マニアック評価vol587
素晴らしくレベルの高いSUVだということを冒頭からお伝えしたい。ここ数年ボルボの変貌ぶりには目を見張るものがあるが、出てくるモデルのレベルの高さには感心させられるばかり。今回のモデルはCセグメントサイズのSUVでコンパクトSUVに求められることを考えて企画されたモデルだ。<レポート:高橋明/Akira Talahashi>
■開発の狙い
ボルボのラインアップには90シリーズ、60シリーズがあり、SPAと呼ぶプラットフォームを採用してきた。XC40は40シリーズのSUVで、サイズダウンではなく、コンパクトSUVに求められるもの、を重視して企画されているため、エクステリア、インテリアデザインも上級モデルとは異なるベクトルで開発されている。
つまり、ボルボブランドを表現しながら、上級モデルと共通したイメージやプレスラインなどを持たず、XC40専用のデザインになっているということだ。しかし、言うまでもないがハード部品、パーツの共有化などは当然行なっている。
その「コンパクトSUVに求められるもの」とは何か?カスタマーターゲットとしては賢くて個性を重んじる人であり、近代的な都会の利便性を求めているような人達であると。そのためには、その個性を表現できるクルマであり、自在に操れ、出かけられなければいけない、若々しく、自信に満ちて、思い通りに走れる必要があると考えて企画されたと説明する。
そのためにはXC60のサイズダウン版ではなく、一からコンセプトを立ち上げて造られたわけだ。そのためハードウエアのポイントとしては、コンパクトモデル用の新プラットフォームCMAを採用。コンパクト・モジュラーアーキテクチャーの略で、将来のPHEV用に、ボディ中央にバッテリーが搭載でき、モーターはフロントに設置するFFタイプになっている。60、90シリーズのSPAはリヤにモーターを搭載するタイプであり、このあたりでもクルマのキャラクター設定の違いが分かる。
また、このクルマの使命としては、北米での人気を取り付けることもある。ボルボとしてはCセグメントサイズを北米で販売するのは久しぶりになるが、ビジネスの太い柱として成長する必要がある。現在の生産工場はスウェーデンと中国にあるが、まもなく北米での生産も開始されるということなので、力の入れ方でも理解できる。
■個性あふれる仕立てと全車標準装備の先進安全機能
XC40のサスペンションでは、フロントがストラット、リヤはマルチリンクだが、スプリングには上級シリーズのような樹脂製のコンポジット・リーフスプリングを採用せず、コイルスプリングを使っている。またR-Designには専用の強化スポーツサスペンションを装備し、前後ともに強化スプリング、リヤのダンパーにはモノチューブダンパーを装備している。また、2019年モデルからはアクティブダンパーを備えるモデルも導入する予定ということだ。
ボディサイズは全長4425mm、全幅1875mm、全高1660mm、ホイールベース2700mmというサイズで、最低地上高は210mm、デパーチャーアングル30.4度、アプローチアングル21.7度という本格SUVと同等のクリアランス設定をしている。
搭載するエンジンはT4、T5で、直列4気筒ガソリンターボで、出力違いが現在のところラインアップしている。こちらも前述のように、今後は電動化されたモデルも投入され、また、説明はなかったがディーゼルの投入も考えられる。
また、ボルボと言えば安全というワードが出てくるが、ボルボのポリシーとして2020年までに新しいボルボ車が関わる事故による死者、重傷者をゼロにするという目標を掲げ、このXC40には、持てる安全装備を全車標準装備としている。従来の機能のスライド搭載では、最新版にアップデートされており、追加機能としては、クロストラフィックアラートがアラートだけでなく、後退時自動ブレーキになっている。そして、ACCがドライブモードに連動するようにもなった。
そのドライブモードは、Eco、Comfort、Sportとあるが、モードを切り替えると車線変更したときなどの加速力がモードに連動する。ちなみに車間距離を詰めるような設定はない。いずれも同じ車間距離が維持される。
インテリアでも個性的であるためにボルボならではの専用のアイディアがある。XC40にはフエルト生地をつかった内装を採用し、ドア内貼りにつかったり、オレンジ色のフロアカーペットにしたりと個性的だ。さらに、流木をイメージさせるドリフトウッドをつかったウッドパネルも個性を際立たせている。
もちろんインパネやダッシュボードまわりのデザインにも個性的な形が多く、凸凹を上手に使って奥行きのあるダッシュボードとしたりと、コンパクトSUVに求められるものを追求して、アイディアを投入していることが理解できる。
■試乗レポート
試乗したモデルはR-DesignでAWDのT5エンジンを搭載するモデルだ。最新のボルボの環境エンジンDRIVE-Eのラインアップで、2.0Lの4気筒ガソリンターボエンジン。252ps/350Nmという出力にアイシンAW製の8速ATを組み合わせている。ちなみにT4エンジンは同じく4気筒の2.0Lターボだが、190ps/300Nmという出力になっている。
そして、この試乗車は導入時の『ファーストエディション』という特別仕様車で559万円というプライスだ。装備は、パノラマガラスサンルーフ(20万円)、20インチアルミホイール&タイヤ(15万円)、ハーマンカードンプレミアムサウンド(10万円)、パワーテールゲート(6万円)が装備され、合計51万円分のオプション装備を同等のカタログモデル539万円にプラス20万円という超お買い得車だ。だが、残念なことに完売している。
この後、2018年6月以降からはモメンタムという中間グレードと、トップグレードで、レザーシートなどが標準装備されているインスクリプションの導入が決まっている。
さて、想定されるライバルはメルセデス・ベンツやBMW、アウディ、ジャガーといったプレミアムブランドのSUVで、GLAやX2、Q2、E-PACEなどであろうが、XC40は際立って個性的な印象を受けた。それはエクステリアデザインであり、インテリアデザインだ。ぜひ、実物を見て頂きたい。
そして走り出すとプレミアムモデルに相応しい、高級で上質な走りであることに驚かされる。20インチという大径サイズのタイヤ&ホイールにも関わらず、乗り心地が良くハーシュネスも問題ない。通常は大径の扁平タイヤでは絶対的なエアボリュームが少ないため、ハーシュネスでキツイことが多いが、見事にいなしていく。
ロードノイズも小さく、高速での風切り音も小さい。上手に遮音しているので特別装備されるオーディオの効果もより際立って聞こえてくるのだ。
ハンドリングも素晴らしいのひとことだ。穏やかに切れば穏やかに回頭し、切り足して行くと応答が敏感に反応し不安要素が顔を出さない。ワインディングを軽快に走り抜けることが楽しくなる。エンジンパワーも申し分はないが、アクセルペダルはやや早開きの設定で、北米を意識したセッティングになっている。そしてエンジンの音も小さく聞こえていて、そのサウンドがいい印象なのだ。この味付けは絶妙だと感心した。
まるでスポーツカーのように走れ、ドライビングポジションだけが高くなった、と言えば伝わるか。ロールも小さくヨーを敏感に作りだすので、不安なくカーブを曲がる。クイックだと感じることもなく、全体のまとまりは車格に見合ったダイナミック性能であれば十分なはずが、より上質でスポーティで、期待値を上回る性能にまとめてある印象だ。プレミアムコンパクトSUVのトップに躍り出たと言っていいだろう。