでも運転していたいと思わせる操縦性と快適性を目指している。
パッケージ的な特徴のひとつに、SUVの常識よりドライバーの着座位置を下げ、重心高と全高を下げつつ十分な室内空間を確保していることだ。
ボディサイズは、全長4190mm、全幅1825mm、全高1560mm、ホイールベース2580mm。全幅はクラスを超えるワイド・ボディで、全高はSUVとしては異例に低められ、実質的にはハッチバックということもできる。ホイールベースは、ヤリスとアクアの中間のサイズである。
従来のTNGA-Bよりトレッドを大幅に拡大することで、ワイド&ローのボディフォルムを実現。また最近のトヨタのトレンドである大径タイヤ(17インチ、18インチ)を採用し、同時に取り回しの良さも追求し、最小回転半径5.2mとなっている。
ボディ骨格の接合にはスポット溶接の短ピッチ打点技術や、構用接着剤の採用を拡大。接合剛性を高めつつ、フロアに採用している構造用接着材のうち、乗員に近い部分は高減衰接着剤を採用することでフロア振動、ロードノイズのレベルを低減、操縦安定性と乗り心地の向上やNV性能(ノイズ/バイブレーション)の低減を目指している。
プラットフォームやボディは接合剛性だけではなく、運動性能やハンドリング性能の向上に関与する局部剛性アップを行ない、特にシャシー性能の向上を図っている。例えばフロント・サスタワー間を繋ぐバルクヘッド上部のカウル構造を見直し、着力点剛性を向上。
またインスツルメントパネル内部構造を補強することでステアリングコラム剛性や内部レインフォース剛性を高め、ステアリングで感じる振動を低減しつつ、高い操舵応答性を実現するなどヨーロッパ流のボディ・チューニングを採用しているのだ。
その他に、ルーフパネルの薄板化、ボンネットのアルミ化、Cピラーに2.0GPa(ギガパスカル)級、フロント・バンパーレインフォースに1.8GPa級のホットスタンプ(熱間成形の超高張力鋼板)材を採用することで、軽量化と高剛性、高い安全性能を実現している。
■ シャシー
サスペンションは、フロントのサスペンション・ジオメトリーを刷新した新開発のマクファーソンストラット式を採用。ヨーロッパ車のようにキャスター角を大きくすることで高い直進安定性を確保し、同時にロール(バンプ・イン)時のトーイン変化量を抑えアンダーステアの増大を抑制している。
また、フロントのハブキャリアには高剛性なアルミ鍛造製を採用することで、ばね下を軽量化している。細部では新開発の3点締結の入力分離型のストラット・アッパーサポートを採用することで、リニアな操舵応答性と振動入力低減を両立させている。
リヤでは、FFモデルは軽量高剛性な新世代のトーションビーム式サスペンション、4WDモデルはリヤモーターを搭載するためトレーリングアーム式2リンク・ダブルウィッシュボーンを採用。
新開発のダンパーは、動き出しから素早く反応するピストンを採用することで、極微低速の減衰力を確保し、操縦性と乗り心地を高次元で両立させている。
またタイヤは新型クラウンやプリウスなどと同様のコンセプトで18インチ、17インチの大径タイヤとし、タイヤ接地面を縦長にすることでコーナリング時のコントロール性を高めている。
ブレーキは、AHB-G(アドヴィックス回生協調ブレーキシステム)を採用。スムーズなブレーキフィールとペダル操作の質感向上を追求し、同時にリニアな制動感と高い接地感を実現するブレーキ車両姿勢制御(ピッチ制御)を盛り込んでいる。
またレクサスらしく、徹底したエンジンノイズや振動を低減させ、静粛性能を高めている。エンジンマウントの最適配置により起動時のショックを低減し、エンジン本体にはバランスシャフトを採用。低回転時のフロア振動を抑制している。
吸気音低減などエンジン周りの源流対策も実施。排気系ではエンジンからの振動伝達を低減するフレキシブルパイプを採用し、メインマフラー容量を拡大し排気音を低減している。
バルクヘッド部は吸音層と遮音層の2層式ダッシュインナーサイレンサーにさらに吸音層を追加した3層構造としている。
またルーフパネルのマスチックシーラーの一部に高減衰タイプを採用することで、これまでのような重量のある制振材を使用することなく効率的に振動を抑え、走行時や雨天時の車内静粛性を向上させている。
■ パワートレイン
新型LBXは、ヤリス、アクアと同様にダイナミックフォース・シリーズの1.5L直列3気筒のアトキンソンサイクル・エンジン(M15A-FXE)とモーター出力を向上した軽量コンパクトな最新ハイブリッド・システム、そしてアクアと同様の高い電池出力を持つバイポーラ型ニッケル水素電池を組み合わせて搭載している。
ハイブリッドシステムは、アクセル操作に対してモーター・アシストを大幅に強化し、さらに加速中のエンジン回転数と車速、エンジン音を連動させることで伸びのあるリニアな加速感を生み出している。
同時に、走行シーンにより加減速を最適化する駆動力制御を採用。登降坂時には路面の勾配変化を読み取り、加速および減速トルクをアシストすることでアクセルやブレーキ操作回数を低減させる。
ワインディング走行などではGを検知してアクセル・オフ時の減速アシストを増加。エンジン待機回転数を維持し再加速をアシストすることでドライバーの意思通りの走りのリズムが生み出されるようになっている。
■ デザイン
デザインのコンセプトを「プレミアム・カジュアル(Premium Casual)」とし、コンパクトなボディサイズながら強い存在感と上質さを両立させている。エクステリアでは、存在感のあるプロポーションを実現。
また、レクサスの新たなフロントフェイス「ユニファイドスピンドル」を採用している。この「ユニファイドスピンドル」のフロントマスクは「毅然とした表情」を表し、今後のレクサスのデザイン手法として踏襲されるという。
インテリアは、コンパクト・クラスながらより上級クラスと同等レベルのプレミアムなディテールにこだわり、リラックスしてクルマとの一体感を楽しめる室内空間を目指している。
インスツルメントパネルはシンプルな水平基調で、開けた視界を確保。また、メーターフードからドアトリムまでつながる造形テーマにより、空間の広がりとコンパクトさを両立。メーターパネル部は12.3インチの大型フル液晶を採用している。
9.8インチのタッチ式センターディスプレイからコンソールにかけては、高さを抑え傾斜させることで室内と一体感を増したディスプレイと、操作しやすい高さに配置した操作系レイアウトになっている。また、運転時に体を支えるニーサポートは表皮巻きとしている。
室内のデザインや素材の美しさを強調する64色から選択できる室内イルミネーション(アンビエントライト)の採用もプレミアム・クラスらしい装備だ。
そしてプレミアム・セグメントであることを強調するため、新しいグレード体系を5種類展開している。
・「COOL」:コンセプト「Premium Casual」を最も象徴する世界観。本革とウルトラスウェードのコントラストと、遊び心あるステッチ&刺繍で、シンプルで洗練されたモダンな空間としている。
・「RELAX」:落ち着きと華やかさを両立するラグジュアリーな世界観。セミアニリン本革による上質な質感に、サドルタンカラーと手の込んだ刺繍を組み合わせ、車格を超えたプレミアムな空間としている。
・「ELEGANT」:クリーンで温かみを感じる次世代モダンインテリア空間を表現。さりげないサテン縫いの刺繍で空間に味わい深い表情を引き立たせた室内となっている。
・「ACTIVE」:ブラック合皮に高彩度レッドの刺繍とステッチを組み合わせ、スポーティさと上品な遊び心を付与した、アクティブな空間としている。
・「URBAN」:ブラックを基調に、ダークグレーのファブリックをコーディネート。シンプルですっきりとしたクールな印象であり、都会的かつスタイリッシュな空間としている。
そして新型LBXの大きな特長として、オーナーが自分好みのクルマに仕上げることができるオーダーメイドシステム「ビスポーク・ビルド(Bespoke Build)」が設定されているのだ。
このビスポーク・ビルドでは内装色、シート素材、刺繍パターンなどを好みで選択でき、約33万通りの組み合わせから自分だけの1台を作りあげることができるオーダーメイドシステムだ。
運転支援システムは、最新のLexus Safety System+を搭載し、さらに通信モジュールを装備。コネクテッド・サービス、通信によるソフトウエア・アップデートも可能になっている。
なお、今回発表された新型LBXはプロトタイプとされているが、量産モデルもほぼこのままの状態と推測され、2024年モデルとして日本での発売は2023年秋以降の予定になっている。