2014年8月19日、ボルボ・カー・ジャパンはS60/V60 T4 R-DESIGNをベースに、先進安全機能をフル装備し、さらにエンジンのパワー、トルクをアップする「ポールスター・パフォーマンスパッケージ」を加えた特別仕様車T4 R-DESIGN PLUSを発売した。
すでに5月から発売しているS60/V60の特別仕様車「Luxury Edition」と合わせて試乗してきた。S60/V60の特別仕様車Luxury Editionは、「ヒューマン・セーフティ(歩行者・サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム)」や「全車速追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」、夜間走行時に自動的にライトの一部分を遮光し対向車のドライバーの眩惑を防ぐ、先進のヘッドライト技術「フル・アクティブ・ハイビーム」など、10種類の先進安全技術を備えている。これらに加え、本革シート、HDDナビ+TVチューナーなどを特別装備し、これらの装備は約50万円相当でありながら価格設定は標準T4ベースモデルより20万円安く設定され、70万円分のベネフィットがあるモデルだ。
今回新たに設定されたS60/V60T4 R-DESIGN PLUSは、スポーツグレードのT4 R-DESIGNをベースに、ヒューマンセーフティ、全車速追従型オートクルーズ、フルアクティブ・ハイビームなど20万円相当のオプションを標準装備化し、さらに20万円相当のポールスター・パフォーマンスパッケージも無償インストールしている。合計40万円分の価値が加えられた上に、価格はベースのT4 R-DESIGNより約18万円安く設定されており、競合するメルセデスC180、BMW 3シリーズ、アウディA4などに対して、クオリティ、価格で大きなアドバンテージを持っているのだ。
ここ最近のボルボは、スポーティ・プレミアムブランドを徹底追求するというポジショニングが明確で、一貫している。その一方でスウエーデンのメーカーらしく、機能性と人間性を融合させたスカンジナビアデザイン、高い質感を求めたクルマ造り、剛性感の感じられるボディ、意のままでしかも高揚感のあるスポーティなハンドリングなど、ドイツ製プレミアムカーとは明らかに異なるテイストを盛り込み、ボルボらしさ、ボルボならではの存在感を強くアピールしていることに気付く。また、それを狙い通りに実現するボルボの開発エンジニアの知見、クルマ造りの巧みさは並外れていると思う。
DセグメントのS60、V60はボルボにとっては柱となるモデルであるとともに、メルセデスCクラス、BMW 3シリーズ、アウディA4など強力なライバルと戦う宿命にあるが、デザイン、インテリアの質感、ステアリングホイールを握った時のスポーティ感や気持ちよさ、そしてボディの剛性感はボルボならではの存在感と言える。
現在のS60/V60は2010年(日本市場には2011年に導入)に登場しているが、2013年秋にビッグマイナーチェンジを受け、エクステリア・デザインを手直しするとともに、走りのフィーリングも一段と洗練されている。ボルボの中ではスーパースポーツ・サスペンションと位置付けられるR-DESIGNグレードもしなやかさが強められ、ハイスピードでのダンピングのよさと低速走行時の滑らかさのバランスが向上しているのだ。 今回の特別仕様車「T4 R-DESIGN PLUS」のステアリングを握っても、改めて絶妙なシャシーチューニングが行なわれていることが実感できた。タイヤはハイパフォーマンスのコンチネンタル・スポーツコンタクト3(235/40R18)で、近年多くなっているランフラットタイヤ装着車と比べ格段の接地感、乗り心地のよさが感じられる。
▲「T4 R-DESAIGN PLUS 」は、購入後ポールスター・パフォーマンスパッケージが無償インストールされ、+20ps、+45Nmとなる。
T4 R-DESIGN PLUSは、パワーアップキットである「ポールスター・パフォーマンスパッケージ」も採用され、1.6Lターボエンジンの出力は標準の180psから20psアップの200ps、最大トルクは45Nmアップの285Nmとなっている。トルクカーブも標準モデルのものをそのまま底上げした感じで、市街地でもフレキシブルで扱い易い。それでいて1.6Lターボながら200psを引き出し、アクセルを踏み込めば2.0Lターボに匹敵する動力性能が発揮される。また6速ギヤトロニックもDCT(ツインクラッチ)らしいダイレクト感と滑らかな変速が巧みに両立され、T4 R-DESIGN PLUSのスポーティな走りにうまくマッチしている。
S60 V60 T4 R-DESAIGN PLUS 諸元表 一方、「Luxury Edition」は標準のT4エンジンと6速ギヤトロニックの組み合わせとなるが、絶対的なパワー、トルクを使う場面以外では十分に力強く、扱い易い。またLuxury Editionのサスペンションは標準仕様となっているので、スポーティ&コンフォートという表現がぴったりするフィーリングとなる。 タイヤもミシュラン・プライマシー(215/50R17)で、これは燃費と快適性を両立させる性格が与えられている。こうしたタイヤ選択も巧みで、クルマのグレード、仕様に最適なタイヤ選定が行なわれていることがわかる。
S60、V60ともに最新の液晶式メーターディスプレイを装備し、メーターのカラーを3色から任意に選択でき、もちろんアクティブクルーズコントロールの表示や、制限速度の道路標識の表示なども行なわれる。多くの機能を持つドライバー支援システム、緊急自動ブレーキシステムの作動も洗練され、初めて使用するときから違和感なく使いこなすことができる点もアドバンテージになっていると思う。
また現在は、クルマや障害物はもちろん、歩行者や自転車などの認識もより正確になり、ドライバー支援システムの信頼度、熟成度は他のライバル車と比べてもトップレベルにあり、これらのシステムのパイオニアであるボルボの面目は保っているといえる。
ドライバー支援システムで特筆すべきは、フルアクティブ・ハイビームの機能で、基本は郊外ではハイビームで走行し、先行車、対向車が出現するとヘッドライト内部のシェードを自動制御し、先行車や対向車にビームが当たらないように制御している。もちろん街灯の有無に関わらず機能する最も先進的なシステムになっているのだ。これは高解像度の精度の高いカメラを装備していることで実現しているわけだ。
T4 R-DESIGN PLUS、Luxury Editionともに標準で本革/8ウェイパワーシートを備え、これもライバル車に対して大きなアドバンテージとなっている。本革の材質、縫製仕上げともに高いレベルにある。特にR-DESIGN専用設定の本革シートは、滑らかな手触りや仕上げなど、このクラスでトップレベルの質感を持っている。 T4 R-DESIGN PLUS、Luxury Editionという2種類の特別仕様車は、装備・価格のコストバリューがライバル車に対して優れているだけではなく、走りの質感、ドライビングプレジャーという観点でも絶妙な味があり、長く付き合う資格は十分あるクルマだと言える。