レクサスGS F試乗記 サーキットが大好物のプレミアムセダン

マニアック評価vol397

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「ぜひサーキットを走って!」というGS F

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レクサスのプレミアムセダン「GS」にスポーツモデル「F」がラインアップに加わった。レクサスのFとは日常からサーキットまで「走りを楽しみたいすべてのドライバーが笑顔になれるスポーツカー」で、これはFモデルの共通コンセプトとなっている。高級セダンでもサーキット走行が楽しめる「GS F」にF開発の総本山、富士スピードウエイで試乗してきた。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

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レクサスでは、サーキットを「公道の延長」であり「高性能を最も安全に楽しめるところ」と位置づけ、Fをフルアクセルで走らせることができる場所としている。したがって、運転スキルの高い人だけのモデルではなく、いろんな人がいろんな楽しみ方ができるように「速さ」「信頼性」「乗りやすさ」をキーワードに開発されている。

レクサスではFのオーナーになったら、サーキット走行することをお勧めしており高性能スポーツカーを走らせる歓びを体験することを推奨している。もちろん、今回の高級セダンGSでもFの名前を持つモデルだけにサーキットで鍛えた性能を満喫してほしいというのが狙いだ。

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GS Fはセダンの持つユーティリティをそのままに、走りの性能をサーキットで楽しめるレベルに引き上げるため、ホームコースである富士スピードウエイをはじめ、ニュルブルクリンクの北コースを徹底的に走り込み、チューニングを行なっている。

少しGS Fのチューニングされた部分を振り返ると、ボディはGSと同じボディでレーザー溶接やスポット打点増し打ち、構造用接着剤、レーザースクリューウェルディングなど、最新の技術で製造されているのは言うまでもない。また、製造工場も他のGSモデルと同じラインで生産されている。ただ、異なる部分としてボディ下面にF専用のブレース補強があり、フロントはサブフレームとボディを接合する部位にA字型のブレースが付く。また、リヤにもブレースバーが配置されている。

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サスペンションも専用のチューニングが行なわれ、これまでのFと同様に、SACHS社製(ザックス)のダンパーとミシュランの専用タイヤを装着する。ブレーキはフロントにアルミ対向6ピストン、リヤもアルミ対向4ピストンのモノブロックキャリパーを採用し、ブレーキパッドも専用の高摩擦パッドにするこだわりがある。

GS Fのハイライト的技術として、TVDという機械式のトルクベクタリング機能がある。後輪左右の駆動力を最適に制御し、タイヤのグリップを最大限に引き出し意のままにコーナリングを楽しむことができる、というものだ。このTVDは作動領域を電子制御され、STANDARD/SLALOM/CIRCUITの3モードがある。

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このデフ制御に加え、ドライブモードも4種類ある。ECO、NORMAL、SPORTS、SPORTS+で、トラクションコントロールと姿勢制御のVSCのオンオフが可能なスポーツモード付VDIMが(Vehcle Dynamics Image Navigater)組み合わされるため、制御のセレクトが自在にセッティング可能だ。

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搭載するエンジンはV8型5.0LのNA、自然吸気の2UR-GS型だ。これにアイシンAW製8速ATと組み合わせたパワーユニットで、これまでと同様、トヨタ製のエンジンブロックにヤマハ製のヘッドを組み、D-4Sの直噴/マニホールド噴射に吸排気可変バルブタイミング機構を持つ。また、低負荷時には電動吸気可変バルブタイミング機構を作動させアトキンソンサイクル運転もするため、一定速度での巡行運転で最大4.2L車相当の省燃費性能を示すという。

また、組み上がったエンジンの回転バランスを取るという手の込みようで、エンジンは滑らかに、そして軽快に回る。サウンドのチューニングも今回行なわれているのでプレミアムセダンでありながら、スポーツカーであることを再認識する。では早速試乗レポートしよう。

◆インプレッション

さて、試乗は富士スピードウエイをベースに一般道とサーキットでの試乗がプログラムされている。最初に一般道での試乗だが、もともと高級セダンであり後席の居住性や乗り心地も重視されているだけに、スポーツセダンとしてどこまで攻めた仕様になっているのか?という着目点になる。

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ちなみにダンパーは可変タイプではない。ドライブモードはノーマルで走行。全体にボディの剛性感があり、締まった印象でスポーツモデルらしい乗り心地だ。ただ、後席はそれほど硬さが気にならないレベルだった。40km/h程度のいわゆる常用域では細かなピッチングが出るが、これは高速域での安定性を考えれば当然というレベルだ。

車速が高くなればなるほど安定性や乗り心地もよくなり、サーキット走行を視野に入れた仕上がりであることを感じる。ライバルとしてはBMWのM5やAMGのEクラスなどになるのだろうが、開発主査の矢口幸彦氏によれば、ベンチマークにしているモデルは存在しないという。あくまでも冒頭触れたようにレクサスのFに共通するコンセプトで開発されているという。

試乗コースを富士スピードウエイ本コースに移す。モードはSPORT+を選択しCIRCUITを選択。VSCはオンのまま、Dモードでコースインする。レクサスの説明では「Dモードのままでもニュルブルクリンクを楽しく走行できます!」という説明だ。

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実際、Dレンジのままでもエンジンはレッドゾーンの7300rpmまでキッチリ回る。ブレーキを踏めば自動でブリピングしながらダウンシフトする。まさにオートマチック。そのまま富士のストレートを全開で走り抜けるとスピードメーターは245㎞/h付近を表示する。

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セッティングを今度はMモードにする。変速速度はパドルシフトを使うと0.1秒の速さでシフトアップ、ダウンする。そして、VSCをオフにする。短く押した場合は完全解除ではなく制御介入のタイミングが遅くなる設定だ。さっそく1コーナーの立ち上がりでリヤがスライドをする。

100Rは難しく速度とスロットルワーク、ライン取りが複雑だ。それでも、トルクベクタリング機構が働きスロットルを抜くとインを向く挙動があり、スロットルコントロールで走り抜ける。出口付近ではアクセルを踏み込み過ぎるとアウトにはみ出そうになるが、ステアしても、また、スロットルを抜いてもインに向けられる。当たり前のことだが、コントローラブルであることを言いたい。

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ヘアピンではブレーキの剛性感が高く、安心感が高い。下り坂でのハードブレーキのため沈み込むような印象ではないが、ABSの制御も程よくグリップ感を足裏で感じながら減速できる。クリップを抜けフル加速でシフトアップしながら高速の300Rを抜け、ダンロップコーナーでフルブレーキング。

上り坂のタイトセクションを超えストレートへ。今度は最高速が255㎞/hまで伸びる。パナソニック看板より先まで踏み込むことも可能だが、自分のスキルを考えマージンを取るとこれが限界。レーシングドライバーであれば、270km/h付近まで出るのかもしれない。

次の周回はTVDの作動領域をスラロームに変更してみる。よりトルクベクタリングのサポートが出るセッティングだというので試した。100Rではその違いが如実で、スロットルをオフにした時の回頭性が強い。インに向きやすくややオーバースピードでのコーナー進入でもカバーできるほど、回頭性が上がる。難しい100Rで積極的に走れるようになるのは驚きだ。

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そんな違いを楽しみながらダンロップコーナーでブレーキングして次の右コーナーに飛び込む。鋭角コーナーを右にクリアし、すぐに左へ切り返しスロットルを開ける。すると左回りでスピンした。再スタートし逆バンクの右コーナーから左コーナーへと切り返すプリウスコーナーでは、少し違和感があった。直前のスピンと同じようにステア方向、というか意図する方向へのヨーが感じにくいのだ。

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勝手な想像だが、右、左と切り返すときTVDが最初右旋回をサポートする。はっきりわからないが外側タイヤにトルクがかかり回頭性を上げているのだろう。その瞬間ステアは左に切られスロットルも少し開ける。するとこれまで外側だったタイヤがイン側になるので、ベクタリングのサポートとしては急激にトルクを下げる必要がある。このタイミングが遅れるとヨーを感じにくく、またラフな操舵やスロットルワークをするとスピンするという結果になるのではないだろうか。いやいや、単にドライビングスキルが低いだけという気もしなくもないが・・・。

やはり、サーキットではCIRCUITモードを選択するのが正しいということであり、SLALOMはジムカーナ的なスポーツ走行に向けた制御をしている、ということなのだろう。それにしても、GS Fの運動性能の高さのレベルは高く、欧州プレミアムモデルに引けをとることはないものだということがわかる試乗だった。


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