2013年5月16日、レクサスは「IS350」、「IS250」のフルモデルチェンジと、新たにハイブリッドモデル「IS300h」を追加設定し、同日から発売した。
新型ISシリーズの開発コンセプトは、グローバルに挑戦できるエモーショナル、アグレッシブなISに生まれ変わることであり、その核となるのは新たなアグレッシブなデザインの採用と真のドライビングプレジャーの追求だったという。従来型のISシリーズは、デザイン的におとなしく無国籍なイメージであったことから、今回のモデルチェンジでは思い切り大きく方向転換し、強い個性や存在感を主張する攻撃的なフォルムへと一変させている。こうした大幅なデザイン路線の変更は、スポーツ性能や強い個性を重視する新レクサスブランドに共通するメッセージといえよう。
開発体制では、新たにレクサス車全体の商品性能、テイストを共通化するための商品実験部署も再構築され、レクサスブランドの新たな再定義を行おうとする社内の意気込みが伝わってくる。その背景には、これまでのレクサス・オーナー層の高年齢化に対する危機感やグローバルでの存在感を一段と高める狙いもありそうだ。
また、新型ISシリーズを開発するにあたっては、スポーティな走り、ドライビングプレジャーを追求するために、BMW 3シリーズを開発のベンチマークとし、世界に通用する質の高い走りを追求したという。またレクサスISはもうひとつの武器として、ハイブリッドモデル「IS300h」を新たに投入している。ハイブリッドモデルは、JC08モードで23.2km/Lという燃費と先進性をアピールするモデルだ。
エクステリア・デザインは、新デザイン・アイコンのスピンドルグリル、ヘッドランプユニットから独立させたL字型のクリアランスランプを採用したフロントマスク、シャープなプレスラインを採り入れ、前輪の後方からリヤエンドまで跳ね上がる形状のラインで個性を出す。またリヤホイールアーチの内側は「ヘミング工法(爪折り)」を採用することで、タイヤを従来より張り出し、踏ん張り感を強調。なお、ややラグジュアリー指向のバージョンLとスポーツ仕様のF SPORTではフロントグリルなどデザインテイストを差別化している。
インテリアは水平基調のインストルメントパネルを採用したオーソドックスなデザインを採用している。新型ISのプラットフォームは新型「GS」と共通化され、ホイールベースを延長したことやシートデザインの改良により、後席の膝スペースを従来型比で85mm拡大し、主にリヤ席の快適性を向上させている。その一方で、フロントシートの着座姿勢はスポーティさを狙ってより低められている。
搭載されるエンジンはハイブリッドを入れて3種類。3.5L・V6の2GR-FSE(D4-S)型は8速ATとの組み合わせ。このエンジンは314ps/380Nmを発生する。ベース仕様として2.5L・V6の4GR-FSEも設定される。215ps/260Nmのこのエンジンは6速ATとの組み合わせている。いずれのエンジンもアイドリングストップは採用されていない。
またハイブリッドモデルは、2.5L・4気筒、アトキンソンサイクルの2AR-FSE型(D4-S)エンジンを採用。このエンジン、ハイブリッドシステムは先に登場したクラウン・ハイブリッドと共通だ。エンジン出力は178ps/221Nm、モーター出力は105kW/300Nmで、システム出力は220psとなる。
なお、300hのニッケル水素式バッテリーはリヤのトランクルーム下側に格納され、トランクスペースはガソリンエンジン車と同等とし、さらにリヤシートバックは6:4分割可倒式とするなどハイブリッドモデルの欠点を解消している。
シャシーは、フロントがハイマウント型ダブルウィッシュボーン、リヤがマルチリンク式。従来型のセッティングと比べフロントのスタビライザーを大径化するなどフロントのロール剛性を高めているのが特徴だ。
F SPORTは専用チューニングしたスポーツ仕様で、ダンパーは日立オートモーティブ製の電子制御・可変式。さらに3.5LモデルのF SPORTはLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリング)として可変ステアリングギヤ、後輪操舵、電動パワーステアを統合制御するシステムを採用する。ただし、ISのLDHはGS用とは異なり後輪操舵角を大幅に小さくし、ブッシュのたわみ量を補正する範囲となっている。もちろんF SPORTの仕様はスポーティなドライビング感覚を重視し、標準グレードとバージョンLは常用域での快適性を重視するという違いがある。
操舵感のチューニングも重視され、JTEKT製のラック同軸式の電動パワーステアはボール溝を従来より少なくし、フリクションを下げ、剛性を高めるなどの改良を加えている。
ボディは最新のレクサス車と同様に、ドア周り開口部の接合部にレーザースクリュー溶接によるスポット打点の増加、構造用接着剤の採用、センターピラー、サイドメンバーの一部にホットスタンプ材を採用するなど剛性を高めるている。
ドライバー支援システム、安全システムは、警報音とディスプレイ表示でドライバーに警告するレーンディパーチャーアラート(LDA)をレクサスとして初採用した他、走行中に斜め後方を走行する車両を準ミリ波レーダーで検知し、ドライバーに注意喚起するブラインドスポットモニター(BSM)、万一の事故の際、歩行者頭部への衝撃を緩和するポップアップフードを全車標準装備する。またプリクラッシュブレーキアシスト、プリクラッシュブレーキに改良し実際に発生している追突事故の90%以上の相対速度域に対応するよう減速性能を向上させた「プリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー方式)」をオプション設定している。