ゴルフ8のハッチバックモデルに続いて、ワゴンタイプのヴァリアントも国内導入され試乗してきた。ヴァリアントは2020年9月にドイツ本国で発表されているが、1年を待たず国内展開がはじまったことになる。
新型ゴルフヴァリアント8 には、1.0eTSIと1.5eTSIの2つのパワートレーンが用意され、4つのグレード展開はハッチバックと同様だ。
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ボディサイズの変更
ポイントはゴルフ8と同様にデジタル化やエンジンの変更、運転支援システムの進化などのインテリジェントな進化と、ワゴンとしての商品性のアップというのがキーになる。インテリジェントな部分はハッチバックと共通するものが多く、後述するがまずはワゴンとしての商品性についてお伝えしよう。
ボディサイズは先代のゴルフヴァリアント7と比較し、全長は4640mmで、+65mm、全幅は1790mmで-10mm、全高は変更なく1485mm。ホイールベースは2670mmで+35mmとなり、全長とホイールベースが長くなっている分、ラゲッジや後席スペースが拡大されている。また横幅は10mm狭くなり、国内では有り難いユーザーも多いことと思う。
このボディサイズの拡大によりラゲッジ容量は611Lで、リヤシートをたたむと1642Lにまで拡大。VWグループ・ジャパン広報はクラストップレベルで、ひとクラス上の多くのDセグメントモデルを超える大きさだと言う。確かにタカハシのF31型BMW 320dツーリングは、通常は495Lでリヤシートを倒しても1500Lなのだから、Cセグメントのヴァリアントとしてはクラスを超える大きさは間違いない。
そして後席のレッグスペースも先代が903mmに対して新型は941mmまで広くなっているので、大柄な大人が4人乗っても十分な広さと言える。こうしたホイールベースの延長と全長の伸延はパッケージデザインにも好影響となっている。
真横からヴァリアント8を眺めてみると、リヤゲートの傾斜が斜めであり、ルーフラインはBピラーから後端に向けてなだらかに傾斜している。ヴァリアント7では、リヤゲートは切り立ちハッチバックを伸ばしたようなデザインだったが、新型ではセダンをベースにしたワゴンのようにバランス良く伸延できていることがわかる。
最新のダウンサイジングエンジン
試乗したモデルは1.0eTSIの「Active」で326万5000円。先代の1.2TSIをダウンサイジングしたモデルだ。しかしながら排気量は減ったものの出力は向上し、燃費も向上しているのだ。先代が1197ccで77kW(105ps)/175Nmに対し、新型は81kW(110ps)/200Nm。燃費は先代の時代はWLTCモードではなくJC08モードだったが、先代は18.6km/Lで、新型のJC08は20.4km/Lと改善している。
こうしたエンジンの性能向上の背景にはミラーサイクルを採用しながら可変ジオメトリーターボを搭載し、48VのBSGの採用などがあり、最新の技術を量販モデルに投入するやり方は、量販メーカーのフォルクスワーゲンらしい手法だろう。ちなみにこの1.0LエンジンはEA211evo型で、現行のポロやT-Rocに搭載するEA211型の進化型なのだ。そしてBSG(ベルトスタータージェネレーター)はエンジンの再始動とエネルギー回生、エンジンの出力アシストができ、出力は9.4kW(13ps)/62Nm。
新型はこの1.0Lエンジンに7速DSGを組み合わせ、ダイレクトな変速で頼もしく走行する。試乗ルートはワインディングと一般市街地で、歩行スピード程度での切り返しでもギクシャクすることなく滑らかに動き、乾式DSGのネガな部分は皆無だ。ワインディングではさすがにパワフルに走るとは言い難いが、普通に走行する分には問題ない。スポーツドライビングを楽しみたいというユーザーであれば1.5eTSIの選択肢がいいだろう。
また試乗車には205/55-16サイズのタイヤが装着され、上級モデルは17インチなのだが、この16インチサイズも乗り心地という点で素晴らしかった。シートの座り心地を含めマイルドなフィーリングは上級な乗り心地とさえ感じられ、とても好感度のある乗り心地だった。
実用性ではピカイチ
実用面で美点として取り上げたいのが最小回転半径だ。先代の5.2mに対して5.1mと小さくなっている。ホイールベースを伸延しながらの小径化は素晴らしい。そして狭い場所でのハンドルの切れ角は使い勝手として非常に有り難いことだ。
オプションの装備になるが、リヤゲートにパワーテールゲートが装備できるのがいい。プレミアムモデルには標準装備されつつあるが、こうした実用的な装備は嬉しい。両手に荷物がいっぱいで、というシチュエーションもそうだが、テールゲートは走行後、汚れているもの。そうしたときに手を触れずに開閉できるのは実感として有り難いということをお伝えしておこう。
インテリアや運転支援システムはハッチバックと同様の装備で、タッチパネル操作が中心で物理スイッチがなくなっている先進的なインテリアになっている。またシフトレバーもシフトバイワイヤーにより極小化され、見た目の先進感もあって好感度が高い。
安全装備でも実用面でいいと感じたのは、エグジットワーニングがある。降車時ドアを開けようとした時に後方から来る自転車や歩行者を検知するとサイドミラーにワーニングランプで知らせてくれる装置で、こうした装備は地味だが有り難いものでもある。
実はこのヴァリアント8は、ボディの大きさやユーティリティ、実用性を見ると、少し前のDセグメントを超えるレベルであり、先進技術のポイントでもプレミアムモデルに引けを取らない装備も充実している。それでいて300万円を少し超える価格はかなり魅力的に思えるがいかがだろうか。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>