最新の技術を満載した新型「XC90」が新開発され、2014年に登場する。新型「XC90」に採用されている最新のボディ構造や、確固たる安全思想に基づいた高次元のドライバー支援システムの概要が明らかになった。
まずは安全重視のボディ構造である。ボルボは新世代のプラットフォーム、ボディ構造を開発し、この新型XC90がその適用第1号車となる。
新世代のプラットフォーム/ボディ構造は「スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー」(SPA)と名付けられている。その意味はフレキシブル構造で、この新世代のSPAが今後のボルボ全モデルに採用されることになった。
SPAは、きわめて強固な構造であり、同時に安全面におけるベンチマークとなり、2020年までに新しいボルボ車による交通事故死亡者や重傷者をゼロにする目標の実現を加速させる鍵となる存在だ。
SPAは、衝突時における優れた乗員保護性能を備え、事故を回避するためにドライバーをサポートする役割も果たす。「優れた衝突安全性を提供するために、私たちは妥協をしない姿勢を貫きます」と、ヤン・イバーソン(ボルボカーグループ・シニアセーフティマネージャー)は語っている。
現行のボルボXC90は、ボディ骨格の7%が熱間成形ボロン鋼を採用している。しかし、SPAを適用した新型ボルボXC90は、骨格構造の40%以上に超高張力鋼板である熱間成形鋼(ホットスタンプ材)を用い、車重を増加させることなく強度を大きく向上させている。ちなみにボディ骨格に40%以上もボロン鋼による熱間成形鋼(ホットスタンプ材)を使用したクルマは他メーカーも含めてかつてない。図を見れば分かるようにボディ骨格のほとんどが高張力鋼板(ブルー)以上の材料を使用している。
このSPAは独創的な電装アーキテクチャーを採用していることも特筆でき、クルマの知能化を一段と高めることを狙っている。新しい電装アーキテクチャーは、高度な機能が容易に追加可能な設計となっており、マイクロプロセッサー、センサー、カメラなど、技術革新が著しい技術を素早く導入できるように設計されているのだ。
新しい電装アーキテクチャーは、ビークルダイナミクス、セーフティ、車体、およびインフォテインメントの4つを柱としたネットワークで構成されている。「4つの柱は、それぞれがアーキテクチャー全体のすべてのユニットに接続可能です。ひとつの神経系統で、車両全体の統合制御が可能となる、ユニークなアーキテクチャーとなっています」とピーター・メルテンス(上級副社長 研究開発担当)は語る。
ボルボのクルマ造りの哲学は「人間中心」という言葉で表されるが、交通環境の中での総合的なアプローチは、ドライバーが円の中心に置かれる。ドライバーは周囲360度をエアバッグからネット接続に至るまで様々な技術に囲まれ、その中心に位置する。
ドライバーと乗員は、様々な状況下で起きる衝突事故の時、衝突時エネルギーを効果的に吸収するべく設計された各種システムで保護される。シートベルト、シートベルトプリテンショナー、むち打ち防止ヘッドレストシステム、そして常に改良されているエアバッグやカーテンエアバッグなどの安全技術によって守られるのだ。
SPAでは、進化したシートベルトプリテンショナーによって、衝突前と衝突時の乗員保護性能を高めている。例えば、リヤに配置されたレーダーにより、後方からの衝突を検知すると衝突する前にシートベルトを巻き上げ、乗員が衝突時にも安全な姿勢を維持することができる。
ドライバー支援システムは、さらに進化する。カメラ、レーダー、その他センサー技術によりクルマの周辺のより多くの物体を検知できるようになり、さらに高い速度域での走行や交差点といったさまざまな交通状況にも対応できるようになるという。
「衝突回避において、危険な状況下でクルマが自動的にステアリング修正を行い、ドライバーが意図しない車線逸脱を防ぐことを実現することが、最も重要になっています。ドライバーが意図せずに走行車線から外れてしてしまうことが、今日の交通事故では最も多く、死亡や重傷者を生み出す原因になっているのです」と、ヤン・イバーソンは語る。
したがって新型XC90には自動ステアリング操舵、つまり車線逸脱を防ぐ自動操舵アシスト付きのアダプティブクルーズコントロールが導入が実現されている。また新機能として夜間の運転時にも大型動物や歩行者を検知し、自動ブレーキを作動させる機能も含まれているという。
さらにXC90は、他車と通信を行なうことにより交通インフラ、自車のカメラ、レーダー、およびセンサーから得られる以上の情報の取得が可能となっているという。このカーtoカー、カーtoインフラ技術の導入によって重要な情報交換が行なわれ、より安全かつ快適な運転ができるとしている。
このITS技術により、道路上でのタイヤのグリップ状態の取得、混雑を回避するための事前警告や迂回路の提示、信号情報の取得による青信号での連続走行、空いている駐車スペースの検索など、数々の安全および運転サポート技術の可能性を開拓するわけだ。
走行中でもインターネットに常にアクセスできる必要性も高まっている。インターネット接続を利用してより安全、快適なドライブを実現できる一方で、運転席での操作は安全面で問題がある。
インターネットへの常時接続は、ドライバーの注意力、判断力を低下させるのだ。この点に関してボルボは、自動運転が1つの重要な役割を果たせると考えている。特定の状況において自動運転によりドライバーは運転に集中する必要がなくなれば、ドライバーは他の操作を安全に実行することができる。
「クルマの自動運転を認めることは、将来、衝突事故を一切なくすというビジョンを追及する上で不可欠です。新車体構造のSPAによる新しい技術を活用することにより、この究極的な目標に大きく近づくことができるでしょう」と、ヤン・イバーソンは語っている。