ザ・ビートルは2016年9月にマイナーチェンジを行ない、エクステリアの変更をはじめ安全システムやコネクティビティの充実を図った変更をした。その後11月9日には1.4Lターボエンジンを搭載する「The Beetle R-Line」がラインアップに加わったので、さっそく試乗してきた。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
フォルクスワーゲンのブランドアイコンでもあるザ・ビートルを4年ぶりに刷新し、従来の「The Beetle Base」「The Beetle Design」「The Beetle 2.0R-Line」のラインアップに1.4LターボのTSIを搭載したR-Lineを追加した。
主な変更はエクステリアではフロントとリヤのデザインを刷新し、スポーティさが増したデザインとなっている。「The Beetle Design」ではダッシュパッド、ドアトリム、ステアリングトリムをエクステリアカラーと同色にする変更をし、さらにインテリアではシートに、ブラックないしベージュの専用格子調ファブリックシートやオプション装備のレザーシートを組み合わせることができるようにした。トータルで最大32通りのカラーコンビネーションが可能になったのだ。
一方、新規にラインアップに加わった1.4LターボのR-Lineも他のモデルと同様に全8色のボディカラーが選択でき、エクステリアでは、2.0LのR-Lineと共通のデザインを採用している。フロントとリヤバンパー、デュアルエキゾーストパイプやリヤスポイラー、17インチアルミホイールなどを採用している。
ラインアップを整理すると1.2L、1.4L、2.0Lの3種類が揃いそれぞれの個性の違いをもったラインアップになった。
■試乗インプレッション
最初はベースグレードになる1.2Lターボに試乗。4気筒ターボは105ps/175Nm という出力に7速DSGを組み合わせている。価格はBase が234万9000円とDesignの269万9000円の2グレード。9月のマイナーチェンジではパワートレーンやシャシーに変更はなく、意匠変更と装備変更が中心だ。
その外観だが、見た目もビートルらしい、かわいらしく個性的なデザインであることは変わらないものの、スポーティさが加わった印象だ。乗ってみるとフォルクスワーゲンらしく、逆に外観ほど個性的な乗り味ではない。信頼性をどこからとなく漂わせつつ、穏やかな印象の試乗フィールだ。
試乗した場所は河口湖周辺で富士スバルラインが走るエリア。標高が高いせいもあって登り勾配ではパワー不足を感じるものの、特異なシチュエーションであることを考慮すれば、とりたてて不満をいうレベルではない。
乗り心地もよくボディの剛性感が得られるフォルクスワーゲンらしい印象で、ボディが勝った安心感のある走行フィールだ。こうした雰囲気からも信頼性につながるのかもしれない。エンジンノイズも静かで、ベストチョイスなモデルという印象だった。市街地や郊外をのんびり、ゆったり走るのが似合う。もちろん7速DSGの小気味いいシフトフィールでダウンシフトしてアクセルを踏み込めば、不満のない加速性能は発揮する。
インテリアは外観よりは男っぽい印象で、質実剛健なフォルクスワーゲン車らしいと感じる。しかし、デザインには注力しているモデルだけにダッシュボードなどは樹脂であっても、塗装することで鉄板のように敢えて見せている工夫がある。今回のマイナーチェンジでボディと同色のトリム、ハンドルなどおしゃれ感が増した印象だ。また、コネクティビティもアピールポイントのひとつでナビがしっかりと装備されている。国内ではありがたい装備といえる。
■スポーティなルックスのR-Lineに2.0Lターボと1.4Lターボ
一方2.0LのR-Lineは211ps/280Nmというハイパワースペックで、いわばゴルフGTIみたいなパワースペックを搭載していることになる。そのため、走りもかなり暴力的な加速も可能で、ビートルの外観とは違った走りを楽しむこともできる。ちなみに、ゴルフGTIは220ps/350Nmというスペック。パワー/ウエイトレシオでみると、ビートルの6.5kg/psに対し、GTIは6.3kg/psだ。
サスペンションもしっかり感があるスポーツサスペンションで、超扁平の235/45R18インチのタイヤもマッチする。1.2Lターボより、さらにDSGの小気味良さが際立ち、まさにスポーティカーという印象になる。がしかし、このクルマにこのパワーが必要か?という疑問が湧き出なくもない。1.2Lターボがベストチョイスと思っているからかもしれない。
そこで新規にラインアップに加わったのが1.4LターボのR-Lineに注目ということになる。1.2Lターボではパワーが足りないと感じた人や、2.0Lターボではオーバーパワーだと感じた人にピッタリのモデル。しかもパワーが上がっているにもかかわらず、乗り心地は1.2Lターボ同様の優しい乗り心地で、気持ちがいい。
ここがポイントだ。2.0Lターボはやはりパワーに見合ったサスペンションを持たなければいけないので、18インチを装着し、乗り心地もスポーティだ。ハンドリングもそれに見合った正確な応答を示し、ゴルフGTIのような印象すら受ける。しかし、ザ・ビートルというキャラクターを考えれば、1.2Lターボの乗り心地の良さやエクステリアにマッチした走行フィールが違和感はない。が、しかし、モアパワー・・・という唯一気になるポイントがあると言えばある。
だから、1.4Lターボは、乗り心地もマイルドで穏やかでありながら、モアパワーを実現している。この絶妙なバランスと見た目を2.0Lターボと同じにしたチョイスは、選択に迷っていた人の心わしづかみにするに違いない。「これを待ってた!」という人が多いだろう。
そのエクステリアは2.0LのR-Lineと同様なので、フェンダーを黒く塗装し、オーバーフェンダーのように見せるデザインやリヤスポイラーの装備、ダッシュボード上にある3連メーターなど「走り」の雰囲気をもっているのが特徴だ。
ではここでスペックをおさらいすると、2.0Lターボは前出のとおり211ps/280NmでJC08モード燃費は13.4km/L。新規モデルの1.4Lターボは150ps/250NmでJC08モード燃費は18.3km/L。標準モデルの1.2Lターボは105ps/175Nmで17.6km/Lとなっている。燃費は1.4Lターボがもっともいいことになっている。
また、ボディサイズは全長4285mm×全幅1815mm(R-Lineは1825mm)×全高1495mm、ホイールベース2535mmとなっている。
こうして3つの排気量から選択が可能となり、どの排気量でも、そしてどのグレードにも、スポーティさとかわいらしさが共存し、さらにフォルクスワーゲンらしい安心感、信頼性も持っているラインアップになった。「もうちょっとあれが・・・」という迷うこともきっと減っただろう。フォルクスワーゲンのブランドアイコンに相応しい、多くの人が求めるものを満たすラインアップの充実になったと思う。
■主要諸元と価格
【PR編集部】 編集部総力取材!雪道シーズン到来、ヨコハマタイヤ特集
第1弾:ヨコハマタイヤ「ice GUARD SUV G075」試乗レポート 技術進化を如実に感じる新スタッドレスタイヤ