ボルボのXC40、C40のMY23(モデルイヤー23年)に試乗することができた。トピックはC40にシングルモーター仕様の「Recharge」がラインアップに加わり、XC40にもBEVモデルのツインモーターとシングルモーター仕様がラインアップ。さらに48Vマイルドハイブリッドモデルはエンジンがリファインされ、より低燃費になって登場した。
ボルボは今後、電気自動車専売メーカーにシフトしていくことを宣言し、2030年からはBEVモデルだけの販売としている。そのための第一弾としてBEVモデルのC40が2021年秋から導入プログラムをスタートさせていた。
導入当初は前後にモーターを搭載したツインモーターの「Recharge Twin」を導入し、2022年4月に試乗レポートを掲載している。この初期導入のC40は購入もディーラー販売ではなくWeb上での販売としたことや、Googleを車載していることなど革新的な新しい価値を持ったモデルとしてグローバルに投入している。
マーケティング的には「イノベーター向け」商品に位置付けられ、新しい価値に強い興味を持ち、価格や実用性は二の次といった人たちの反応を見る投入方法だった。いわばボルボの電動化戦略のイメージづけでC40RechageTwinが投入されたわけだ。そして23年モデルからはアーリーアダプター向けとして、新価値に理解が深く、実用性や車両価格も考慮するユーザー向けのBEVを投入してきた、というのが今回のメインストリームだ。
投入されたモデルはC40のシングルモーター仕様「Recharge」で、ツインモーター仕様より価格を抑えた実用性のあるクロスオーバーに位置付けているモデル。もちろんツインモーターは継続して販売される。ボディサイズはXC40、C40は全高以外共通で全長4440mm、全幅1875mm、全高1650mm、1515mm(C40)、ホイールベース2700mmとなっている。
そしてC40と同じCMAプラットフォームでラインアップを展開するXC40にBEVモデルを投入。こちらもツインモーター仕様とシングルモーター仕様をラインアップした。そして従来のPHEVモデルは販売を終了した。一方でBEVの購入が予算や使用環境などから厳しいユーザー向けに、48Vマイルドハイブリッドを供給するラインアップとしている。
余談だが、フランスを中心に欧州の電動化の中で、ガソリンモデルはBEV車が購入できない人向けという位置付けに変化してきて、安価な値段が魅力という売り方になってきたのだ。つまりBEVがラインアップの中でのフラッグシップで、ガソリンはエントリーモデルというポジショニングに変わってきているのだ。
そうした空気を読むとボルボの48VマイルドハイブリッドがXC40のエントリーモデルという意味合いもあるだろう。流石に純ガソリンモデルというわけにもいかず、48Vのモーターは搭載したわけで、同様にバッテリーを多く搭載するPHEVの廃止は説明がつく。
いつものGoogleをそのまま車内で
さて、試乗したのはXC40のツインモーター仕様、48Vマイルドハイブリッド、そしてC40のシングルモーター仕様の3台。
C40で新鮮に感じる新しい価値は、実は当初から搭載している機能だが、シートに座るだけでクルマがドライバーを認識し、システムがONになることだ。これはスマホの非接触型充電器のように、トレイにスマホを置くだけで自動で充電が始まるが、同様に運転席に座るだけで、システムが稼働しシフトレバーを「D」に入れれば動き出せるのだ。
これは未来感のある新しい価値に感じる。シートにセンサーを仕込み、重量を検知するとシステムが動く仕組みで、ありそうでやってなかったものだ。また当初からGoogleを搭載していたが、そのレベルがアップし利便性が上がっている。自身のGoogleアカウントでログインすれば、普段使っているGoogleがそのまま車内で利用できるようになる。
音声認識も日本語対応しており、「OK Google、あとどれくらい走れる?」と聞けば「残りのバッテリー残量から約300km走行できます」と答えてくれる。そして「近くの急速充電器はどこ?」と聞くと「4km先に道の駅があります。そこまでナビ案内しますか?」とまで言ってくれるのだ。
音声認識対応のAIはプレミアムモデルには各社搭載しているが、育てる時間がある程度必要であり、普段使っているGoogleアカウントがそのまま使えるので、利便性は圧倒的に高い。さらに、クルマの装備をGoogleがコントロールできるところも凄い。
「暑い」といえば「23度に設定します」というわけで、他メーカーでアレクサなどのAIを搭載しているモデルもあるが、車両に関わることは別なAIが担当するという住み分けになっていて、ふたつのAIをオーナーが使い分けることをしなければならない。そうした点からもGoogleだけで完結するのはユーザーフレンドリーだ。そしてクルマを離れるときは「ログアウト」すれば自分のデータは残らないというわけ。
またC40、XC40に装備されるサンシェード&グラスルーフは標準装備になるが、サンシェードを開けるスイッチは操作板を撫でるだけ。こうした操作感にも新鮮さを感じる。
運転操作系ではステアリングにあるACCパイロットをワンタッチで設定できる。そして前車を追い越すためにウインカーを出した瞬間からジワリと加速するので、人の操作に近い動きをするのでストレスを感じにくい。
またワンペダル走行が可能なほど減速Gも強く、摩擦ブレーキを使うことなく完全停止する。直進の安心感は高く、高い直進性を感じるもののカーブでの操舵フィールにはやや手応えという点で熟成を望みたい。切り初めから切りたしていっても手応えにあまり変化がなく、やや電動感が残っている。
それとACCの時にステアリングを握る必要があるが、直進性が高いため、ステア操作を全くしないでいるとアラートが出てしまうのだ。直進性の高さがアダとなってしまうので、ステア操作に関してはトルク感応型ではなく、静電性に変更したほうがより魅力が高まると思う。
シフトレバーは「D」と「R」、そして「N]とあるが、いずれもボタンを押すとか、シフトゲートを動かすなどの操作はなく、単にレバーを手前に引けばドライブに入り、前に押せばリバースに入る。パーキングは別にボタンスイッチが装備されている。
C40、XC40は、いろいろな操作がスイッチ化しているものが多く、「運転が簡単」に感じるようになるのも新しい価値と言えるだろう。一方で「じわり操作」にも対応しようとしている部分もあり、人の感性に訴えてきたものも大事に残しつつの進化が感じられる。
48Vマイルドハイブリッド
一方でガソリンエンジンを搭載する48Vマイルドハイブリッドは、ミラーサイクルとなり、圧縮比も10.5から12.5へと変わり、低燃費になっている。レスポンスはBEVモデルに試乗したあとでは、鈍さを感じてしまうものの、単体で考えれば決してレスポンスが悪いということはなく、ICEレベルというわけだ。
また静かに走行し、プレミアムモデルに相応しい静粛性もあってBEVでなくても「静か」と感じる場面は多い。そしてBEVとの区別のためか、レザーシートを使い、内装はコンベンショナルに仕上げてあり、ユーザーの好みを先読みしている印象がある。
このようにBEVモデルには最新の、そして最先端のシステムと同時に価値観も投入されているが、コンベンショナルなモデルにはシステムは最新としながらも価値観は既存の価値を重視できるような工夫も見られ、こうした車両のラインアップからもクルマの変革期であることを実感するモデルでもあった。
さてスペックを見てみるとBEVモデルのツインモーターは合計出力が300kW(408PS)/660Nmで、航続距離は484km。シングルモーターは170kW(231PS)/330Nmで502kmの航続距離になっている。そしてガソリンエンジンの48Vマイルドハイブリッドは2.0Lの4気筒エンジンで145kW(197PS)/300Nm。燃費は14.2Km/Lだ。また、このトランスミッションが従来の8速ATから7速DCTに変更され燃費も向上している。
価格(2022/10/19 現在)
ポッドキャスト
ボルボXC40、C40をフィーチャーしたラジオ番組 FMヨコハマ「THE MOTOR WEEKLY」はポッドキャストからもお聴き頂けます。