【ホンダ】使いやすいステーションワゴン フィットシャトル 試乗動画 by 津々見友彦

マニアック評価vol53

2011年6月16日に追加されたフィットのワゴンバージョンが、「フィットシャトル」だ。5ナンバーのコンパクトなノーマル“フィット”とまったく同じホイルベースながら、ボディを510mmストレッチ(延長)し、荷室部分をしっかりと広げたのが最大の特徴と言えるだろう。

雰囲気を変えた秘密はノーズに

一見すると見慣れたフィットのイメージだが、なにか雰囲気が違う。そう、このシャトルの方が重厚で大人びており、かっこいいのだ。スッと伸びたノーズやグラマラスなフェンダーなど、魅力的なデザインと言える。

その秘密はなんとUS仕様のノーズが与えられたことで、ダイナミックなエクステリアに進化させている。つまりボディ後部が延長されただけでなく、フロントのオーバーハングも180mm拡大しているのだが、そのバランスがすこぶる良い。まるで、最初からこのデザインがあったかのように思えるほどだ。さすがと、デザイナーの力量が偲ばれる。

さて、この新型フィットシャトルのバリエーションはノーマルフィット同様の2種類。1.5Lの“ガソリンエンジン”仕様と1.3Lエンジン+IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)の“ハイブリッド”だ。 まずは目玉の燃費30km/L(10・15モード)を誇るハイブリッドに試乗した。

コクピットはフィット譲り

↑ドライバーから見たインパネの景色はフィットと変わらない

インテリアのイメージは基本的に変わりなくフィットそのもの。ドライビングシートに座ると開けたコクピットは、前方視界もすこぶる良好だ。女性でもこれなら運転しやすいに違いない。なにしろボディは延長されたものの、ホイルベースも変わらず、また車幅も同じ。運転する違和感はまったくない。

フロントの2座はたっぷり感のある大型のもの。すっぽりと座りこめ、このクラスと思えない居心地の良さだ。リヤシートにも不満はない。膝のゆとりのニースペースは私の場合、20mmほどゆとり感があり、不満のないスペース。このあたりはノーマルフィットと同様の広さと言える。

↑運転席と助手席についてもフィットと基本的に同じだ

ただ、バックレストはリクライニングできず、固定となったが、ほどよく寝かされていて、自然な姿勢で座ることができる。80mmプラスという室内長のゆとりが、ここにも活かされている。

ゆとりのカーゴスペース

リヤハッチを開くとフィットシャトル自慢の荷室が広がる。前後に330mm延長されたカーゴスペースには大きなゆとりを感じる。ノーマルフィットが341L(床上のみ)であったのに対し、496Lと30%弱も容積が広がっている。ガソリンエンジン仕様ではさらに94L、ハイブリッド仕様でも21Lのラゲッジルームアンダーボックスが備わり、ユーティリティ性は抜群に向上している。

この荷室スペースにはゴルフバッグの4個搭載も可能。4人でゴルフが楽しめるのだ。また掃き出し位置も540?と低いので、重い荷物などの出し入れもしやすい。

↑ワゴンとして使える十分な広さを備えている

さらに女性にも喜ばれるのが、後席の折りたたみ機能。簡単にワンアクションで前に倒れ、荷室が181cmも奥行きが拡大してくれるのだ。さらにリヤシート座面を背もたれ側に跳ね上げると、後席床下に燃料タンクのないフィットお得意の背の高い空間が出現。高さ1.29mもの長尺物もリヤシート部分に立てて運べる伝統芸も活きている。

快適な居住性を持つ

スターターノブを捻ると軽快にエンジンは目覚める。ノーマルフィットのハイブリッドと同じ手順だ。アイドリングもささやくような雰囲気。微かにステアリングホイールに4気筒のバイブレーションのようなものも感じるが、取り立てて不満はない。

走りだして、「アッ」と思うのは、乗り心地の良さだ。185/60R15サイズのミシュラン製、エナージーセイバーのエコタイヤを履くが、このタイヤも乗り心地をマイルドにしてくれている。荒れた路面やマンホールの通過でも心地よくいなしてくれる。もちろん、タイヤのみならずシャシー剛性の向上や、ダンパーなどのサスチューニングも功を奏しているのは言うまでもない。

また、静粛性も高い。エンジンを回し気味にしてフルスロットル走行でもエンジンノイズは抑えられ、その点でもストレスを感じない。快適な居住性を持つワゴンにへと成長している。

低速トルクの高いハイブリッド

ハイブリッドのパワートレインはフィットとまったく同じだ。1.3LSOHC4気筒のエンジンパワー&トルクは65kw(88ps)/5800rpmと121Nm(12.3kgm)/4500rpm。これにプラスして、10kw(14ps)/1500rpmと78Nm(8.0kgm)/1000rpmのモーターの二人三脚だ。

↑ハイブリッドのエンジンルーム

CVTをDレンジで発進させるとアクセルぺダルにダイレクトに反応し、スムーズに走りだす。さすがにハイブリッドでは低速からの発進ではモータートルクの威力で、力強い走りが可能。1.5Lのガソリン仕様に比較しても、低速のトルク感は高めだ。

さらにエンジン回転が高まると、今度はエンジンがトルクを出し、5000rpm以上になるとパワーがグイ、グイと伸び、低速から高速まで気持ち良く加速が伸びる動力性能の持ち主だ。

一方のガソリンエンジンのみの1.5L車はSOHC4バルブ4気筒 で、スペックは88kw(120kgm)/6600rpmと145Nm(14.8kgm)/4800rpm。最高出力は明らかにこちらが大きいものの、発進直後のトルクはやはりハイブリッドの方が力強い。0〜400m発進加速の雰囲気はハイブリッドも1.5L車もほぼ同等。タイム的には18秒台という感じで、軽快なパフォーマンスを十分に持っている。

驚異の燃費達成の舞台裏は…

驚くことに、ハイブリッドの10・15モード燃費は30km/Lとノーマルフィットのハイブリッドと変わらない。ロングボディとなり、60〜70kgも車重が増している。にもかかわらず燃費は変わらない。

↑ボディ延長と車重増を燃費性能に反映させなかったのは見事

実はエンジニアたちの血のにじむ努力のたまものだ。乾いたぞうきんを絞るように…。クランクシャフトのオイルシールやブレーキの引きずり、空力の向上などできめ細かく燃費を稼いでいるのだ。1.5Lエンジンにはピストンの改良も付加された。

ハイブリッドにはアイドリングストップ装備されている。赤信号で停止するとショックなしにエンジンは停止。ブレーキぺダルを緩めると途端にエンジンスタート。ストレスなく燃費が稼げ、得した気分になる。

この燃費を容易にするのがハイブリッド、ガソリンともに設定されいる『ECON』モードだ。このモードではアクセル操作がナマされ、他にエアコン、CVTもエコモードとなり、エコドライブを意識しなくても低燃費運転がされるもの。このモードでも市街地走行は動力性能的にはまずストレスがない。また、いざと言う時にフルスロットにすると、しっかりとパワーを出してくれて、危険回避が可能なのも心強い。

大人びたハンドリング

自慢の電動パワステの制御にはさらに磨きがかかり、まるで油圧パワステ並みのナチュラルな雰囲気だ。とくに素晴らしいのは応答のスムーズさだ。ステアリングレスポンスを多少ダル(大人しめ)にした結果、ハンドルを切りだしてから曲りこむ姿勢がギクシャクせず、綺麗に連続していて好感が持てる。シャシーとリヤサスの剛性アップも功を奏しており、スムーズなハンドリングフィールを実現している。
結論として、抜群のスタイリングの良さがフィットシャトルの最大の魅力だ。また乗り心地と静粛性にも優れており、成熟したハンドリングも褒められるべきポイント。フィットという素材の良さを活かし、荷室の拡大でさらに実用性を高めた、5ナンバーのコンパクトステーションワゴンだ。
文:津々見友彦
ホンダ公式Web

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