フォルクスワーゲン ゴルフ・トゥーラン試乗記 国産ミニバンの対極に位置する実用3列シートMPV

マニアック評価vol409
VW トゥーラン

フォルクスワーゲンのコンパクト・ミニバン、ゴルフ・トゥーランの2代目は2015年3月のジュネーブショーで発表された。そして日本には2016年1月に導入され、ようやく試乗する機会がめぐってきた。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>

日本ではゴルフ・ファミリーのモデルであることを強調するため、ゴルフ・トゥーランという車名となっているが、ヨーロッパでは単にトゥーランと呼ばれ、コンパクトクラスのMPV(多目的車)と位置付けられている。新型トゥーランのボディサイズは、全長4535mm、全幅1830mm、全高1640~1660mm、ホイールベース2785mmで、サイズ的に見ればC/Dセグメントだ。日本車に当てはめれば5ナンバー・ミニバンとラージクラスのミニバンの中間的なサイズとなる。

VW トゥーラン
ゴルフ・トゥーラン TSIコンフォートライン

初代モデルに比べ全長は130mm、全幅35mm、ホイールベースが110mmサイズアップし、全体に一回り拡大されている。しかし、車両重量は20kg軽量化され1560kgに仕上げられている。その理由は、モジュラー・プラットフォーム「MQB」を新採用することで軽量化と高剛性化を両立させているからだ。

VW トゥーラン 試乗VW トゥーラン 試乗

VW トゥーラン 試乗VW トゥーラン 試乗

エクステリア・デザインも最新のフォルクスワーゲン・テイストになっているが、見るからに硬質で水平基調のラインで構成され、シンプルな造形だ。ボディ前面から側面、リヤ面まで鋭いラインを通しているのが印象的。強い存在感を模索している日本製ミニバンとはまったく雰囲気が異なる。

また、ミニバンのリヤドアはスライドドアというのが主流だが、トゥーランは重量増とデザイン面での違和感を嫌い、スイングドアとしているのも特徴と言える。

VW トゥーラン 試乗
ゴルフよりさらに質感、仕上げが向上したインテリア

インテリアではインスツルメントパネルのデザインなどがゴルフと共通しており、ダッシュボード、内装材にソフトパッド材を採用し、地味なデザインながら多くの国産ミニバンとは異なり、質感はクラスの常識を超えている。

VW トゥーラン 試乗
アップライトポジションの運転席
VW トゥーラン 試乗
2列目シート
VW トゥーラン 試乗
3列目シート

もちろん着座ポジションはゴルフとは別物で、地上からの着座位置は625mmとされ、アップライトなポジションとなる。これはもちろん3列シートにするためで、シート配列は2/3/2の7人乗り。3人乗りのセカンドシートは3座席が独立したデザインになっているのも特徴的だ。なお、従来は脱着式になっていた2列目シートは、今回からは取り外しはできなくなっている。

2列目シートのスライド量は200mmで、シートバックも3段階リクライニングができる。また2列目シートは3座席が独立しているので、チャイルドシートも3個独立して装着できる。さらにオプションで左右シートには、座面を高くすることができるインテグレーテッド(内蔵型)チャイルドシートも選ぶことができる。

VW トゥーラン 試乗
2列目シートが前方にスライ&チルトするイージーエントリー機構
VW トゥーラン 試乗
2列目シート左右にオプション設定のインテグレーテッド・チャイルドシート

2列目、3列目のクッションは、完全なフラットフロアとなるシートアレンジを実現するために薄めで、しかも硬い。ただし、薄いクッションによるぺらっとしたフィーリングではなく高密度のクッションという感じで、最初はその座り心地の硬さに驚かされるが、サイドサポートもしっかりしていて体が安定し、前後スライド、シートバック・リクライニングを併用することで長距離でも疲れない作りとなっている。

VW トゥーラン 試乗VW トゥーラン 試乗

3列目シートは2列目よりさらにクッションやバックレストは薄いが、作りはがっちりしていて、チープさがない点は好感が持てる。通常は3列目シートを折り畳んで使用するが、その折り畳み操作もワンタッチで気持ちよく作動する。そして3列シート車で一番の問題になるのが3列目シートへの乗り降りだが …

この新型トゥーランは、2列目シートをワンタッチで前方にスライド、かつ前方に座面全体が傾斜するイージーエントリー機構を採用している。操作の軽さ、動く機構の高精度感とスライド&前傾チルト機構により、多くの3列シート車の中でもトップレベルの操作性と断言できる。

3列目シートを格納した状態
3列目シートを格納した状態
VW トゥーラン 試乗
トノカバーをフロア下にきちんと収納できる

ラゲッジ・スペースは、コンフォートライン以上は助手席のシートバックを前方に折り畳むことができ、2列目、3列目は折り畳むと広大なフラットフロアが生まれる。3列目だけを折り畳むとルーフまでのラゲッジ容量は917L、2列目、3列目シートを折り畳んでフラットフロアにするとラゲッジ容量は1857Lになり、乗員数を優先するミニバンと多目的車という発想の違いを実感させられる。

試乗したモデルは、中間グレードのTSIコンフォートラインだ。もちろんエンジン、トランスミッションは、エントリーグレードのトレンドライン、最上級のハイラインもすべて共通で、新世代の1.4L TSI(直噴ターボ)に7速DSGトランスミッションを備えている。

VW トゥーラン 試乗
最新世代のオールアルミ製1.4 TSIエンジン
初採用のポップアップ式ボンネット
初採用のポップアップ式ボンネット
VW トゥーラン 試乗
競合車とのパワートレーン比較

パワーは150ps、最大トルクは250Nmで、従来の1.4 TSIエンジンよりパワーは+10ps、トルクは+30Nmとなる一方で燃費はJC08モードで23%向上し、18.5km/Lとトップに立っている。つまり走り、燃費ともに優位なのだ。

発進時だけはトルクコンバーター式ATやCVTよりトルク感が薄いが、その分だけアクセルを少し踏み込み気味にすれば、1500rpmにすでに最大トルクゾーンになり、加速性能はクラスを上回り、エンジンの滑らかさやエンジン音、騒音、振動はよく抑えられている。またピッチング、ローリングもよく抑えられ、乗り心地も優れている。

ちなみにゴルフのハイライン(1.4L TSI)と同様にリヤ・サスペンションは4リンク式で、タイヤは205/60R16(試乗車はコンチ・プレミアムコンタクト5)サイズ。なおトゥーランのハイラインは215/55R17サイズとなる。

VW トゥーラン 試乗
コンフォートライン用の205/60R16タイヤ(コンチ・プレミアムコンタクト5)
ハイライン用の215/55R17タイヤ(コンチ・プレミアムコンタクト5)
ハイライン用の215/55R17タイヤ(コンチ・プレミアムコンタクト5)

ステアリングは穏やかで滑らかなゴルフと共通のフィーリングだ。ダイレクト感や路面からのインフォメーションも最適で、気持ちよい走りという感じで、ミニバン的なボディの動きではなくステーションワゴンの走りといったイメージだ。また多くのミニバンとは異なりステアリングやボディ全体の剛性感もこのトゥーランならではの資質といってよい。そういう意味で、高速走行、市街地を問わず安心感、安定感はバツグンだ。

VW トゥーラン 試乗VW トゥーラン 試乗

さらに今回の新型トゥーランは、フォルクスワーゲンの戦略であるオールインセーフティ(アクティブ、パッシブ・セーフティとレーダー/カメラによるドライバー支援システムを統合したシステム)」をエントリーグレードのトレンドラインから標準装備化しており、同時にインフォテイメントシステムは全グレードがAndroid、Appleに対応したコンポジションメディアを標準装備するなど、装備面でも充実するなど、コスト・パフォーマンスは高いレベルにある。

新型トゥーランは、国産ミニバンとはまったく異なる世界観により作られた3列シート車だが、輸入車愛好層だけではなく国産ミニバン指向のユーザー層にも十分アピールすることができる商品力を持っていると思う。

フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン諸元表

ゴルフ・トゥーラン 価格表

フォルクスワーゲン公式サイト

COTY
ページのトップに戻る