マニアック評価vol161
ゴルフトゥーランに、アクティブでスポーティなクロスシリーズ第三弾「クロストゥーラン」がラインアップに加わったのは、2012年10月30日。そのクロストゥーランの魅力を箱根のワインディングで味わってみた。
フォルクスワーゲンのクロスシリーズは、過去にクロスポロ、クロスゴルフがあり、その第三弾はミニバンのトゥーランに設定された。クロストゥーランはノーマルより+10mm車高が高く、専用のエクステリアや装備を持ち、アウトドアなスポーツイメージを追求した実用性の高いFFのミニバンだ。ボディサイズは全長4405mm×全幅1800mm×全高1680mmでホイールベースが2675mm。トゥーランの派生モデルだが、グレードとして扱われ1グレードの設定で、348万円のプライスとなる。
そのエクステリアでは、ブラックアウトされたクロストゥーラン専用のフロントバンパー、リヤバンパー、サイドスカートを持ち、フェンダーアーチには黒のモールディングと専用ロゴステッカーが貼られている。また、タイヤは17インチアルミを標準装着し、フロント215/50R17、リヤ235/45R17とリヤが太いサイズを履くという、とても個性的な仕様になっている。そのためひと目でクロストゥーランであることが分かるエクステリアとなっている。なお、ボディカーラーは通常のトゥーランと同じく6色から選択できる。
インテリアではシートアレンジなどユーザービリティの良さは、通常のトゥーランと変わりなく、専用デザインのファブリックシートを装備している。2列目のシートを外し、車外へ持ち出せるという特長的な機能もそのままだ。オーディオ/ナビゲーションではITSスポットに対応した最新の車両通信システム、新規格DSRC機能を持つ「712SDCW」を標準装備する。ETC車載器やipod/iphoneの接続に対応し、8スピーカーも標準装着。
搭載するパワーユニットは1.4LのTSIで直列4気筒直噴ターボ+スーパーチャージャーのツインチャージャーに7速乾式DSGが組み合わされている。このユニットはトゥーランと共通のユニットで、140ps/5600rpm、220Nm/1250-4000rpmという超低回転から最大トルクを発揮する。フォルクスワーゲンの先端技術搭載のパワーユニットというわけだ。JC08モード燃費は14.0km/Lでエコカー減税は50%が対象になっている。
さて、トゥーランのマーケットポジションを見てみると、国内ではファミリーカー市場の中心は250万円以下のミニバンが中心で、ミニバンという意味ではターゲットゾーンに位置している。しかしながら300万円前後というトゥーランのその価格もミニバンの中で、走りの性能をアップしたスポーツモデルやエクステリアに専用装備品を装着するモデルであれば、価格帯は250万円から350万円の幅にアップし、250万円以下の市場に次ぐ、大きなボリュームゾーンになっているとVWグループジャパンでは分析している。したがって、トゥーラン、クロストゥーランもその走行性能の高さや専用装備を考慮すると、294万円から348万円というプライスは十分勝負できる価格といえる。
もちろん、フォルクスワーゲンのブランドであり、走行性能は折り紙つきだ。そしてこのクロストゥーランに実際に試乗してみると、車内空間の広いミニバンとは思えないほど、ボディ剛性の高さを感じる。まさに鉄の塊の中にシートが置かれているような剛性感を感じたのがファーストインプレッション。その後、走行するにつれ、それが強い安心感へと変わってくる。
シートは程よく硬さとホールド性を持ち、長距離でも疲れにくく、ワインディングでもしっかり支えてくれるシート形状になっている。ただ、VWでは珍しくキャビンフォワードされているため、ドライビングポジションは腰掛けたようなカタチになる。ミニバンという性格上、どうしても室内空間を広く取る必要があるため、Aピラーを前方へ出し、前後長を稼ぐことになるが、フロアが延長されているわけではないので、ペダル位置とシート位置の関係を創るのにはどこかにシワ寄せはくる。とはいえ、高いアイポイントのミニバンでありノーズも短いため、このポジションがかえって視界がよく、プラスに働いていると感じるユーザーも多くいると思う。
ステアリングを切るとまさにゴルフの名に相応しく、ドライバーの期待値どおりの反応を示す。微小舵角ではわずかに車両が動き、コーナーへ進入するとロールからヨーモーメントへと移り、回頭性を感じる。ステアリングには路面のグリップ感が伝わり、ほど良く重さも加わる。コーナー出口ではスロットルの開度に比例しセルフアライニングトルクが強くなり、ナチュラルな戻りを感じ、意思どおりにクルマを走らせることができる。
エンジンは140psで2240Nm、1580kgのボディを走らせるに十分なパワーとトルクだった。これはツインチャージャーの魅力で、1250rpmから最大トルクを発揮するエンジンであるため、箱根のワインディングでも非力だと感じる場面はまったくなかった。
さらに、パドルシフトが標準装備されているため、より積極的な走りも楽しむことができる。DSGは言うまでもなくダイレクトな変速が可能で、低回転からのトルクを利用し多段化されたクロストゥーランは、新時代の走りを提供してくれ、走りの剛性感と正確さ、そして直進性の座りの良さは抜群によく、国産車にはない魅力をたっぷりと持っている。これはフォルクスワーゲンならではの走行性能を持ち、ブランド力も高い魅力的なミニバンと言える。
クロストゥーラン 車両価格 348万円