フォルクスワーゲンは2025年2月10日、ドイツ・ウォルフスブルグ本社で開催された労使会議でエントリーモデルの電気自動車を初披露した。
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2024年秋、フォルクスワーゲンは従業員のリストラ、3工場の閉鎖問題など、直面している危機に対応して、経営方針を巡って大いに揺れた。当然ながら従業員は猛反発しストライキが行なわれ、ドイツでの社会的、政治的な問題にもなった。また従業員組合幹部もメンバーに加わっている取締役会では議論が重ねられ、2024年末に創業以来初めての国内工場の閉鎖は見送ることになった。一方で、2030年までに国内3万5000人以上の人員削減には合意し、この最終決定により、約73万台分の生産能力が縮小されることになる。
フォルクスワーゲンの危機の最大の原因はドイツ経済の悪化、激しいインフレ、特に電力や燃料などのエネルギー価格の高騰であり、ドイツ国内に多くの工場を持つフォルクスワーゲンは他のドイツ自動車メーカーより影響が大きく、工場の採算性が失われつつあったのだ。
これに加えて、最大市場である中国での販売が急減速し、危険水域に達していた。結局、労使での議論や政府の方針もあり、工場閉鎖は回避されたが人員削減は行なわれることになった。そして、ウォルフスブルク工場で生産されているゴルフの生産を、2027年からメキシコに移管するほか、ドレスデンの工場での車両生産は2025年末で終了し、別の用途を検討することになった。
こうした決定結果を踏まえ、フォルクスワーゲン・ブランドのトーマス・シェーファーCEOが、労使会議で今後の経営戦略を発表し、エントリーモデルに位置付けられる電気自動車(予定価格は約2万ユーロ:約300万円)のデザインが従業員に初披露された。
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トーマス シェーファーCEOは、「12月の交渉が妥結したことにより、私たちはフォルクスワーゲン史上最大規模となる未来に向けた計画の策定に着手しました。私たちは現在、従業員と合意した目標を確実に達成することを目指して、野心的な道を歩んでいます。これは、電気自動車がすべての人にとって魅力的なものとするための重要なステップであり、私たちのブランドの明確な目標でもあります」と語っている。
シェーファーCEOは、労使会議の場であることを前提に、ウォルフスブルグが今後も革新的なテクノロジーと生産能力の中心地であり続けることを強調し、この主力工場が自動車生産における新たな基準を確立することになると宣言している。
フォルクスワーゲンは、新しいエントリーEVモデルのコンセプトカーを、3月初旬に一般公開する予定だ。量産モデルの世界初公開は2027年を予定している。ベース価格が約2万ユーロのこの新しいエントリーモデルの電気自動車は、幅広いユーザーに向け、手頃な価格、高品質であり、そして収益性が高い新しいこの電気自動車はヨーロッパで生産され、ヨーロッパ向けに発売される。
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電気自動車の時代において、エントリーモデルの低コストなEV開発は、フォルクスワーゲン・ブランドの未来に向けた計画の基盤の一つとなる。すでに2025年中に発表が決定しているBセグメントの「ID.2all」の量産型とともに、この新しい電気自動車は、フォルクスワーゲン・グループ内の新しいコンパクト電気自動車ファミリーに属すことになる。
このモデルファミリーには、新たな段階へと進化を遂げたモジュラーエレクトリックドライブ(MEB)プラットフォームをベースにしたコンパクトな電気自動車が含まれている。その最初のニューモデルが「ID.2all」だ。
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ID.2allは、全長4050mm、全幅1800mm、全高1530mm、ホイールベース2600mmで、駆動モーターはフロントに搭載されるFFで、5ドア・ハッチバックだ。モーター出力は226ps、航続距離はヨーロッパWLTPモードで450kmとされている。このID.2allは、フォルクスワーゲン初のBセグメントサイズの電気自動車で、2026年に導入する予定で、ベース価格は2万5000ユーロ以下と予想される。
今回、お披露目されたエントリーモデルの電気自動車は、このID.2allより少し小さなA+セグメントのハッチバックと推定され、バッテリー搭載量を抑えることで価格を約2万ユーロに抑えていると考えられる。
フォルクスワーゲンの電気自動車シリース「ID.」ファミリーは、2019年に発売されて以来、世界中で合計135万台以上が販売されており、そのうちの約50万台はヨーロッパ市場をメインとする「ID.3」だ。2024年には、フォルクスワーゲン・ブランドのEVは38万3100台を販売した。
今後登場するID.2allと、新EVエントリーモデルにより、こうしたEVの販売台数を倍増させる計画としているのだ。
ウォルフスブルグ工場は新EV生産拠点に
労使会議において、ウォルフスブルグ工場が、電気自動車の時代においてもフォルクスワーゲン・ブランドの中心的な生産施設であり続けることが強調された。ゴルフの生産拠点をメキシコへ移転する合意がなされたことで、先進テクノロジーのためのスペースが確保され、新しい生産ラインが導入される。
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そこでは、新しいスケーラブル システムズ プラットフォーム(SSP)をベースにした、ゴルフの後継EVモデルと、量産EVのT-Rocが生産される予定だ。それにより、ウォルフスブルグ工場を、フォルクスワーゲンの新しいEVコンパクト・クラスの生産拠点として位置づけられる。
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スケーラブル システムズ プラットフォーム(SSP)は、統一されたアーキテクチャーに基づく電気自動車専用のプラットフォームで、完全にデジタル化された、拡張性の高いメカトロニクス・プラットフォームで、従来のEV用のMEBプラットフォームよりさらにフレキシフルで、かつ低コストであり、最先端のSDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)であることが想定される。
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そしてSSPを適用する最初のモデルは、ウォルフスブルグ工場で生産されるゴルフEVと予想する。