【ボルボ】V40クロスカントリー T5 AWD 試乗記 カテゴリートップのコスト・パフォーマンスとクオリティ感を持つ都会派クロスオーバー レポート:松本晴比古

マニアック評価vol196

プレミアム・スポーツ・コンパクトとして2013年2月に日本市場のデビューしたV40は、多種多様な魅力を競い合うヨーロッパCセグメントの中で高い商品力により大きなインパクトを放ち、ヨーロッパでも日本でも好調なセールスを見せる。そして、V40シリーズの本格的なスポーツ・ハッチバックとしてV40 T5 R-DESIGNを4月に追加し、5月に入りV40シリーズの第3弾、「V40 Cross Country(クロスカントリー)T5 AWD」を追加発売し、V40ファミリーが出揃った。

ベースモデルのV40に対してスーパースポーツモデルとしてV40 T5 R-DESIGNを位置付け、V40 Cross Countryはスマートなクロスオーバーというポジショニングとなる。そのため、V40 Cross Countryは専用のデザインを身にまとっている。ブラックのフロント・バンパーやハニカム・フロントグリルの組み合わせ、ルーフレールやサイドスキッドプレート、リヤ専用バンパーを装備しているので、一目でクロスカントリーであることが識別できる。フロントグリル部はブラックのハニカムというだけではなく、グリル全体が前方に前進されており、フロントマスクの印象は強められている。

ごく太のサイドシル形状が特徴
コンソールBOXのカップホルダーetc
ペダル配置も良好

インテリアもメタル装飾部を銅色に仕上げ、シート表皮のデザインもCross Country専用仕上げとなり、印象としてはシックでラグジュアリー感が強められる。

センタースタックの表面はテーマカラーの銅色仕上げ
手触りの良い本革リヤシート
リヤシート側部のスペース
シート中央の開閉式カップホルダースペース

デザインだけではなく、車高はベースモデルに対して30mmアップされたクロスカントリー専用サスペンションを装備している。ただし最低地上高はベースモデルに対して+10mmの145mmだ。この地上高はAWD用のトランスファーを内蔵する6速ATトランスミッションが20mm下方に膨らんでいるからだ。このことから分かるように、V40 Cross Countryは都会派のクロスオーバーカーであることがわかる。車高以外にシートポジションも30mm高められているが、当然ながら腰高感は感じられない。

2.0L・5気筒のT5ターボ・エンジンは213ps/300 Nmを発生

搭載するエンジンはV40 T5 R-DESIGNとまったく同じT5エンジン、つまり2.0L・5気筒エンジンを横置きに搭載し、アイシン製6速ATと組み合わされる。実はヨーロッパ市場ではT4エンジン、2.5LのT5エンジンも設定されているが、日本市場ではV40 Cross Countryのポジショニングを分かりやすくするために2.0LのT5エンジン/AWDに絞り込んでいるのだ。なおAWDシステムは駆動輪のスリップに瞬時に反応するオンデマンドタイプ。ハルデックス製の最新世代を採用している。

213psのT5エンジンは低速から力強く、滑らかに吹け上がる。T5エンジンはスムーズさ、滑らかさ、上質感といった意味で質感が良く、しかも低速からトルクを盛り上げるターボの迫力を併せ持っている。このエンジンは6速ATとの組み合わせのため、特に発進時にはトルコン効果が加わって湧き上がるトルクに乗った加速感が、つまりベースモデルのV40のDCTトランスミッションによるダイレクトな加速感とはかなり違ったフィーリングが実感できる。

走行中の変速タイミングでは若干のトルコンスリップも生じるので、有り余るほどのトルクを生かして余裕のあるクルージングを味わうのがこのV40 Cross Countryの真骨頂かもしれない。もっとも、このATもSレンジにスイッチすると、よりダイレクトに変速し、エンジン回転も高回転まで使用するスポーツモードの変速プログラムに豹変する。このSモードを使えば、T5 R-DESIGNとほとんどレベルのスポーツドライビング能力も発揮できるのだ。1580kgという車重に対して、このエンジンのパワートルクは十分すぎるほどだ。

なおこのT5エンジンもスタート&ストップ、ブレーキエネルギー回生を備える最新のスペックだ。

サスペンションは、ベースのV40が「ダイナミック」仕様、T5 R-DESIGNは本格的な「スポーツ」仕様であるのに対し、V40 Cross Countryは取り付け部、ジオメトリーも含めクロスカントリー専用のスペックで、ほぼ標準セッティングである「ツーリング」仕様に近い。つまりスポーティ&ラグジュアリー感の両立を目指したスペックで、フラットな乗り心地でストローク感もあり日本での走行条件を考えるとオールマイティで、誰が乗っても納得できるという感じだ。装着されていたタイヤはミシュラン・プライマシーHPで、サイズは225/50R17。

V40シリーズの特徴的な美点である引き締まった、気持ちよいステアリング・フィーリングと、このサスペンションとの組み合わせ、それに加えてどっしりとしたボディの剛性感に包まれることで、さらに身体にしっくりとするシート。この組み合わせによって、長時間、長距離のドライブでも疲れにくく飽きることがないだろう。それがこのクルマの素質である。

カラー液晶メーターは色調を選択できる
ブラックの専用ドアミラーカバー
キャップレスの「イージーフュエル」
質感の高いラゲッジスペース

インテリアは、ヨーロッパ市場でも好評のカラー液晶式のカスタマイズできるメーターパネルや好みの室内照明に設定できるインテリア・シアターライトなどオーナーの心をくすぐる装備の他に、ラゲッジスペースやシートのパッケージングやデザイン、操作系の使いやすさや操作しやすさなど、合理的でデザイン、質感という点でもレベルは高い。北欧車ならではの必需品といえるウインドゥガラスの雪かきヘラまでドアポケットにきちんと収納できるなど、細かな配慮の一端が伺える。

V40の大きな価値の一つがセーフティパッケージにあり、このV40 Cross Countryにも必須の装備だ。衝突回避システムを使う機会はなかなかないだろうが、アダプティブクルーズコントロール(ACC)や車間警告、道路速度標識表示などドライバー支援システムの作動は運転状況とうまくシンクロしてくれる。車間距離の調整や、自動の加減速のフィーリングはドライバーの心理と一致しているのだ。

AWDのV40 Cross Countryならではの装備としては、急坂の下りで10km/h以下を保つ(1速、またはR)ように自動速度調整を行うヒルディセントコントロールを備えている。

V40 Cross Countryは、他のクロスオーバーSUVとはかなり雰囲気が違い、都会派のスポーティなハッチバックと考えるべきだろう。全高も1500mm以下で都市部での使い勝手も優れている。室内のラグジュアリー感も含めV40シリーズのトップモデルといった存在といえるだろう。

VOLVO V40 Cross Country諸元表

ボルボカーズ・ジャパン公式サイト

COTY
ページのトップに戻る