フォルクスワーゲン グループ ジャパンは2021年12月22日、新型ゴルフシリーズのスポーツモデル「ゴルフGTI」を発表した。発売は2022年1月7日から開始する。
今回発売されるゴルフ GTIは8世代目となり、走りなどスポーツ性能の向上はもちろん、静粛性や乗り心地、上質感などトータルで大幅にアップグレードされているのが特徴だ。
モデル概要
GTIはいわばゴルフシリーズのアイコンとして位置づけられるモデルで、ダイナミックなスポーツキャラクターに加え、妥協のない質の高い機能性を追求。MQBプラットフォームをベースにしながら、ひと目見て低重心であることがわかるようにデザイン面で工夫がこらされている。
フロントは横幅の広い専用のグルルが採用され、シャープなショルダーラインと組み合わされている。ボンネットの先端部にはGTIを象徴する赤いラインを配置。そしてGTI専用のハニカム パターンのグリル左右に埋め込まれたLEDフォグランプがX字形に光を放つようにデザインされている。
また新型GTIはエアロダイナミクスも専用に開発され、Cd値は0.275とハッチバックとしては傑出した低い空気抵抗を達成。そのため、ドアミラーカバーやボディの角の処理、専用のルーフスポイラー、ボディアンダーパネル、ホイールハウス内側ライナーなど細部まで空力的なチューニングが行なわれているのだ。
なおGTIは専用スポーツサスペンションを装備しており、最低地上高も15mm低められている。(全高、最低地上高の届け出寸法は-10mm)。タイヤはヨーロッパでは17インチが標準なのだが、日本使用は標準が18インチ(225/40R18)、オプションで19インチサイズ(235/35R19)が設定されている。
インテリアは、従来と同様に多くがGTI専用の仕様となっている。ステアリングはシルバーのダブルスポーク形のスポーツステアリングを装備。タータンチェック柄の生地にしっかりとしたサイドサポートを組み合わせたGTIスポーツシートなど、一目でGTIモデルであることがわかる。ステアリングホイールにはタッチコントロール スイッチとトラベルアシストのボタンを配置している。
そしてゴルフ8で最大の特徴であるデジタル コックピットではGTIは10インチのインフォテイメント「Ready 2 Discover」が標準装備されている。また間接照明のアンビエントライトも標準装備で、照明カラーは30色から選択できる。
エンジンスタート/ストップボタンもGTI専用で、ドアを開くとエンジンが始動するまで赤色が点滅するようになっている。
搭載される2.0Lの4気筒直噴ターボTSIエンジンは、従来のEA888evo3型エンジンをアップデートし、EA888evo4に進化させている。
排気量1984cc、圧縮比9.6に変更はないが、最高出力は245ps/5000rpm-6500rpm、最大トルク370Nm/1600rpm-4300rpmを発生。従来型のGTIパフォーマンスモデルと同等の出力にアップされているのだ。なおトランスミッションは湿式7速DSGを組み合わせている。
新型GTIのコンセプトは、自然でなおかつ俊敏なハンドリング特性と至高のドライビングプレジャーの両立、高いコーナリング性能を生み出すグリップ力の向上、ワインディングから最高速域まで正確で安定した走り、リニアで意のままに操ることができる車両レスポンス、ロングドライブにも適した静粛性や快適性など日常での使い勝手の良さを実現することであった。
ゴルフ7GTIと比較すると、ドライビングプレジャーのさらなる向上、よりダイレクトで遅れのない俊敏なハンドリング特性を目指しているといえる。
そのため、フロントでは高剛性のアルミ製サブフレームの採用、サスペンション リンクやブッシュの見直しの他に、ダンパー、スプリングレートもやや高められている。同様にリヤもリンク類、ブッシュなども改良され、スプリングレートは15%アップ。
ステアリングはプログレッシブステアリングを標準装備。操舵角に応じてギヤ比がよりダイレクト レシオに変化し、ロックtoロックは2.1回転となっている。
新型GTIは、シャシー、サスペンションの基礎を固めた上で、新たにビークル・ダイナミクス・マネージャーを採用している。フロントの新たな電子制御油圧多板式デフロックを装備し、従来からの電子制御XDS(ブレーキ制御LSD)を統合制御するシステムだ。
さらにオプションのDCC(アダプティブ・シャシーコントロール)装備モデルはこのDCCも統合制御される。DCCも最新の制御ソフトを採用しており、毎秒200回のダンパー調整を行なうことができるように進化。このDCCを装備すれば、任意のドライブモードが選択でき、コンフォートモードでは日常の市街地走行などで極めて快適な乗り心地を得ることができる。
ビークル・ダイナミクス・マネージャーの採用により、タイトなコーナーや高速コーナーでのアンダーステアを抑制し、ドライバーの意のままのラインを走行することができるのだ。
上質でソリッド感のあるダイナミックな走り
最新のEA888evo4型エンジンは、振動感がなく低回転からとても滑らかで、アクセルの踏み込みに応じて軽々と吹け上がる。アクセルの踏み込み量がわずかでも、エンジンから生み出されるトルクは強力そのものだ。
アクセルの踏み加減で思い通りの加速が得られ、またドライブモードをスポーツにすると中速域からは迫力満点の重低音サウンドが発生し、加速状態とシンクロする。このサウンドは電子制御エンハンサーで、エコモードで走るとエンジン自体は素の状態ではとても静かであることがわかる。
試乗車はオプションのDCC、19インチタイヤを装着していたが、見た目とは裏腹にゴツゴツ感はまったくなく、フラット感の感じられる乗り心地は優れている。スポーツモードに切り替えるとステアリングの操舵力も重めになり、ダンパーも固い状態になるが、このモードでは減衰が強まるものの、路面からの入力は丸く、不快感がまったく感じられなかった。
スポーツモードでは重めだが、ステアリングを切ると同時にダイレクトに車体が反応し、そのソリッドな一体感はGTIならではの味わいだ。このコーナリングのフィーリングと重低音のサウンドが重なり、ドライバーの気分を高揚させてくれる。
ブレーキは今回から電動ブースターを採用しているが、そのコントロール性の良さも絶品といえる。
デジタルコックピットの象徴であるデジタルメーターは、ドライブモードに合わせて変化し、スポーツモードでは赤色画面のメーター表示になり、任意にラップタイヤやブースト圧などの表示も選択できるなどの演出もGTIらしく凝っている。
ステアリングホイールの握り心地や、スポーツシートのサポートの良さなどにも、このクルマの仕立ての良さ、作り込みのきめ細かさが感じられる。つまり単に走りだけではなくクルマ全体で質感の高さが実感でき、こういう点がGTIの持ち味ということもできる。
高速道路で巡航している分には、室内は極めて静かで体感するスピード感を狂わせることもあり、体感上は60km/hくらいでも実際には100km/hだったりするので、こういう場面ではトラベルアシストをセットしたほうが良さそうだ。
ベースになっているゴルフは、インテリアのデザインや雰囲気は抑制的で地味だが、GTIはアグレッシブといほどではないにしても、主張があり、高速道路上でも市街地でも一目置かれる存在感があるというのが真骨頂といえるかもしれない。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
価格
ゴルフ GTI:466万円(税込み)