ボルボ 「V60クロスカントリー D4 SE」試乗記 ディーゼルと相性バツグンのクロスオーバー・ワゴン

マニアック評価vol379

V60クロスカントリー D4 SE
V60クロスカントリー D4 SE

2015年10月6日、ボルボは新たな車種となる「V60クロスカントリー」の発売を開始した。S60/V60シリーズはボルボの屋台骨を支えるモデルだが、新たにV60クロスカントリーを追加して、よりラインアップの幅を広げた。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>

クロスカントリーという名称は、V40クロスカントリーに続く第2弾となる。しかし、「60シリーズにはXC60があるじゃないか」、と思う人も多いだろう。だがV60クロスカントリーの追加により、XCとの棲み分けを明確にしている。既存のXC60はSUVというポジションで、V60クロスカントリーはクロスオーバーなのだ。

現在のグローバル市場は、ヨーロッパ、アメリカ、中国ともにSUV、クロスオーバーのラインアップは不可欠となっているので、ボルボも商品戦略を再構築し、今後はXCとクロスカントリーという2カテゴリーをラインアップしていくわけだ。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗

ボルボはもともと1997年にV70ベースのV70XC(AWD)を発売し、いわばクロスオーバーの先駆者だが、その後はよりSUV的な要素を強めたXC系をラインアップしている。そのため、現在のXC70は将来的にはXC70とクロスカントリーという2種類の車系が展開されるはずだ。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗ボルボ V60クロスカントリー 試乗

今更だが、SUVの記号性は最低地上高が十分高いこと、大径タイヤ、そしてドライビングポジションが高めの位置にあるコマンドポジションにある。乗用車ステーションワゴンから派生したクロスオーバーも、SUVの記号要素を受け継ぐことが多いが、最近のクロスオーバーはよりデザインに特化し、機能、装備的には乗用車的になっているモデルも少なくない。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗ボルボ V60クロスカントリー 試乗

そんな視点から見るとV60クロスカントリーは、正統派といえる。最低地上高は200mmに設定されているのだ。その手法は、フロント・サスペンションはXC70のハブキャリアとサスペンション・リンクを採用し、リヤはXC70用のサブフレーム(T5 AWDモデルはXC60用)とサスペンション・リンクを採用し、標準V60より65mm車高を高くしているのだ。さらにこの最低地上高のアップに合わせ、フロントのサブフレームの前端にフロントロワ・クロスメンバーを追加し、最低地上高の低い乗用車との衝突時の安全に対処しているのはボルボらしいところだ。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗

V60クロスカントリーは、200mmという最低地上高とした結果、アプローチアングル19.4度、ランプブレークスルー・アングルは20.7度、デパーチャーアングルは25.7度となり、ラフロードでの走破性も確保されている。

V60クロスカントリーは、FFモデルの「D4 SE」と、「T5 AWD SE」の2種類が設定されている。D4 SEはもちろん最新のD4ディーゼル搭載モデルで、AWDモデルはT5エンジン搭載モデルのみの設定だ。このT5は、2.5Lの5気筒ターボエンジンを搭載している。ちなみにトランスミッションはD4 SEが8速AT、T5 AWD SEは6速ATで、つまりT5 AWD SEは従来からのエンジン、トランスミッションを搭載している。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗ボルボ V60クロスカントリー 試乗

今回の試乗はFFモデルのD4 SEだ。FFモデルとはいえ、最低地上高はAWDと共通なので、荒れた路面でも安心して走ることができる。搭載されているD4エンジンは2.0Lの最新ディーゼルで、ツインターボ、デンソーi-ARTテクノロジーを採用し、190p/400Nmと現状での同クラスのディーゼルエンジンの中でもトップレベルの出力を持つ。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗
190ps/400Nmを発生するD4型ディーゼル・ターボ

また、ディーゼルとは思えないほどの回転の滑らかさ、スムーズさもこのエンジンの仕上がりのよさを物語る。さらにトランスミッションも最新のアイシンAW製の8速ATで、加速の力強さと巡航時のエンジン回転の低さ、静粛さも大きな武器となっている。

だから普通に市街地を走ったり、高速道路でドライブするようなシーンで、巡航状態はもちろん加速でも2000rpm以下でも十分で、当然ながら燃費もよい。ディーゼルならではのトルクの力強さを生かした走りができ、V60クロスカントリーのようなクロスオーバーには相性はバツグンだ。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗

試乗したV60クロスカントリーは、2016年モデルだ。V60は2010年デビューなので6年目となるモデルだが、改めてボディのガチッとした剛性感はこのセグメントでもトップレベルであり、特に現在の後期モデルは以前より剛性感が増しているように感じられる。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗ボルボ V60クロスカントリー 試乗

S60/V60シリーズは、プレミアムセグメントのスポーツセダン、スポーツワゴンという位置付けだが、V60クロスカントリーはそれよりはラグジュアリーな方向付けとなっており、インテリアの質感やカラーコーディネイションもキャラクターによくマッチしている。またステーションワゴン型のパッケージ、機能性もこのクルマの魅力になっている

タイヤはSUV、クロスオーバー用のコンチネンタル・クロスコンタクトが装着されていた。タイヤサイズは235/55R17で、外径は690mmなので、見た目も力強くさらにホイールアーチのエクステンションによりデザイン的にクロスオーバーであることが強調されている。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗ボルボ V60クロスカントリー 試乗

このタイヤはかなりしっかりしているフィーリングで、路面との当たりも硬めに感じられた。乗り心地もかなり締まったフィーリングだった。走りは基本的にV60を継承しており、車高が高いこともほとんど意識しないで走ることができ、ワインディングでもスポーティに気持ちよく走ることができる。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗ボルボ V60クロスカントリー 試乗

ただステアリングはかなり切り始めからシャープに立ち上がるように感じた。このあたりが、ベースのV60との違いを感じる部分で、この感覚は車高、タイヤなどの要素から生まれているのかもしれない。このV60クロスカントリーも、ステアリングのアシスト量を3段階で選択できるが、最も軽い設定を選ぶと高速域では少し敏感すぎるように感じ、中間か重めを選択した方が走りやすいと思う。

ボルボ V60クロスカントリー 試乗

V60クロスカントリーは、アウディA4オールロードからレガシィ・アウトバックあたりまでがライバルとなるが、価格、走りの性能、インテリアの質感や充実しているドライバー支援システムなどの装備などを総合的に考えると、D4 SEはコスト・パフォーマンスの面でかなり優位だと感じられた。

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