2014年2月20日、フォルクスワーゲングループ・ジャパンは、ゴルフシリーズのフラッグシップモデルであり本格的スポーツモデルの新型「ゴルフR」を同日から発売すると発表した。
新型ゴルフRは、2013年のフランクフルトショーでワールドプレミアを行なったが、ようやく日本での発売が開始された。ゴルフRはゴルフシリーズ最強のパワートレーンと4MOTION(4輪駆動システム)を搭載した高性能スポーツモデルだ。2.0LにダウンサイズしたTSIエンジンをGTI用からさらにチューニングし、最高出力は先代モデルに比べ24psアップの280ps、最大トルクも50Nmアップし380Nm となっている。
◆エンジン
ただし、ヨーロッパ仕様のゴルフRは300psで日本へ導入されるエンジン仕様とは20psの差がある。ヨーロッパ仕様の指定ガソリンはプレミアムプラス(102オクタン)で、日本は100オクタンであることと、日本は夏季の気温が高いので冷却性能に余裕を持たせるために日本仕様は280psとなったと推測される。なお最大トルクはヨーロッパ仕様と共通のため、高回転域でのパワーを控えているようだ。
EA888型4気筒2.0L直噴ターボエンジンは、モータースポーツ用エンジンに匹敵するチューニングを採用。新設計のシリンダーヘッド(排気バルブ、バルブシート、バルブスプリングなど)、ピストン、高圧インジェクター、専用ターボチャージャーを備える。また吸排気カムの連続可変バルブタイミング機構に加え排気側には可変リフト機構も装備している。
さらにゴルフRとしては初となるアイドリングストップシステム、ブレーキエネルギー回生システムで構成される「BlueMotion Technology(ブルーモーションテクノロジー)」を搭載。その結果、JC08モード燃費は、先代モデルの12.4km/L(10・15モード計測)から14.4km/Lに向上している。
トランスミッションは湿式デュアルクラッチ式の6速DSG。そして4WDシステムは第5世代のハルデックスシステム(電子制御油圧多板クラッチ式)となっている。この第5世代は前輪のスリップをプレビュー制御して駆動力を後輪に伝達する一方、低負荷走行時には前輪駆動となる。さらに、ドライビング状態に自動的に前後トルク配分を適合させる他に、ESPとも協調制御を行なう。もちろん4輪電子制御式LSD機能も持ち、空転するホイールに自動ブレーキをかけるLSD機能と、よりコーナリングしやすく内輪ブレーキによってアシストするトルクベクタリング機能も備えている。
またゴルフRは、「ESP Sport」モードを新たに標準装備している。このシステムはセンターコンソールにあるESP(2 段階スイッチ)を押すだけで高速コーナリング時にさらに機敏なハンドリング特性が得られるようESP の反応が遅くなり、さらに、このESPのスイッチを3 秒間長押しするとシステムは、サーキット走行向けにESPの機能を停止する。
◆シャシー
シャシーでは電子制御式サスペンションのダイナミックシャシーコントロール「DCC」を標準装備している。通常は4 つのドライビングプロファイル機能(エコ、ノーマル、インディビデュアルとR専用のレース)に加え、コンフォートが加わり、全部で5つの設定ができる。R 専用の「レースモード」は、サスペンションの減衰力が高められ、エンジンの応答とDSG のシフトポイントがよりサーキット走行向けになる。
「エコモード」はより燃費を向上させるためエンジン出力、エアコン、そのほかの補機類などの作動が制限される。さらに巡航時にアクセルをオフにするとエンジンを停止して滑走するコースティング機能も含まれている。
ブレーキも専用設定で、フロントディスクは直径340mm、厚さ30mm、リヤは直径310mm、厚さ22mm の大型ブレーキディスクを標準装着。サスペンションはノーマル・ゴルフに比べ-20mm、GTIに比べ-5mmというローダウン仕様だ。またフロント・ロアアームは専用のAアームを備え、直進安定性を重視しスクラブ半径も専用設定している。リヤサスペンションは、ラテラルリンクの取り付けブッシュ剛性がアップされている。ステアリングはGTIと同じプログレッシブステアリング(可変ギヤ比)で、ロックツーロックは2.1回転。標準ゴルフは2.75回転で相当にクイックといえる。
新型ゴルフRは、「R」専用アイテムを内外装に標準装着。エクステリアでは、フロント部分に「R」専用の大型エアインテーク付きバンパーや「R」ロゴが入ったブラック塗装のフロントグリル、リヤは、4本のクロームデュアルエキゾーストパイプやブラックのディフューザー(を装着している。ホイールは新デザインの5スポーク18インチアルミホイールに225/40R18サイズのタイヤを組み合わせている。
インテリアはフォルクスワーゲンR GmbHによる特別な仕上げとなっており、新型ゴルフRはひと目で通常のゴルフシリーズとは違う本格スポーツモデルであれうことがわかる。シートはブラックレザーのトップスポーツシートを採用。また最新インフォテイメントシステムの「Discover Pro(ディスカバープロ)」も標準装備されている。
新型ゴルフRは、フラッグシップモデルにふさわしい高性能パワートレーンと4輪駆動システムを搭載しているが、同時に多数の安全装システム、ドライバー支援システムを装備している。
アダプティブクルーズコントロールは、全車速追従機付きとなっている。レーンキープアシストシステムは、ドライバーの不意の操作による車線逸脱を防止。こうした安全装備以外にも、30km/h未満で緊急ブレーキが作動する「シティエマージェンシーブレーキ」や、全速度域で先行車への追突を回避、軽減するブレーキシステム「Front Assist Plus」、万が一の事故の危険性を感知すると自動的にシートベルトを巻き上げ、開いているウインドーをわずかの隙間を残して閉じることでエアバックの作動を確実にする「プロアクティブ・オキュパント・プロテクション」、追突時に車両が飛び出すことで生じる二次的な事故を抑止する「マルチコリジョンブレーキ」などを網羅している。